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22/1981

朝起きた時ティルラちゃんがレオに抱き着いていた経緯がわかりました



「レオ、自分に乗れって言ってるのか?」

「ワウ」


 俺の言葉に頷くレオ。

 それを見たクレアさんがレオに話しかけた。


「レオ様、申し訳ないのですが今日のところは屋敷で帰りを待って頂けないでしょうか?」

「ワウ?」

「レオは留守番させるんですか?」

「はい、その方が良いかと思います。レオ様のお姿は街の住民にとって、驚くのに十分ですから」

「……確かにそうですね」


 そういえばレオはシルバーフェンリルだった。

 人間を乗せて移動出来る程大きく、精悍な顔付きで口から見える牙は人なんて軽々と噛み砕けそうだ。

 銀色の綺麗な毛並みは風格のある狼として威圧感さえ感じる事もある。

 近くの街の人達がシルバーフェンリルの事をどのくらい知ってるのかはわからないけど、知らなくても街中でこんなに大きな狼を見たら驚くのは当然だと思えた。


「……ワウ?」


 悲しそうな顔でまさに「置いてかれちゃうの?」と問いかけて来るようなレオの視線。


「……そんな顔されてもな……」


 こればっかりはなぁ……この世界がどういう所かまだはっきりとわからないんだ、変に騒ぎを起こすような事はしない方が良いと思うん……だけど……。


「……クレアさん」

「……レオ様にこんな顔をされたら仕方ありませんね……レオ様は本当にタクミさんが好きなのですね」

「ワウ! ワフワフ!」


 クレアさんが許可してくれた。

 クレアさんって実は結構レオに甘いよな?

 一緒に行って良いと言われたレオは顔を俺に近付けて一舐め、レオなりの喜びの表現なのかもしれない。

 でも実際、連れて行ける事になって良かったかもな。

 よく考えたらレオを拾って来てから今まで、俺が学校だったり仕事だったりで留守番させる事が多かった。

 拗ねたり、寂しがったりと大変だった事もある。

 寂しく留守番する事に慣れたと思ってたけど、そんなわけないよな。

 レオは人懐っこいから誰か……この場合は俺かな……と一緒に過ごせる方が嬉しい事なんだろう。


「良かったなレオ。ちゃんとクレアさんにもお礼を言うんだぞ」

「ワウ……ワフ!」

「ふふふ……。レオ様、街では人が多くてレオ様の事を色んな目で見て来る事が多いとは思いますが、大人しくして頂けると助かります」

「ワウ!」


 クレアさんの方に近づいて一度吠え、感謝を伝えたレオはクレアさんの街での注意にも了承したと言うように頷いた。

 クレアさんはそれを朗らかに見ている……と、眠そうに眼を擦っていたティルラちゃんが食べ終わったようだ。


「姉様、レオ様が行くなら私も街に行きます!」

「……ティルラ」


 ティルラちゃんは随分レオに懐いたようだな。

 レオが行く事に決まったから、一緒について行きたいんだろう。


「ティルラ、駄目ですよ。貴女は病が治ったばかりでまだ万全じゃないでしょう? それに、先程までレオ様やタクミさんと遊んでもらっていて疲れてるのでしょうから、今日はお留守番よ」

「むー、レオ様と街に行きたかったなぁ」


 クレアさんの言葉にわかりやすくむくれるティルラちゃん。

 確かにティルラちゃんは病み上がりで、まだ体力も完全に戻ってないだろう。

 それに今も少し眠そうにしてるから、さすがに今日は寝ておいた方が良いと思う。


「ティルラお嬢様……病に臥せっている間ずっと寝てたので、今日の朝もあまり寝られず早くに起きていらしたでしょう。これから昼寝をしておけば、元気になりますし起きた頃にはタクミ様もレオ様も帰って来ますよ」

「……わかりました」


 不承不承頷いたティルラちゃんは、少し拗ねた様に俯いて黙り込んでしまった。

 ……これは何かお土産を買って帰ってご機嫌を取った方がいいかな? ……お金が無いから無理か。


「ティルラ、今朝は私やセバスチャンが起きるよりも早く起きてたのでしょう? 我慢せず今は寝ておきなさい」

「今朝はティルラお嬢様の部屋に行ったら誰もおらず、屋敷の中を捜索しましたからな」

「そうなんですか?」

「はい。昨夜は元気になった様子でしたけど、夜が明けてまた熱が上がってないか心配だったので、セバスチャンとティルラの部屋に行ったんです。そうしたら、寝ているはずのティルラがいなくてセバスチャンと二人で慌てました」

「私とクレアお嬢様は他の使用人達を集め、ティルラお嬢様の捜索をしました。屋敷の外には警護の兵士がいるので、その兵士達に確認したところ、それらしい姿は屋敷から出て来ていないとの事でした。なので、屋敷の中を捜索しておりました」


 ティルラちゃん、部屋からいなくなっただけで結構な騒ぎになったんだな。

 まぁ、病み上がりの子供が寝ているはずの部屋からいなくなったら心配もするか。


「それで、私は屋敷の中を見回った後、まさかと思いタクミさんの部屋に行ったのです。そこで……」

「……え、まさか……」

「はい。ティルラはレオ様に抱き着いて気持ち良さそうにしておりました……」

「レオ様に会いたかったんです。それにレオ様に抱き着くと気持ち良いんですよ」


 俺が寝てる間にそんな事があったのか……。

 昨日会って、少し遊んだからレオはティルラちゃんが部屋に入って来ても騒がず、クレアさんが来るまで相手をしてくれてたんだな。

 レオの毛並みは確かに触り心地抜群だと思う。

 抱き枕にしたらいくらでも寝られそうだな。


「だから今日の朝はクレアさんに起こされたんですね」

「すみません、気持ち良さそうにタクミさんは寝ていらしたのですけど、何も言わずにレオ様からティルラを引き剥がせず……それに朝食の用意も出来ていましたし」

「いえ、起こしてもらえて良かったですよ。あのままだったらベッドが気持ち良過ぎて、朝食を食べ損ねるとこでしたから」


 というか、ティルラちゃんが部屋に入って来た時点で起きろよ俺……。

 以前なら仕事でいくら疲れていても、携帯に仕事の連絡が入ったらすぐ起きていたし、そもそもレオの世話と出勤のために日が昇ったら勝手に目が覚めたのにな。

 ……それだけベッドが気持ち良かったんだと思っておこう。


「ティルラ、レオ様の所へ行くのは構いませんが、勝手に人が寝ている部屋に入ったら駄目よ?」

「……はい。わかりました」


 ティルラちゃんに注意をして、俺達はそれぞれ食事を終えて街に行くための準備をするため部屋へと戻った。

 寝てる人の部屋にコッソリ入るのはマナーの問題だからな、令嬢として……と言うよりクレアさんにとっては見過ごせない事なんだろう。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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