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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2019/2019

セイクラム聖王国への鎖

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。


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前話に引き続きユート視点でお送りします。


「他の王族を即位させるって案もあったんだけどね。ふふふ、失敗が多い王の方が付け入る隙があるでしょ? だから、失敗に関しては公にせず、前聖王も知らない事なんだ。たとえ現時点で国王になっているとはいえ、過去のやらかしはその立場を危うくさせる。権力欲が強い者には、その権力が揺らぐ可能性を示すのが一番動きを止めさせやすいんだよ」

「ふぅむ……自業自得ではありますが、多少同情したくもなりますな」

「僕を敵に回すのがどういう事か、わかっていないからだし、同情する必要はないよ」


 こめかみに浮かんだ汗の流れる量を増やしたハルトにそう言う。

 国の平穏のためなら手段なんて選んでいられないしね。

 もうとっくの昔に王位から退いているとはいえ、こうして生きている以上僕にはこの国に対する責任があるんだから、多少の暗躍くらいはするよ。

 とはいえ今回は、僕以上に敵に回しちゃいけない相手を刺激しているんだから、手札を全て切ってでも動かなければいけないんだけど。


「まぁ結局、閣下がしでかした事を受けて反省せず、今回の事件に繋がってしまったのでこうなるのは決まっていたと言えるのでしょう」

「おおう、ルグレッタもバッサリ。それでこそルグレッタさん! 僕の事もバッサリ言って!」

「……言葉ではなく、文字通りバッサリ行くのがお望みですか?」

「う、うん。さすがにそれは僕も受け止め切れないかなぁ」


 茶化すように言う僕に対し、青筋を浮かべて剣の柄を握るルグレッタの言葉で、背筋に冷たい汗を流しながら遠慮する。

 言葉や視線だけでなく、物理的に痛めつけられるのも好きだけど、さすがにバッサリ斬られたら生命活動が止まっちゃうからね。

 気持ち良さとか感じられなくなるし。

 ……いや、でも待てよ? ギリギリを見極めればあるいは……? 僕自身がトレンツァにしたような事を、ルグレッタにやってもらうなら――。


「……どうあっても、閣下にはご褒美になってしまうようですね。はぁ」


 考えていた事を察したのか、ルグレッタが頭痛を抑えるように額に手を当て首を振る。


「あれ? なんか今、僕は見損なわれたのかな?」

「毎日のように、見損なっております」

「うんうん、いいよいいよ!」


 やっぱりルグレッタはこうじゃなくちゃね。

 その冷たく、僕の事を虫でも見ているかのような視線は、ゾクゾクするのを抑えられないよ!


「閣下、戻ってきて下さい」

「はっ! おっといけないいけない、ルグレッタがあまりにも僕好みだから、思わずトランス状態に入りそうだったよ」

「……複雑です」


 ハルトの呼び声に、湧き上がる悦びに身を任せそうになった自分を律する。

 何やら顔を伏せたルグレッタが呟いているけど、どうかしたのかな?


「んん! 閣下の趣味はどこかへ放り投げておきましょう。それで、聖王の反応ですが――」


 わざとらしく咳払いをするルグレッタの頬が、ほんの少しだけ赤くなっているような気がするのは気のせいだろうか。

 聖王のやらかした事に対して憤っているのかもしれないね。 


「むぅ、面白くなってきたところなのに」

「今は真面目にこれからの対応を考える場ですからな、仕方ないでしょう」


 と、苦笑をするハルト。

 場合によっては、というより向こうの出方次第ではルグレッタに弄ばれる楽しみどころじゃなくなっちゃうし、確かに仕方ないか。

 まぁさっさと真面目な話に戻るルグレッタに、また少しゾクゾクしていたのはとりあえず押し留めておこう。


「……ふむ、成る程。とりあえずセイクラムはしばらく様子見で良さそう、かな?」

「これを見る限りではそうですな。ただ、今後トレンツァや聖王がまた悪巧みをしないとも限りませんが……」


 報告書の中にある、トレンツァが帰還した直後の謁見内容。

 事細かに会話内容が記されているそこには、聖王が成果を期待し、だけどトレンツァがフェンリルを一体も連れていない事を不思議に感じている様子から始まっている。

 所感などもなく、ただ淡々と実際に交わされた会話を記されているからこそ、逆に聖王がどれだけ期待をしていたのかというのがよくわかった。

 トレンツァが体を震わせながら失敗の報告をした時の落胆まで含めると、楽しみにしていた遊びを待ちきれない子供が、中止になったと知って落胆してしまうような感じかな。


 ちなみにトレンツァが体を震わせていたらしいのは、失敗報告をしたくなかったからとか、聖王の反応が怖かったからではなく、本当に恐れているのはまぁなんというか……色々と僕が脅しちゃったからね、そのせいらしい。

 ともあれ、失敗報告から落胆した聖王は、何故そうなったのかと激高しトレンツァを責めたようだ。

 その後はつらつらと計画が成功すればセイクラムはどうなるかとか、失敗した事でどれだけの損失がとか、まぁ延々とトレンツァや共に動いていた暗部相手に当たり散らしていたみたい。

 聖王とトレンツァだけの計画、というわけでもないためか、謁見の場には他にも関係者が揃っているというのに、王としてただ傲慢な姿を晒すだけというのはやはり愚かと言うしかない。


 だからこそ、僕が暗躍してセイクラム聖王国の国王にするようにしたんだけど。

 野心なく、こちらの国に対して害意が一切ないのであれば、賢王に成り得る人物が王位についてもいいんだけど、ご近所さんだからね。

 今回の件はちょっと予想の斜め上をいかれたけど、基本的には想像の範囲内で愚かな事をやって自分の立場を危うくしたり、勝手に墓穴を掘るような愚かな王の方がこちらとしてはやりやすい。


「愚かだからこそ、めげずに悪巧みをする。ハルトがそんな心配をするのはわかるけど、まぁそれは大丈夫だよ。そのための鎖だからね」


 先程ハルトが気にした、僕が暗躍した聖王の失態。

 元々、セイクラムに対しての手札として持っていたけど、今回が使いどころだよね。

 さらに言うなら、トレンツァ――正確にはトレンツァの近く、暗部に潜む者。

 それらを合わせての鎖。


「……この、魔王との関わりですか」

「あ、もう一つあったね。全部で四重だ。もうがんじがらめだよ。しばらく……もしかしたら、現聖王が退位するまではセイクラムは大きく動けないかもねー」


 なんて言って笑う。

 ちょっとだけ悪役っぽ笑い方になったのはご愛敬。


「魔王、ですか。他国の一部でそう呼ばれているのは知ってはいましたが、それほどの抑止力が?」

「まぁ、僕の事を知る人だけにしか通じないけどね」


 魔王、それは僕に対する二つ名とか異名とか、そんな感じの呼び名。

 ゲームとかではラスボスだったりするから、おかしな話だよねまったく。

 とはいえこの場合の魔王というのは、魔族の王とか悪魔の王、という意味ではなくあらゆる魔法を使う王というだけの意味だ。

 僕のギフト、『魔導制御』がこの世界に存在するどんな魔法でも使える、という事から来るわけで、昔はこれで散々暴れまわったからね。


 そのうえで、建国して王になったから魔王なんて呼ばれ始めていい迷惑だよ。

 あれ? ギフトを駆使して侵略者を蹂躙したからだっけ? トラウマ製造機なんて呼ばれるくらい色々と暗躍して弱みを握るために、人間には使えない魔法をギフト頼りで使っていたからの可能性もあるかな?

 何しろ呼ばれ始めたのはかなり昔の事だし、誰が言い始めたのかすらわからず、いつの間にか僕の事を知る人の間で広まっていたから、細かい事はよくわからない。

 でもまぁ、今回の事のように抑止力としてや牽制に使えるから、悪い事ばかりでもないかなとは思う。


「公爵閣下はユート閣下の機密を知っているので、魔王という異名も知っているうえその理由もおわかりでしょうが、ただそれだけです。ですが他国の、とりわけ隣接国の間では恐怖の代名詞として伝わっています」

「失礼しちゃうよ。誰が恐怖の大王だってんだってね。僕は世紀末に人類を滅ぼしたりしないのに」

「……恐怖の大王、というのはよくわかりませんが。成る程、つまりユート閣下が魔王と呼ばれている事と、その魔王であるユート閣下と関わる事そのものが、セイクラムにとって抑止力になるわけですな」

「まぁねぇ。それだけで確実にってわけでもないけどね」


 そもそも聖王は僕の事は知っているのに、今回の件を起こしたわけだし。

 一応トレンツァには僕と関わらないように、みたいな注意はしていたみたいだけど、それもあまり深くではないようだった。

 軽々しく僕の詳細を明かして注意を促すと、僕を刺激すると思ったのか、それとも詳しく話せば話す程信憑性などが薄れると考えたのか……どっちもかな?


 自分の事でありながら、僕自身でも時々これまでの事を思い返すと現実味が薄れて、本当にそんな事やってきたっけ? なんて思う事もあるからね。

 僕の場合は昔の事に対して、一部記憶が薄れているからこそ現実味も共に薄れているのかもしれないけど。


「僕という抑止力、トレンツァが聖王にだけ伝えた過去の失態でそれに気付いたわけだ。それが一つ……いや失態を公にされる可能性で二つか。さらにトレンツァを取り込んで三つ目。監視も兼ねてこちらから暗部に潜り込んだもの数名で四つ目。これでがんじがらめの鎖の完成だね。四つ目は、向こうが気付いていないから実質は三つだけど」

「そこまでされれば、悪巧みするどころではありませんな。もししようとしても、簡単に潰せます」

「おそらく、今後現聖王は退位するまでか、それ以後もユート閣下の恐ろしさに震えて過ごす事になるでしょう」

「えー、そこまで怖がらせたつもりはないけどなぁ。変な事をしたら許さないぞ? ってくらいなんだけど」

「魔王と関わってしまったというのは、セイクラムにとってはそれだけの事なのです。むしろ、その一点だけでも十分と言えましょう。それだけの事をこれまで閣下はやってきていますし」


 元々、トレンツァを捕まえた後に利用する事を思いつくまでは、その一点で押し通そうとしていたから、まぁルグレッタが言うように十分だとは思う。

 それこそ、トレンツァの失敗をその証拠と共に、僕からのメッセージを添えて伝えればってね。

 でも実際には事を起こしたトレンツァを利用すれば、もっと強固に鎖を巻き付けられると考えたわけだ。


「僕はともかく、暗部に潜り込ませて、監視の目を想定以上に強くできたのは大きいよね。まぁそれもタクミ君のおかげなんだけど」


 そう言う僕に、ハルトやルグレッタも同意するように頷く。

 正確には暗部を捕まえたのは主にフェンリル達の功績だけど、タクミ君やレオちゃんがいなかったらそれができていなかったんだから、タクミ君達のおかげで間違いない。

 暗部は逃げ足だけは一級品だから、捕まえようとしても簡単にはいかないからね。

 それを何人も……合計で二十人以上はいたかな?


 捕まえた暗部を解放する事も、こちらにとって有利になる事だったけど、さらにその中の数名を入れ替えてこちら側の密偵を監視役などとして潜ませてある。

 トレンツァにはもちろん口裏合わせをするようにさせているし、そのトレンツァに対しての監視も担っている。

 そもそも、謁見した内容が事細かに記されている報告書も、潜ませた密偵からの物だからね。

 タクミ君達のおかげで、セイクラムに関する情報が手に入りやすくなってありがたい限りだね、うん。


「タクミ殿は意図していない事でしょうが、これでタクミ殿、そしてレオ様の周辺が騒がしくならないのであれば、良い事だと」

「そうだね。刺激しちゃいけない、それこそそのままの意味で触れちゃいけない相手と言えるからね」


 触らぬ神にたたりなし、だっけ? レオちゃんはまさしくそういう存在。

 まぁ神ではないけど。

 いや、神様というのが人知の及ばない力を持っていて、崇拝されているからこそと考えれば、ある意味神様なのかも? とまぁ、宗教感とかは今どうでもいいか。


「騒がしくならないように、と言えば周辺国ですが」

「セイクラム聖王国は、今回の鎖でしばらくは動けない。しかもタクミ君のおかげで作れた椿油の影響で、国内での対応に追われるだろうからいいとして。もちろん、監視は続けるけど。周辺国は、僕との関係を示しておけば、そうそう手出しはしてこないはずだよ。セイクラム程の愚かな国はそうそうないしね」

「それと、閣下が言ったように椿油の影響もあるでしょう」

「ハルトの言う通りだね。当然、製造元は政治には口出ししないし、そういう組織だけど、配慮はしなくちゃいけない。まぁそれ以上に、シルバーフェンリルにちょっかいなんて出そうと思わないよね」


 聖王程愚かであれば別だけど、そうじゃなければ本当に触れようとは思わないだろう。

 タクミ君には僕達が全力で保護するとか、ちょっかいを出させないようにというような約束をしたけど、実際は難しい事じゃないし全力を出す程じゃない。

 とはいえ、国単位でなくとも個人や小規模の馬鹿の集まりとかが何かしでかす可能性はあるから、そのための情報収集や対応は全力でやらせてもらうけどね。


「ここしばらくは、閣下が国内に意識を向けていたため、セイクラムの動きを見落としていましたが、今後は広く見る必要がありますね」

「うん。ルグレッタにも協力してもらうけど、そのように動くつもりだよ」


 国内に意識を向ける、某時代劇じゃないけど僕自身の影響力を使って、国内を見回り、おかしな事を考えたりやろうとする馬鹿を潰す。

 それが、旅を続けていた理由の一つであり、マリエッタが以前僕の役割、と言っていた事でもある。

 僕としては発展、もしくは衰退していく国内を見る楽しみみたいなのを満喫しているつもりではあるんだけど。

 というか、エルケリッヒは元公爵家当主だからともかく、マリエッタには僕の詳細を話していないのに色々と勘付かれているんだよね。


 もちろんエルケが漏らしたとかではないんだけど。

 ……本人が鋭いのもあるけど、数十年ものあいだ見た目とかが全く変わらない時点で、ある程度の事は察して然るべきかな。

 マリエッタに限らず、長年公爵家に仕える使用人とか、他にも差異はあれど察しているのは他にもいるようだし。

 とはいえ、クライツ男爵――既に廃爵が決定し、本人は捕まえてあるから元男爵だけど――そのクライツとセイクラムとの繋がりを見逃していたのは、痛恨の極みだね。


「ですが、他種族の国家はどうでしょうか……ユート閣下の威光を疑うわけではありませんが、それだけで済む相手ではないように思うのですが」

「ハルトの心配はもっともだね。同じ人間が主体の国家であれば、シルバーフェンリルであるレオちゃんにそうそう手出しをしようとは思わないし、僕が過去に色々やってきたから触れようとはしない。けどねぇ……」


 ハルトの言葉に頷く。

 人間の国家相手であれば何とでもなるけど、この世界には獣人を含めて他にも様々な種族がいて、それぞれに対応を考えなければいけない事を考え、思わず顔をしかめてしまった――。




申し訳ございません、体調不良により11日の更新をお休みさせていただきます。



トレンツァのその後などでユート視点を終わらせようとしたのですが、そういえば他種族などの話を獣人以外は出ていなかったなと思い当たり、この機会に色々と出す事にしました。

申し訳ありませんが、もう少し続きます。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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