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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2016/2019

今後の安全が保証されるようでした



「悪い意味での道具ってのはそうだけど、凄い物だなんてとんでもない。結果的に、カナンビスの薬もあって一時的にフェンリルを従わせられたけど、ただそれだけ。ずっと使い続けなければ、それこそフェンリルならいずれその呪縛から逃れられるくらいのものだよ。オリジナルは、もっとずっと効果が強くて恐ろしい物だからね」

「オリジナル……」

「正直、あまり話したくないんだけど。でも、関わっちゃったからね。もし興味を持っても絶対に使わないし作ろうとしない、って誓って欲しい」


 いつものユートさんと違い、真剣な表情で皆に言った。

 その雰囲気に、それだけ大事なんだと思い、誓うように頷いた。

 エッケンハルトさんは知っているようだけど、クレアや他の皆も俺と同じく絶対に使わないし作らない、と誓った。

 まぁ作り方は知らないし、現物があったとしても使いたいと思わないが。


 そうして語られる強制隷従具のオリジナル。

 名称は違うようだけど、その対象は個人に限られるがその効果が強く、それこそ人であろうと強制的に従わせられる。

 一つにつき一体ではあるけど、誰でもとなるとそれがどれほど危険な物なのか簡単に想像できる。

 また、一度効果を利かせれば、使った者と使われた者どちらかの命が失われるまで続き、打ち消す方法はない、従魔とは根本的に違うものなのだとか。


 従魔契約は一応強制できないし、打ち消す方法もあるうえ、人間と魔物の間で成立する。

 比べてみると確かにユートさんの言っているように、根本的に違うと言うのもわかる。

 従魔というより、奴隷、隷従という言葉が合いそうだ。


「そんなわけで、危険なそれを放っておくわけにはいかないから、大分前に探して破壊したり、封印したりしたんだよ。それが、使用はできなくなっていても現物がトレンツァの手に渡っちゃったみたいでね。アレンジというか、劣化版の強制隷従具を作っちゃったわけなんだ」

「それも試験をしていたらしいがな。それでトレンツァはある程度の自信を持って、使うに至ったのだろう。ユート閣下は劣化と言っているが、とりあえず使えるとなっただけで、実際は本当の意味で完成していなかっただけなのではないかと思う」

「完成していたら、もっと強い効果で今もフェンリル達が苦しんでいた可能性があったかもしれませんね」


 劣化、もしくは未完成だったからこそ、フェンリル達はすぐに強制隷従から解放されている可能性もあるからな。


「そういえば、魔物が多く棲息しているからこの国で、ついでに公爵領で俺やレオがいる場所の近くでって言っていましたけど、強制隷従具も試験していたんですか?」

「そのようだ。そちらは暗部をユート閣下が締め上げ……もとい、調べてわかった事で、トレンツァとは別の思惑が働いていたようだが」

「暗部から……以前フェンリル達が捕まえた暗部の人達は、何も話そうとしていなかったはずですけど」

「そこはほら、あれだよ。魔法でちょいちょいっとね。幻とかそんな感じで。やりすぎると色々壊れちゃうから安易にはできないんだけどね、トレンツァとは違って暗部は訓練された奴らだから、平気かなって」


 平気かなって……そんな簡単に考えてやったのか。

 どういう事をしたのかまではわからないけど、壊れるなんて物騒な言葉を聞けば、まともな方法じゃない事くらいはわかる。

 内容を知っているのか、ルグレッタさんが口を手で押さえているのを見るに、かなり酷いようだ……聞かない方が良さそうだな、これも。


「え、えーっと、その、トレンツァさんと別の思惑というのは?」

「そちらはセイクラムの国や国王の思惑だな。トレンツァの進化論とやらはある程度信じていたのかもしれんが、それが上手く行こうが行くまいが、強制隷従具の方を利用しようとしていたらしい」


 進化論が上手くいくにしろなんにしろ、時間がかかるのは間違いない。

 そこで強制隷従具に目を付けた国王やセイクラム聖王国のお偉いさん達は、まずはそれを利用しようと考えた。

 上手くいけば、レオというシルバーフェンリルにも使えるんじゃないか、という目論見もあったとか。

 それで、トレンツァさんとは別に試験し始めた……とはいえ、一応試験の結果や改良などはトレンツァさんにも共有し、協力してはいたみたいだけど。


 だから、使えると考えたトレンツァさんは、この村に持ってきて使ったわけだけど。

 ともかく、それで試験をしたのはラクトスの近く。

 他国であるこちらの中でも、一応の拠点がある場所に近いしトレンツァさんとも連絡を取るのにも、ちょうど良かったとか。

 ただ、フェンリルの森ではその森自体が広すぎるうえ、どこにフェンリルがいるかもわからないため、カナンビスの薬を試すときは避けていたのを、強制隷従具の試験の時にはフェンリルの森を使った。


 それは、使い捨てにするつもりだったお金で雇ったごろつきに、強制隷従具を使わせて魔物を従わせるためだったと。

 ラクトスは人の往来が多いため、そういった人を集めるのにもちょうど良かったんだろう、スラムとかもあるしな。


「って、ラクトス近くで、それもフェンリルの森でって……もしかして?」

「うん、そうだね。僕が、というよりルグレッタが率先して潰した集団だね。あれが、強制隷従具を使わせて、ウルフを無理矢理従魔化するための試験だったみたい。まぁ、トレンツァが使った物と違って改良する前らしくて複数には使えないうえに、強制的におとなしくさせる程度だったらしいけど」


 強制的にでもおとなしくさせて、そのうえで従魔契約を迫ったんだろう。

 生死を問われたら、ウルフだっていやいやながらでも従魔になる事を選択する可能性も高いだろうし。

 実際、それでヴォルグラウや、ユートさん達が潰した集団もウルフを従魔にしていたわけで。

 まぁヴォルグラウに関しては、従魔にして酷い扱いをしていたデウルゴは、偶然関わっただけっぽいが。


 まさか、そこが繫がっているなんて思わなかった……。

 そこからさらに、物資の輸送などはセイクラム聖王国が取り込んでいる男爵領、というより男爵を通して運ばれたり、ラクトスなどを使ったりしていたと聞いた。

 カナンビスは数が不足しがちなため、情報収集などの目的で潜ませていたのを使い、群生地を見つけて採取していたらしい。


 その群生地を見つけたのは香料の行商をしているクズィーリさんで、場所はアルヒオルン侯爵領、さらにセイクラム聖王国のために情報収集をしていたのがカッフェールの街にあったお店であり、その店主のハンボルトという人物で、偶然とはいえ群生地の情報が入ったのだと。

 カナンビスを採取し扱うにあたって、そのままにしておくとつながりなどがあぶり出される可能性があるため、ハンボルトは店をたたんで姿を消したという事みたいだ。


「用意周到に、この国への嫌がらせを画策していたわけで、今回はそれらを全力で投入するって力の入れようだったわけだね。おかげで、大体の奴らの関係や流れは把握できたよ」


 なんてユートさんが言っているけど、俺が寝ていた七日の間に色々と判明しすぎじゃない?

 トレンツァさんや捕まえた暗部の人達から、それだけ情報を引き出せたんだろうけど。

 ほんと、尋問――拷問? は何をしたのか。

 気になるけど聞いてはいけない危機感が、頭の深くから警告音を鳴らしている気がするので、できるだけ考えないようにした。


「……色々と、というかこれまで怪しんでいた事やそれ以外の事も繋がっているのはわかった。そういえば、男爵を通じてってあったけど」

「あちらは、黒も黒、真っ黒だな。トレンツァ達の証言から、さらに調査をしているが探れば探る程出てくるような状態だ」

「さすがに隠そうとしていたり、隠していた痕跡はあるけどね。でも、怪しんでこうだと考えて調べると、これまで見えなかったものが見えるんだよ」


 俺が寝ている間にそんな事まで。


「じゃあ、男爵は?」

「まぁ、爵位剥奪は当然。その後の男爵自身や男爵家に連なる者達は、要検討かな。表向きは敵国ではないけど、他国と通じて利用されていたわけだからね。重い罪になるのは間違いないよ」


 それはつまり、処刑とかまでも考えられているという事かもしれない。

 他国と通じている、スパイ行為みたいなのもあっただろうし、明確な国への反逆ともとれるわけで、厳罰となればそうなってもおかしくないか。


「利用するつもりが、利用されていたという典型的な例だな。男爵自身は隣国の力や資金などを借りて――もしくは手に入れたつもりで、地位を上げようとしたのだろうが、利用する先を完全に間違えている」

「貴族であるなら、当然帰属するのは所属する国家。それを他国と通じるのはかばいきれません。かばうつもりもありませんが」


 エッケンハルトさんの言葉を継いで、きっぱりと言うクレア。

 公爵家としては他国と通じるなんてのは、言語道断なんだろう。

 いや、貴族とか関係なしに当然の事か。


「ま、そんなわけでね。男爵はもう無力。既に王家に連なる者がお迎えに行っているよ。男爵領の方は……どうしようか?」

「いえ、私に聞かれましても。さすがにそれに関して決定権などはありませんし、意見するのも違うでしょう」

「そうかぁ、そうだよねぇ。タクミ君はどうしたい? あ、タクミ君の領地にするっていうのはどうかな?」

「いやいや待って待って! それこそ違うって! 領地が欲しいとは思わないし、今ですらいっぱいいっぱいなのに!」


 クレアと共同とはいえ商会長となっているだけでも、不相応だと思っているのに。

 領地なんて持っても、絶対大変になるのは間違いないうえ、俺にできるとは思わない。

 貴族になりたいとか領地持ちになりたい、なんて権力欲もないしな。

 そういうのは、できる人に任せるに限る。


「むぅ、そうかぁ。タクミ君がそうなってくれれば、セイクラムは戦々恐々で動けなくなるはずなのになぁ。タクミ君に手を出させないとかとは別にね」


 それはつまり、俺というよりもレオが近くにいる事と同義だからだろう。

 王と仰ぐシルバーフェンリル、しかも今回手を出そうとして失敗している。

 そんな相手がお隣に来たらたまったもんじゃない、というのはわかる。


 わかるけど……国を牽制するために俺やレオを使わないで欲しい。

 冗談交じりっぽいから、本気でそうしようとしているわけじゃないと思うけど。


「九割くらい本気の冗談はさておき……」

「ほとんど本気だった!?」

「はっはっは、タクミ君はいい反応をするなぁ。っとまぁ、それはさておきだね。男爵領はこれからちょっと大変だろうけど、追々決めていく事になると思うよ。それを決めるのは王家であって僕じゃないんだけどね」

「だったら、俺に領地をなんて言わないで欲しかったんだけどなぁ」

「まぁまぁ。とりあえず順当に考えるなら、辺境伯の領地に組み込むってところかな? 辺境伯も今回の事を聞いて怒り心頭らしいし」

「あの方は、国への忠誠心に溢れておりますからな」

「だねぇ。事態を知って、王家に先んじて男爵の身柄を拘束しに行ったらしいし。しかも辺境伯本人が直接ね」

「そ、そこまで……」


 国への忠誠が強いなら、裏切りや反逆になるような行為が確認された相手には、怒るのも当然だろうなぁ。


「んで、さっきも言ったけど男爵家は取り潰す。セイクラムはトレンツァ達を鎖にして、今後一切レオちゃんやタクミ君に手出しさせない。これは絶対だと約束するよ。それこそ、全力を使っても、向こうの国と全面戦争になるとしてもね」

「そ、そんな話にまで発展を?」

「いやまぁ、それは最後の手段というか、極端な話としてだけどね。セイクラムの現国王は愚王だけど血の気が多いわけじゃない。おおむね平穏に国を治めつつ、嫌がらせをしてくる程度だし。それから……他の国も牽制しておくから、安心して」


 他の国もって、セイクラム聖王国以外の国々って事だろうけど、それはそれでなんとなく安心できないどころか、ちょっと怖いが……。


「あとそうだ。タクミ君は既に大きな勢力を味方につけているからね」

「え? 大きな勢力って……?」


 そんな勢力を味方につけた覚えはないんだけど。

 公爵家とか、ユートさんやテオ君も含めての王家や国が味方に付いてくれるという事なので、それは確かに大きな勢力と言えなくもない。

 いや、大きすぎるけど。


「『国境を持たない美の探究者』、これを言えばわかるでしょ?」

「そういえば、ヴェラリエーレさんがそこに所属しているんでしたか」

「あ……」


 クレアが思い出すように言って、俺も思い出した。

 ヴェラリエーレさんと初めて会った時の反応を考えれば、椿油に関連した事で味方になってくれるのは間違いなさそうだ。


「でもそれって、政治とかには関わらないって決まりがあるんじゃ……?」

「もちろん、直接には関わらない。けど、それぞれの構成員が自分の意志で動くのまでは止められない。そこで得た情報を流すとかそういう事はダメみたいだけどね。今回の事は当然他国含めて広く知られる事になるだろうから、セイクラムは恥をかいたうえに、これから先大変な事になるだろうなぁ――」


 なんて楽しげに言うユートさん。

『国境を持たない美の探究者』は、その名が示す通り美を探求する者達、主に女性の集まり。

 そしてその女性達が、今夢中になっているらしい椿油、その原料の生産源である俺に手を出したセイクラム聖王国を黙って見ているなんてしないと。

 とはいえ政治に介入はできないから、やる事と言えば化粧品関連、つまり女性が使う品物関連がセイクラムでは不足したり、一部の人にしか買えなかったり等々が起こるかもしれないとの事だ。


 結果的に、国民女性の不満が大きくなって――とか。

 女性を敵に回したような物だと考えると、その影響を考えて恐怖を感じて身震いしてしまった。

 ……椿、できるだけ多く作れるようにしよう。

 幸い、喜んでもらえるだけの商品になるんだから、作って悪い物じゃないしな、うん。


「ともかくさ、これからはタクミ君はセイクラムとか他の国もそうだけど、そういうのは考えなくて大丈夫。あとは周りがなんとかするんだから」

「そこまで大きな事は、多分俺の身の丈に合っていないから考えないと思うけど……まぁ安心はしておくよ」


 この国すら通り越えて他国の事とか、あまり考えられるような頭は持っていない。

 政治とかよくわからない事が多いしな。


「うん、それでいいんだよ。ね、レオちゃん?」

「ワフ! ワッフ!」

「ははは、わかったよレオ」

「リーザもー」


 ユートさんに呼びかけられたレオが俺に身を寄せ、撫でるように言うので、苦笑しながら撫でておく。

 リーザもねだるように言ってくるので同じくそちらも撫でる。

 なんとなく、以前より真っ直ぐねだられるような気がするが、俺が寝ている間中ずっと心配してくれていた影響なのかもしれない。

 ともあれこうして、レオやリーザを撫でているとやっぱり心が安らぐなぁ。


 それを狙っての事かもしれないけど、何はともあれ気にせずにこれまで通りでいいと言いたかったんだと思っておく。

 ユートさんがレオの事を気にしすぎだと思うけど、森の中で何かあったのかな? なんて考えながら、報告会というか俺への事後説明を終えた――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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