薬酒を試作する事になりました
「ふむ……それはここでできるような事ですかな?」
「どうでしょう……俺も、詳しい方法はあまり……それに、ワインの量が量なので……」
「そうですね。ここでは難しいと思います。記憶の通りなら、遠方でも大きな設備を使っていると聞きました。……詳しくはわかりませんが」
「そうですか……でしたら、やはり当初の考え通りの方法しかなさそうですな」
セバスチャンさんにここでできるかを聞かれるが、詳しく覚えていないので出来るかどうかはわからない。
実験の時はフラスコとかを使ったけど……似たような物は用意出来るかもしれないが、蒸留に適した道具が揃うかまでわからない。
それに、冷やしたりするための方法もな……魔法で何とかなるかもしれないが、今すぐそれらを作るのも難しいだろうと思う。
ヘレーナさんもここでは難しいと考えているようだ……ワインの量も多いし、少量で日数をかけて蒸留するという事もできそうにないしな。
ワイン樽を大量に長い間この屋敷に置いておくわけにもいかないだろう……場所を取るしな。
「当初の考え……ですか?」
「はい。タクミ様と私は、他に方法が無いのであればこの方法はどうかと考えて来たのです。料理に詳しいヘレーナさんなら、他に方法を知っているかもとの期待はありましたが」
「成る程。それで、その方法とは?」
「薬草を混ぜる事です。ワインが飲めなくなった原因は、人の体に入った場合、薬草で治す事ができます。それなら、先にワインと混ぜて原因を取り除く事は出来ないか……と考えました」
セバスチャンさんが言う程ではないが、ヘレーナさんなら他にも良い方法が考えられないか、という期待があったのは確かだ。
実際に蒸留してブランデーに……という方法が出て来たしな。
……実行する事はできなさそうだが……。
「薬草を……薬酒、という事ですか……」
「その通りです。……多少味は変わってしまうかもしれませんが……それでもただワインを煮詰めてジュースにするというよりは良さそうな気がします。もし良質な物が出来上がれば、売り出せそうですしね」
「商売の事まで考えてたんですか?」
「そこはついで……ですな。それ程の物ができるかどうかはわかりません。ですが、それができればランジ村の方も助かりそうですからな。……ワインが売れなくなる場合に備えて」
ワインをわざわざ煮詰めてジュースにする、というのは手間だ。
お酒なのだからお酒として飲みたいという人もいるだろう……フィリップさんとか特に。
薬草を使って飲めるようになるのなら、お酒のままだろうからな。
それに、もしそれで病が取り除かれるのであれば、薬酒として別の効能を持たせた物も作れそうだという目論見もあったんだろう。
俺の薬草と同じように商売に繋げるのかと聞いたら、セバスチャンさんはワインが疫病を広めたとの評判になって売れなくなる事での影響も考えていたようだ。
もしこれで、健康になる薬酒とかが出来上がるのであれば、確かに評判を跳ね返して売れる商品になりそうだな。
「そうですね……飲めない原因となる物を取り除く、あるいは人への影響を無くして……という事ですよね? できるかどうか……試してみないと……」
薬草をワインに混ぜて薬酒とする方法を、ヘレーナさんは頭を悩ませながら答える。
そりゃそうだよな、原因となる物が目に見える物でもないし、はっきりとできるとは言えないか。
「そうですな、であればいくつか試作してみるというのはどうでしょう?」
「試作するのは良いのですが、その原因は取り除かれたのがすぐにわかる物なのですか?」
「レオ様にも協力をお願いしませんとな」
「そうですね」
試作して飲めるようになるか試す、というのは良い案だろう。
もしどうしても飲めるようにならなければ、煮詰めてジュースにしたら良いしな。
この場合、ランジ村への対策は別に考える必要はあるだろうが。
ともあれ、試作した時そのワインが飲めるようになっているかどうかは、レオが判別しないといけない。
イザベルさんに協力を頼めば、魔法具で判別してくれるかもしれないが、屋敷と街を往復するのもてまだし、レオに頼んだ方が早く済むだろう。
「レオ様ですか?」
ヘレーナさんの方は、レオが判別できるとしらないため、そこで何故レオに頼むのかわからない様子だ。
「飲めない原因になっている物……はっきりと言えば病の素となっているのですが……これは人間には判別できるものではありません。微量の魔力が関わって来るらしいのですが、これを人間が感知できないらしいのです」
「病の素……それは確かに飲むわけにはいきませんね」
イザベルさんの説明では、微量過ぎて感知できないという事らしい。
初めてワインが病の原因だと知ったヘレーナさんと料理人達は驚いた様子を見せたが、すぐに納得した。
病の素が入ってるワインなんて、飲めないと言って当然だからな。
「その病の素なのですが、それをレオ様ははっきりと判別できるのです。そうですね、タクミ様」
「はい。レオがいてくれたおかげで、ワインに病の原因……素となる物が混在している事がわかりました」
「これは、イザベル……魔法具の専門家に確認をしてもらい、確証の持てる事です」
「そうですか……でしたら、試作をしてレオ様に確認をしてもらえば良いのですね?」
「はい。レオに確認すれば、そのワインが大丈夫なのかどうか、すぐにわかるはずです」
レオには大変な仕事を押し付けてしまう事になるが、その代わりにご褒美のソーセージを用意してやれば良いだろうと思う。
後で、レオにヘレーナさんからお願いされたら、ワインの選別をするように頼んでおこう。
「わかりました。ワインに混ぜる薬草ですが……」
「それはこちらになります」
ヘレーナさんが了承し、他の料理人たちも頷く。
それを見てセバスチャンさんが懐からラモギの粉末、今すぐ薬として使える状態の物を取り出し、ヘレーナさんに渡した。
「粉末のラモギですか。これなら効果が出るかどうかすぐにわかりますね」
「それとは別に、試して欲しい物もございます」
「別に? それはなんですか?」
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。
作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。