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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2018/2019

お昼寝会と報告会



「あ、そういえば!」

「ど、どうしました、タクミさん?」

「ワフ?」

「パパー?」

「ガァ?」


 大体のフェンリルを構い終えた頃、パッと頭の中で思い出された事があり、思わず声を出した。

 思ったより大きな声が出たからか、クレアだけでなくレオやリーザ、近くにいるフェンリルや手伝ってくれていた使用人さん達も何事かとこちらを見ている。


「いやその……バスティアさんはどうしているのかなって。巻き込んだ上にずっと寝ていて、完全に放っておいてしまっているし悪い事しちゃったなって」

「あぁ、バスティアさんですか。それならまだ、ランジ村に滞在していますよ。タクミさんが無事なのかと随分心配してくれていましたし、いずれ目を覚ますと伝えたら、それまで待つと」

「そうなんですか。はぁ、迷惑かけちゃったなぁ」


 トレンツァさんとのあれこれに、バスティアさんとの契約を一緒にして巻き込んだから、既に迷惑をかけているんだけど、さらにだ。

 さすがに七日間も寝続けるなんて予想できなかったけど、完全に俺が悪いよな。


「バスティアさんは、連れの人達と一緒にレミリクタの様子を見たり、村の者達と楽しそうに話していたみたいです。待たせてしまっているのは確かにそうですけど、迷惑という程ではない気がしますね。こういう事というか、数日どころか十数日かけてというのは商取引、それも最初の契約時にはよくある事ですから。私やお父様、アルフレット達からも何度かお話していますし」

「ありがとう。とはいえ、契約をするだけして騒動に巻き込んですぐに放っておくっていうのはさすがに気にしちゃうからね。謝っておかないと」


 俺がいないと契約に関して何も進まない、というわけではないだろうけど、それでもな。

 バスティアさんが、やっぱり考え直させて……なんて事がなければ、契約自体はあの時にちゃんと締結して有効なはずだし、アルフレットさんやキースさんがいれば話を進める事はできるだろう。

 一応、商会長という立場で責任者だから、俺の決裁とかが必要な事もあるだろうけど、それが多いわけじゃない。

 バスティアさん達が来る前は、俺の主な仕事はほとんどが数字を含めた情報の確認ばかりで、決裁とかほぼなかったし。


「バスティアさんの方も、私やお父様――公爵家と、タクミさんに話したい事があるようだったので、待っていたんだと思いますけど……」

「そうなの? 俺だけでなく公爵家にもって、なんだろう? まぁ、話を聞けばいいか」

「タクミさんが起きてから、という事でしたし、バスティアさんの方も急いでいるわけではないようでした」


 なら、今すぐ急いで謝りに、とかでなくてもいのかな。

 とりあえず、近くにいる使用人さんにバスティアさんがどうしているか、今日今すぐ会いに行った方がいいかなどを確認をお願いする。

 俺が目を覚ました事自体は、村の人達に顔を見せたから伝わっているだろうけど。


「あふ……」


 一応集まっているフェンリル達は全て撫でたりなど、労って構ったんだけど、その後も一部のフェンリルを撫でているクレアが、欠伸をしそうになってかみ殺すのを見かけた。

 ちなみに俺は、せがまれたので仰向けになったレオのお腹を撫でている。

 リーザは別のフェンリルのお腹の上に転がっているけど。


「す、すみません。どうもフェンリル達を撫でているのが心地よくて……」


 俺に見られたのに気付いたクレアが、少し恥ずかしそうにする。

 まだ夕食までに余裕があるくらいで、眠くなる時間じゃないし、クレアにしては珍しいなと思って気付く。


「もしかして、あまり寝てない?」

「……はい、すみません」

「いや、謝る事じゃないけど。というか、俺のせいだよね、ごめん」

「いえ! タクミさんのせいでは……」


 クレアは、レオやリーザと一緒にずっと寝ている俺に付き添っていたらしいからな。

 さすがにずっと起きていたわけじゃないだろうけど、クレアの事だから俺がいつ起きるかと思って、あまり寝られていないんだろう。

 というか、俺の部屋には数人が余裕を持って寝られる大きなベッドが一つあるくらいだし、ちゃんと寝られる環境じゃないだろうしな。

 環境はともかく、それだけ心配されていたという自覚はあるからな。


「ワーフ……」

「ふわぁ……」


 クレアに釣られたのか、俺がお腹を撫でているレオや、フェンリルのお腹に転がっているリーザも同じく欠伸をした。

 レオ達もクレアと同じように、あまり寝ていないんだろうな。

 周囲のフェンリル達も、多くが欠伸をしているようだったけど、そちらは寝不足とは違って単純に欠伸がうつったんだろうけども。

 欠伸って、なんで伝染するんだろう――というのは今どうでもいいか。


「ふ、あふ……すみません、安心したらつい」

「それだけ気を張ってくれていたって事だからね。そうだ――」


 話している間も、再び欠伸が出てしまうクレアは恥ずかしそうにだけど、それだけ限界が近いんだろうと思う。

 まぁ本人が言っているように安心したのと、フェンリルの撫で心地が良くて眠気を誘われているってのもあると思うけど。

 それならと、近くにいた使用人さんにいくつか確認し、用事を頼む。


「ありがとうございます」


 少し待って、用を頼んだ使用人さんが持ってきてくれた毛布を受け取り、さらに確認していた事を聞いてお礼。


「クレア、ちょっとこっちに。あ、リーザも来るか?」

「どうされたんですか?」

「うん!」

 眠そうに眼をこすりながらも、元気よく頷いてこちらに来るリーザと、何をするのかと不思議そうなクレア。


「レオは……このままがいいか? それとも」

「ワッフ」


 俺が言いたい事、やりたい事がわかったのか、レオがのっそりと体を起こして伏せをし、丸くなる。

 首を傾げるクレアの背中を軽く押し、尻尾を揺らすリーザと隣り合わせで、レオのお腹辺り、要はレオの毛に包まれるベストポジションに体を持たれかけさせた。


「バスティアさんは明日以降でいいらしいし、今日は他に何もないようだからね。夕食までひと休みしておこう」

「え、でも……」


 さすがに抵抗があるのか、恥ずかしそうにするクレアと隣のリーザに毛布を掛ける。

 さらに毛布と一緒に受け取っていた大きな日除けの傘を立てた。


「これでよし、と」


 心地良い風と陽気だけど、さすがに直射日光に当たったままはいけないからな。

 俺は気にしないけど、クレアは日焼けとか気にしそうだし。

 リーザは日陰の方が心地よさそうだ。


「ふわぁ、ふ……」

「ワフ~」


 すぐにまた欠伸をしてうとうとし始めるリーザと、同じく息を吐くような欠伸をしたレオ。

 俺達の様子を見守っていたフェンリル達も、こちらに近付いてそれぞれがくっつくようにして丸くなった。

 フェンリル達もっていうのはちょっと予想外だったけど、絶好のお昼寝環境が整った。


「ふふ、わかりました。タクミさんがそこまで言うなら。それに、逆らえそうにもありません。でも、タクミさんも一緒ですよ?」

「ははは、そうだね」


 レオの心地良い毛並みと温かさ、雰囲気もあるけどそれらに寝不足の状態で逆らえるのは相当に強い意志が必要だろう。

 ぽんぽんと、自分の横を示すクレアに苦笑しつつ、同じ毛布の中に入れさせてもらう。

 クレアのすぐ隣で――と、さすがに少しだけ緊張したけど、七日間も寝続けて夜眠れるのか心配ですらあった俺も、心地良い環境が整い過ぎていて全身の力が抜けて眠気が湧き出て来るようだった。

 というか、俺とクレアにリーザが並んでもなお余裕がある大きな毛布、ここまでの大きさを用意して欲しいとは伝えなかったんだけど、頼んだ使用人さんはこうなるとわかっていたのか……。


 なんて考えつつ、最高のお昼寝環境に身を任せる。

 ちなみに、その雰囲気や環境のせいか、使用人さん達のほとんどや見かけた人達の多くが誘われるように昼寝に陥ったと起きた後で惨状を知った。

 割と無防備に熟睡してしまう使用人さん達が多くて、フェンリルに抱き着いて涎まで……というのは見なかった事にしておこう。

 まぁその後、一部の使用人さんは強い意志でお昼寝環境を跳ね除けられず、仕事が滞っていたため、セバスチャンさんやアルフレットさん、クレアの執事長であるヴァレットさんに叱られたらしい。


 絶好のお昼寝環境を整えてしまって、すみませんと謝っておくべきか……。

 あと、一部の使用人さんや従業員さん、さらにユートさんとテオ君、それからオーリエちゃんやティルラちゃんに「ズルい!」と抗議された。

 特にユートさんは激しく抗議していたけど、いずれまた機会があれば。



――――――――――



「あー、あれいいなぁ。僕も行っていい?」

「気持ちはわかります。激しくわかりますが、今はこちらの方が重要です」

「うー、ルグレッタは真面目だなぁ」

「閣下が思い付きで始めた事なので、責任を持っていただかないと」

「むぅ」


 タクミ君の屋敷、その一つの部屋で中庭がのぞける窓から見えた光景に、羨ましく思いながらもルグレッタの言葉で仕方なく息を吐く。

 それでも視線は、気持ち良さそうに昼寝をしているタクミ君達をチラチラとみるのを禁じ得ないけど。

 同じく部屋にいるハルトは苦笑しつつも、僕と同じく窓の外をチラチラと見ているから、混ざりたいんだろう、だが僕がいけないんだからハルトも逃がさないよ!


「あの光景を見ますと、やはりタクミ様には気づかれないよう、その心を乱さないよう進めるのが肝要なようですね」


 ルグレッタの言葉に、ハルトが頷いている。

 真面目を装っているけど僕は気づいているよ、ルグレッタもあちらに混ざりたいと思っている事を。

 いつも鋭く冷たく眼差し、僕をゾクゾクとさせてくれるそれが、今はその影もなくものすごく優しく窓の外へ向いているんだから。


「ね。あの平和すぎるくらいの光景を壊すのはってのもあるし、絶対に敵にしないとしても、あの全てが一斉に動くと考えたらその影響は計り知れないからね。余波だけでどれだけの事が起こるか」


 レオちゃんだけでも十分なくらいなのに、フェンリル数十体にタクミ君のギフト。

 世界ごと吹き飛びそうだ。

 とまぁそんな事は置いておいて……早くこの場を終わらせたら、タクミ君達の方に混ざれるかもしれないし、本腰を入れよう。


「さて、本題だけど――トレンツァ及びセイクラム聖王国への鎖計画の経過報告だっけ?」


 そう言葉にしつつ、ルグレッタが持ってきた報告書に目を通す。

 報告書には、トレンツァがセイクラム聖王国の王都に到着、国王――つまり現聖王との謁見やその後のやり取りなどに付いて事細かに書かれている。

 ルグレッタもそうだけど、この報告書を作った人物の生真面目さがわかる内容で、特に意味もない雑談と言える内容も、事細かに一字一句逃さない意気込みが見られる程に記されていた。

 さすがにプライベートはそっとしておこうよ、と思うけど監視という意味ではそこまでしなければいけないだろうから、息を吐きつつ読み進める。


 これらの報告はトレンツァがセイクラム聖王国に帰還し、その後どうなっているかの経過を見守る意味がある。

 ただ本来ならあり得ない日数でトレンツァがセイクラムに到着しているのは、裏技を使っての事だ。

 向こうにはバレていないし、バレないようにしているけど、僕が直接関わる事によってそれを可能にしているわけだ。

 転移魔法とかよくある便利な魔法が使えればいいんだけど、そんなものは存在しないため、人間が使える魔法とは別で、僕のギフト任せでできる移動法だ。


 ちょっとばかり内臓に損傷が発生したり、時間差でしばらく寝たきりになったりする事もあるけど、回復手段も一緒に用意している。

 トレンツァ自身に直接僕がそうしているし、トレンツァの周囲を固める監視者も何度か経験して慣れているから多分問題ないよね。


「トレンツァは閣下の思惑通り動いているようです。おそらく、閣下が森で掴まえた際に行った脅しがかなり効いているのかと」

「私としては、効きすぎているといった感想ですが。まぁ、あれだけの事をしでかしたので気持ちはわかりますが」


 冷静なルグレッタとは違い、こめかみから汗を流しつつハルトがそう言う。

 ハルトには僕がトレンツァに何をして、どういう情報を引き出したか、どう動かしているかなどまで伝えてあるからの反応だろう。

 タクミ君に一番近い……のはクレアちゃんだけど、クレアちゃんに聞かせるには刺激が強すぎるから、ハルトにだけ話しているってわけだね。


「ふむふむ。思惑通りいっているのなら安心だね。えーっと、向こうの国王の反応は……あ、これか」


 何枚もに及ぶ報告書の中から、トレンツァと国王が帰還直後に謁見した部分を見つける。

 そこには、帰還の挨拶などから始まり、今回の件の結果報告からその後の国王に対する牽制まで、謁見内容の全てが書かれていた。

 他国、それも向こうは敵視しているとも言えるこちら側が、本来絶対外に漏れてはいけない謁見内容の全てがわかるのは、トレンツァを引き込んだ事による成果と言えるだろう。


 これだけでも十分、こちらにとって有益だ。

 セイクラムにとってはあってはならない事だし、

 まぁ一歩間違えばこうして平和に過ごす事はできなくなり、いくつかの国が吹き飛んでもおかしくない事をしでかしているんだから、それくらいで済んだと思って諦めて欲しいところだ。


「十一年前の魔物討伐失敗。十年前の前聖王暗殺未遂。さらに他国の要職に就く者に対する継続的な裏切り工作の失敗、ですか。他にも色々と――ですが、ほとんどが失敗しているのですがそれは……?」

「魔物討伐以外は、僕が失敗させたからね。前聖王は、現聖王よりはまだこちらに対して緩かったし、あの時点で暗殺が成功して代替わりしたら面倒だったからね。裏切り工作については、こちらだけでなく複数の国に対してやっていたから、成功させるわけにはいかないし」

「まぁ、それは確かに。ですが、ここまでの事をしていたのですね。結局、その失敗があれども即位しているわけですが」

「うん。それも僕がそうさせたんだよ」


 自分でも暗躍しているなぁなんて思いながら話す。

 ハルトはセイクラムとは離れている領地を治めているし、関わりがなかったために話していないから知らないけど、結構セイクラムとは水面下でやり合っていたりするんだよね。

 向こうが嫌がらせをするなら、こちらは弱みを握ってそれを牽制、押し留めるって感じだね。

 とはいえそれでも、愚かとしか言いようがない現聖王はトレンツァを使ってやらかしたんだけど。


 過去の反省をせず、自国に目を向けてコツコツとやっていれば愚王とは称されないくらい、セイクラムは元々の国力があるのになぁ。

 一足飛び……シルバーフェンリルの利用を考えるとそれどころではなく、裏技中の裏技、反則技とも言える方へと向いてしまった。

 それが不可能だとは欠片も考えずに。

 最悪の事態を招きかねず、しかもそれに思考を巡らせず、本気でそれを実行しようとしていたんだから過去の所業を抜きにしても、愚かと言わざるをえないよね――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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