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209/1995

捕らえた商人達の尋問の成果を聞きました



「病を広め、ガラス球を回収するため、というのが大きな理由のようですな。貴重な物なので使い捨てにするつもりはなかったようです。しかし、ランジ村の様子を見た時は驚いたとも言っていましたね」

「驚いた? 何故?」

「ランジ村に病が広まっていなかったからです。原因になるガラス球を置いている村ですから、当然病が広まって皆が弱っていると考えていたのでしょう」


 実際、ランジ村には病が蔓延していたからな、商人達の考える事は間違っていなかっただろう。

 もし、オーク達を解放した時、村人達のほとんどが病に冒されていたら、一緒に戦う事もできなかった……そうなれば狙い通り、俺も含めて村の全てはオーク達に蹂躙されていたと思う。


「タクミ様のおかげで、ランジ村には病は広がっていない……商人達はそれでもガラス球を回収する事を優先して、オーク達を解放したわけです」

「イザベルが調べた内容を聞いた限り、貴重な物というのはわかるわ。悪用しようとしたらいくらでも方法はあるでしょう」


 どれだけの価値が付くのかはわからないが、相当高価で貴重な物なのだろう。

 悪用する事を考える人にとっては、回収する方がオーク達を大量に捕まえる手間より重要なのかもしれない。


「さて、商人達がランジ村にガラス球を置き、病を広げようとした目的ですが……」


 いよいよ核心部分……かな。

 俺の推測では、例の店と繋がっていて、病を広げる事で薬草を売って利益を得ようとしていたとなるけど……はてさて。


「商人達の目的は、ランジ村を使っての疫病を発生させる事。そして貴重な魔法具であるガラス球の回収ですな」

「何故そんな事をしたんでしょうか?」

「理由は、伯爵……バースラー伯爵より命じられたから、との事です」


 バースラー伯爵……公爵家の隣の領地を持つ貴族だ。

 やっぱりその伯爵が命令して、疫病をラクトスに広めたのか。


「伯爵が何を考えて命じたのかまではわかりませんでしたが……」

「その商人達は知らないのですか?」

「商人達は、ただ命じられただけですな。これに関しては、失礼ながらレオ様の事も使って脅しを掛けましたが、わからないの一点張りでした。……恐らく本当に知らないのでしょう」


 悪人がよくやる手口として、末端の者達には詳しく教えず、ただ使い捨てにする……というのは聞いた事があるが……今回もそれらしい。

 ただ、貴重なガラス球の回収を、使い捨てにするつもりの商人達に命令しているあたり、お粗末とも言えるかもしれないが。


「伯爵は何故そんな事を……」

「それは私にはわかりかねますな……しかし、伯爵は公爵家を疎ましく思っているのは確かなようです。……このような事を仕掛けて来ているのですから」


 クレアさんが顔をしかめて呟いた言葉を、セバスチャンさんが拾って答えた。

 セバスチャンさんの言う通り、ここまでの事をしているのだから、何かしら公爵家に対して敵意を持っているのは間違いないだろう。

 病を広げるだけでなく、村を一つ潰そうとまでしたんだ……ただの遊びじゃ済まされない。


「……タクミ様、少し落ち着いた方がよろしいかと。お顔に出ていますよ?」

「タクミ様、どうぞ」

「……すみません。……すぅ……はぁ……。ありがとうございます。ん……美味しいですね。おかげで落ち着きました」

「タクミさんのお気持ちはわかります。公爵家に敵意を持っている事とは別に、無辜の民を犠牲にするやり方ですからね」


 ランジ村にいた気の良い人達、ラクトスの街で暮らしてる人達や孤児院の子供達。

 色んな人を巻き込んで病で苦しめ、さらにランジ村を魔物に襲わせて潰そうとした。

 そんな事を考えていると、バースラー伯爵とやらへの怒りのようなものが沸き上がってきて、顔に出てしまっていたようだ。

 セバスチャンさんに注意され、謝りながら深呼吸をし、ライラさんにお礼を言ってお茶を一口飲む。

 おかげで、冷静になれた。


 クレアさんの方も眉をしかめて、俺のフォローをするように言っているから、腹に据えかねているのだろうと思う。

 伯爵に対して、怒っているのは俺だけじゃないんだ。

 セバスチャンさんも、表面上は冷静だがもしかしたら怒っている部分もあるのかもしれない。

 ……はっきりとレオを出して脅した、とも言っていたしな。


「伯爵の目的ははっきりとはしませんが、これは公爵家に対する明確な敵対行動です。旦那様には徹底的に対応してもらいます」

「お父様なら、民が苦しんでる様子を放っておかないでしょうしね」


 エッケンハルトさんは豪快な人だが、人情には厚い人のように見えた。

 それなら、公爵家という権力を使ってでも、伯爵をなんとかしてくれるだろうと思う。


「あとは、例の店に対処する事で、今回の件は一応の決着となるでしょう」

「商人達と例の店の関係はどうだったんですか?」

「直接は関係が無さそうですな。商人達はラクトスで薬草の販売に関して何も知りませんでした。恐らく伯爵が別で命じた事なのだと思われます」

「そうだったんですか」


 ガラス球を見つけた時、俺は商人達と例の店は繋がってると考えていたが、どうやら違ったようだ。

 素人の推理だから、違っていても仕方ないか。


「例の店の方には、おそらく伯爵からある程度の情報は渡っているものと思われます」

「そうね、疫病が広まる事、病を治すために薬草が必要な事。それくらいは知っているでしょうね」

「はい。伯爵からそれらの情報を受け取り、命じられる事で、ラクトスの街で先んじて行動出来たものと思われます。それと……」

「まだ何かあるんですか?」

「資金提供もされているでしょうな。複数の人物が命じられたと考えても、それらだけで街にある薬草を全て買い占める事ができるとは考えられません」


 それは確かにそうだ。

 伯爵……貴族からの資金提供があって、ようやく街中の薬草を買い占める、という事ができたんだろう……薬草も安い物ばかりじゃないからな。

 それに、何か行動をするときに人を雇うのにもお金が必要だ。

 そう考えると、個人でやれる規模じゃないのは明らかだ……まぁ、元々富豪とかだったら別だろうけど。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。

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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 反逆敵対結構、だが本人に直接カチコミかけるのはいいがただ住んでるだけの 無関係な人間を巻き込むのは好きになれんな。
2020/01/31 19:21 退会済み
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