例の店に対するのは少し待つようでした
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「伯爵から資金提供を受け、利益のうちいくらかを伯爵へ……狙い通りに行けば商売として成功する事は間違いないので、損をすることはありません」
「伯爵は何故そのような事を……」
「それはわかりません。公爵家を害するためなのか、それとも単純に収入を増やそうとしてなのか……後者の可能性は低いかと思われますが……」
伯爵の狙いは、本人に聞かないとわからないだろう。
何を狙ってこんな回りくどい事をした挙句、何の罪もない人達を巻き込んだのか……。
「収入を増やそうとするだけなら、伯爵領でやれば良い事……そうすれば外部に漏れるリスクも減ります。税収も下がるでしょうが……」
セバスチャンさんの言う通り、誰にもバレないようにしたいなら、自分達の領内ですればいい事なはずだ。
そうすれば俺やセバスチャンさんにバレる事もないし、公爵家を敵に回す事も無かったはずだ。
まぁ、伯爵領に住む人達が苦しむことになって、税収は下がるし色々問題が出て来るのだろうからという判断もあるかもしれない。
でも、わざわざ公爵領でやっているという事に、俺には敵意を持って仕掛けて来ているとしか考えられない……まぁ、まだ冷静になってない部分もあるから、そのせいかもしれないが。
「とにかく、色々とわかったんですから、すぐに例の店を潰すよう動いた方が良いのでは?」
「それは少し待ちましょう」
「……どうしてですか?」
例の店が潰せれば、悪質な薬草に騙される人が少なくなる。
少しでも苦しむ人が減ればと思ったんだが、何故かセバスチャンさんに止められた。
「タクミ様のおかげで、ラクトスには良い状態の薬草が行き渡りつつあります。それと、例の店に関して、既にある程度噂を流しておきました」
「噂ですか?」
「ええ、簡単な事です。例の店は悪質な薬草を売りつけるので、安くても買ってはいけない。代わりに、カレスの店……公爵家運営の店では病に効く薬草を、格安で販売している……と」
「効果はあるんでしょうか?」
「タクミ様がランジ村に行っておられる間に確認しましたが、それなりに効果は出ているようです。……人の口には戸が立てられませんからな。病で苦しむ人、タクミ様のラモギで病が治った人を中心に広まっております」
セバスチャンさんが意図的に流した噂によって、例の店で悪質な薬草を掴まされる事を防ぎ、カレスさんの店に誘導しているようだ。
「タクミ様のおかげですよ、ラモギの価格を下げた事が効いているようです」
「値下げが?」
「はい。価格を限界まで下げた事で、安いのなら試しに……という人もいるようですからな。これまで買えなかった人が入手している事で病も収まりつつあります。噂が噂を呼び……というような効果が出ているようです」
ラモギが行き渡り始めて、病が広がるよりも収まるペースの方が上回った、という事だろう。
後はこのままラモギの数を増やせば、疫病は自然と収まるはずだ。
そして、カレスさんの店で買ったラモギを実際に使った人が噂を後押ししている、と。
口コミっていうのは、いつの時代も強力な宣伝効果があるからな。
「ですが、何故まだ例の店を潰さないのですか?」
噂の効果があって、例の店で薬草や薬を買う人がいなくなったとしても、それが今すぐ例の店を潰さない理由にはならないと思う。
「泳がせる……というのとは少々違いますか……もう少し、追い込もうと考えましてな」
「追い込む?」
「噂の効果で確実に例の店は薬草が売れなくなってきています。そうなれば焦り出すのも当然でしょう。そこでさらに、タクミ様が発見し、レオ様が選別したワインの出番です」
「ワインですか?」
段々と楽しそうな表情になって来たセバスチャンさん。
それをみている俺の方は、背中に冷たい汗が流れるような気分だが……クレアさん達も少し引いている。
「タクミ様のワイン……到着は数日後ですな。それを少し分けてもらい、例の店に持って行くのです」
「ワインを持って行く……」
「例の店の者達におすそ分けとでも言って飲んでもらいましょう。……もし、この時躊躇したり飲む事を拒否すれば……」
「ワインが病を広める原因だと知っている……と?」
「その通りです。もちろん、理由を付けて断られる事もあるでしょうから、公爵家から……という事にすれば飲ませるのは簡単です」
何も持たずに例の店に踏み込めば、とぼけられたりするかもしれない。
薄めた薬草や薬も証拠ではあるんだけど、何か理由を付けて責任逃れをする可能性もある。
だから、十分に追い詰めて焦らせたところで、ワインを持って行きさらに追い込む……という事なんだろうと思う。
公爵家から、と言われたら……領内である事も含めて断る事は出来ないだろう……権力者からの強制力のようなものだな。
取引先の会社の社長からお酒を進められて断れるのか……という事だな……ちょっと違うかもしれないが。
中々、怖い事を考えるセバスチャンさんに、食堂にいる皆が引いている雰囲気だが、本人は至って楽しそうだ。
……やっぱりセバスチャンさんも腹に据えかねていたんだろうと納得した。
「それとは別に、旦那様にも報告をしませんとな」
「エッケンハルトさんに?」
「ええ。クレアお嬢様や私は、当主である旦那様の名代を務める権限を与えられてはおりますが、あくまで代理なのです」
確かにセバスチャンさんの言う通りだな。
エッケンハルトさんの代理を務める事が出来ると言っても、何でも決定して良いわけじゃない。
今回は他の貴族が関わっているのだから、当然エッケンハルトさんが権限を振るわないといけないと言う事なのだろうと思う。
「旦那様には、レオ様が一度戻って来た時……ガラス球を持って帰って来た時ですな。その時に一度連絡を差し上げておりますが、詳しい事が分かった今、追加の情報として報告をしませんと」
「そうね、お父様に判断を仰がないといけないでしょう」
「旦那様でしたら、例の店に対する事に反対しないでしょう」
「領内の事、民を害する者を許さないと思うわ」
エッケンハルトさんなら、確かに例の店に対して毅然とした態度で対応してくれるだろうと思う。
実際は、セバスチャンさんの言うように、報告をして許可を取り、そこからこちらが動く……という事になるだろう。
本邸がある場所はこの屋敷から結構離れてるみたいだから、直接ここまで来て、というのは難しいだろうしな。
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