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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2015/2019

騒動に繋がるまでの話を聞きました



「さて、トレンツァ達の処遇に関してはともかくとしてだ。セイクラム聖王国やトレンツァが何を狙っていたかだ。今後タクミ殿に害をなす事はないとはいえ、タクミ殿には事情を知る権利がある。すまないが、話せない部分もあるのだが……」

「俺にはよくわからないところで、話せない事もあるんでしょうけど、知れる部分はできるだけ知っておきたいですね」


 肝心のトレンツァさん達の狙い。

 フェンリルを無理矢理従わせて、突然変異だとかを研究してシルバーフェンリルに、というのは騒動の中でわかっているけど。

 それ以外にも、エッケンハルトさんがこう言うって事は何かあるんだろうな。


「セイクラム聖王国が、原初の世界主義を掲げているのはタクミ殿にも教えたな?」

「はい。ギフトとか、俺みたいに別の世界から来た人ではなく、最初からこの世界に存在しているものだけでっていう……」


 ちょっと宗教じみている、というのは俺の勝手なイメージだが、ギフトや異世界人に頼らない国や世界を、とかそんな感じだったはず。

 そう言っておきながら、ギフトで作られた物や異世界からの知識なんかも使っているため、他国から見たら主義も何もないだろう、と突っ込みどころ満載らしいが。


「シルバーフェンリルは、この世界の始まりから存在している……とされている。まぁ、実際にそれを確かめる術がないためそうだろう、というだけなのだがな。ともあれ、有史以来幾度もシルバーフェンリルの存在は確認されているため、人が存在するよりも昔からいるのは間違いないのだろう」


 世界の始まりを歴史として人が残せているわけはないので、そうだろうというだけみたいだが、まぁそこは疑いようがないんだろう。


「そしてその力は、レオ様を見ての通りであり、人では決してたどり着けない力の極みであり、頂点に立つ存在とも言えるわけだ」

「ワッフ」

「レオが頂点、かぁ」

「ワウ?」

「いや、そんな事関係なく、一緒にいてくれて助かってるよ」

「ワフワフ」


 エッケンハルトさんの言葉に誇らしげにしているレオを見るけど、俺にとってはやっぱりレオはレオで、マルチーズだった頃からほとんど見方は変わらず、相棒だ。

 頂点とかそんなのは関係なく、頼もしい存在として心の中で感謝しつつ撫でておく。


「そんなシルバーフェンリルを世界の王として戴くのは、まぁいいだろう。私もレオ様を間近にして否定しようがないからな」

「セイクラム聖王国は、それを公言しているわけですよね?」

「まぁ、言いふらすとかではないが、そうだな。でだ、そのシルバーフェンリルが我が公爵家に現れたという話を聞いた。セイクラム聖王国が考えたのは、原初の世界のため迎え入れるという事だ」

「レオちゃんがいれば、セイクラムが掲げている理想を、他国からどう思われていようと実現できるだろうからね。それこそ無理矢理」


 レオをそんな事に利用しようとするなんて、と怒る気持ちはあるけど、実際に聞く話通りならできるんだろうとも思う。

 まぁそれくらいは、セイクラム聖王国の話を聞いた時に考えるだろうと聞いていたけど。


「でだ、実際にこちらの国に食い込み、いや、元々悪巧みのために男爵家などを取り込んでいたのだが――ともかくそれらを使って調べたわけだ。そこで、本当にレオ様というシルバーフェンリルが存在する事を知った」


 巨体だし、レオには窮屈な思いをさせたくないから、エッケンハルトさん達公爵家の人達も同様に思ってくれているのもあって、特に隠していなかったからな。

 多少調べれば、それこそラクトスの街に来ればレオの事を知るくらいはできるだろう。


「そしてセイクラム聖王国の国王は」

「自称聖王ね。今回の事をかんがえると、愚王って僕は言いたいけど」

「ま、まぁ呼び方はともかく、その国王はレオ様を利用する方法や手段を模索していたのだそうだ」


 横からユートさんが茶々を入れるのをなんとかスルーし、そう言うエッケンハルトさん。

 レオを利用か……。


「タクミさん」

「あ、うん。ごめん。大丈夫」

「ワフ、ワッフワフ」


 思わず手に力が入っていたようで、クレアがそっと手を取ってくれる。

 隣でレオが利用なんかされないと鳴いて、気持ちを緩められた。

 いかんいかん、前にもこういった話は聞いていたのだから、今更気を張る必要はないよな。

 チラリと、俺とクレアを見たエッケンハルトさんが続ける。


「でだ、レオ様の存在を知るうえでタクミ殿の事も知った聖王国だが、そのタクミ殿は我々が保護している。実際には、とどまって協力してもらっているのだが、向こうにはそう見えたのだろう」

「僕が動いている事も、ある程度知っていたみたいなんだよね。まぁ、僕自身ある程度分かりやすく動いている部分もあるから、それも当然なんだけど。そうしないと、大手を振って旅を楽しめないし」


 最後にボソッと呟いたユートさん。

 それまでは自分の身を晒して囮に、みたいな言い方だったけど、むしろその最後の部分が本音な気がする。


「ユート閣下が共にいるなら、聖王国は手が出せない。そこで思いついたのが、トレンツァが提唱していた進化論。研究とも言えるか」

「濃い魔力がある場所に突然変異が出て来て、そこからさらに進化した種が生まれる、とかでしたっけ」

「そのようなものだな」

「改めて言っておくけど、突然変異と言っていたようにその環境に適した存在が出て来るのは確かにそうだよ。でも、本当に進化、それこそ種族が変わる程のものってのは、何代も世代を重ねて起こる事。いきなり体の形が変わわけじゃない。少しずつ、前の世代とは違う? みたいなのが生まれて行くと考えればいいかな。それと、フェンリルとシルバーフェンリルは種族的に直接繋がりがなくて、ゆっくりとでも別種族に進化するとしても、シルバーフェンリルとは全くの別物になるはずだよ」

「ユートさんだから、それがわかっているんだろうけど、トレンツァさんからしたら全否定に近いなぁ」

 

 トレンツァさんの提唱した進化論、あれが正しくて間違いを疑っていないようだったから。

 なんて思って呟くと、ユートさんがトレンツァさんを捕まえる時にはっきりと否定したらしい。

 結構えげつない事をするなぁ……その理論の研究と証明のために、騒動を起こしてフェンリル達を巻き込んだんだから、同情の余地はないけど。

 下手をしたら、取り返しのつかない被害が出てもおかしくなかったし。


「ともあれ、だ。トレンツァの進化論を鵜吞みにしたにしても、フェンリルは聖王国とて迂闊に手は出せない魔物だ。今回の事で実感できたと思うが、フェンリルは一体でも全力で相手になる場合は軍を動かさねばならん。そうしたとしても、軍などの大きな動きを見せるわけにもいかなかったのだろう」


 カナンビスの強化薬で暴れていたフェンリル……ではなく、そのフェンリル達を抑えるために活躍したフェンリル達の方だな。

 無軌道に、それも全力とは言えない力で暴れているフェンリルだけでも、簡単に手を出せないくらいなのに、そんなフェンリルを簡単に氷漬けにしてしまう程の魔法すら使うとなれば、犠牲を覚悟で軍が動くくらいにはなるんだろう。

 後から聞いた話だが、暴れていたフェンリル達には思考能力も残っていて、苦しみから暴れてしまったけど、申し訳なく思っていたり、自由が利かないながら自分で止まろうとしたりもしていたらしい。

 だからこそ、兵士さん達を含めて、俺達になんとか対処できたんだと思う。


「ユート閣下は否定したが、進化論を信じている聖王国としては、フェンリルを進化させ、シルバーフェンリルにしなければいけないと考えた。だとしたらどうするのか、といったところで、別の魔物に対して研究のため使用していたカナンビスの薬を改良し、使用する事を思いついたわけだ」

「そこでカナンビスに繋がるんですね」


 この国では所持すら禁止されているけど、セイクラム聖王国では禁止されていないんだったな。

 だから向こうでは、研究のために使っていても問題はなかったんだろう。


「うむ。当初は魔物弱体化などを目的としていたらしいが、その中で魔物の狂暴性を引き出す事も発見されたらしい」

「体内の魔力が乱されるんだから、今回のフェンリル達みたいに、苦しんで暴れたりするよね」

「そしてそれは、狂暴でありながら弱体化にも繋がるわけだ。当初の目的である、魔物の弱体化というのは達成される」

「成る程」

「そこからはまぁタクミ君も知っての通り、ここから北の森で薬の試験をしていたみたいなんだ」

「……なんで、わざわざこの近くの森で? 自分達の国でやれば、怪しまれる事もなかったんじゃ? それに、向こうではカナンビスが禁止されていないからやりやすさもあったはず」

「それは簡単。聖王国はこの国みたいに、多くの魔物が生息する場所を抱えていないんだ。というより、他の国でもそうかな」


 ユートさんによると、昔は魔境とまで呼ばれていたこの国のある場所だけど、だからこそ平定し、建国した後も魔物の数は多いらしい……他の国と比べれば、だけど。

 ある程度まとまった数の魔物が潜んでいる事はあれど、この国程の魔物の数がいない、または人の生活範囲を広げるために討伐されているとか。

 だから、魔物が多く試験にうってつけなうえ、求めるシルバーフェンリルやフェンリルがいるこの国でという事みたいだ。

 ちなみに、セイクラム聖王国にはここ数百年国内でフェンリルは確認されておらず、いないのだろうとか。


「初代公爵になったジョセフィーヌちゃん。それから仲が良かったシルバーフェンリルがセイクラム聖王国のやり方を嫌ってね。全てのフェンリルを駆逐したんだ。まぁ駆逐と言っても、ほとんどがこちらの国の森に生息域を移したって事なんだけど」


 と、後でコッソリ教えてくれた。

 ジョセフィーヌさん、そんな事やっていたんだ……。

 その頃はまだ頻繁に戦争とかもあったらしく、特にセイクラム聖王国は積極的にこちらに侵略しようと軍の派遣を繰り返していたのが一番の原因だとも聞いたけど。


「まぁでも、魔物が多く棲息するって事は、魔物資源も豊富にあるって事だからね。喉から手が出るほど欲しい人は多いんだよ。国もね」

「魔物資源……」


 ニグレオスオークなど、近くの森にいるからフェンリル達が狩ってきてよく食卓に上がるわけだが、そんな感じだろうか。

 食糧になるというのも、資源の一つだろうし。

 他にも色々とあるんだろう、これまで俺が注目していなかっただけで。

 もしかすると、だからこそこの国は狙われていて、昔は戦争がよく起こっていたとかかもしれない。


「そんなわけでね、自国にいないのなら他国にいるフェンリルを狙えばいいって、安直な考えで実行したわけだよ」

「閣下はこう言っているが、試すにしろ対象がいなければ不可能だからな。とはいえ、いきなりフェンリルそのものに対して試すのはリスクが高い」


 まぁフェンリルは、勘違いしそうになるが魔物の中でもかなり強いみたいだからな。

 しかも一般的には獰猛で知られている。

 そんな相手に、効き目があるかどうかまだわからない薬を試すのはリスクが高すぎる。

 軍を動かせないなら少人数で隠れるようにやるしかないし、それでフェンリルに相対しても薬が効果を出さなければ、全滅するだけだろう。


「他には……そうだな。トレンツァが提唱していた進化論だったか。あれの研究もかねていずれレオ様に近付く算段だったようだ。だが、その企みは向こうにとって絶好の機会と共に近付いてきた」

「近付いてきた?」

「我々……というより、タクミ殿とレオ様なのだが。タクミ殿がこの村に屋敷を構えて定住した。試験を繰り返している森の近くで、だな」

「そういう事ですか」


 最初から、フェンリル達が多くいるのをわかっていて、俺達を狙うように森に潜んでいたとかではなく、潜んで試験をしていた場所に俺達が近づいただけだったのか。


「おそらく、以前まではレオ様のいた公爵家の別邸に近い、という理由であの森を選んだのだろう――」


 エッケンハルトさんの話をまとめると、森の中で薬の試験をしていた研究班と、その護衛や補助をしていた暗部。

 ランジ村よりかなり東の方で、以前発見した拠点を足掛かりに色々やっていたみたいだが、魔物を探すうちに広範囲に森を使う事になった。

 そのため、森全体からすると浅い場所のニグレオスオークなどがいた場所で、レオ達が異変を感じる事になったのだろうという事。

 さらに言うなら、森を突き抜けた先で見つけた野営の跡も、もちろん研究班がそこにいて薬の実験やら何やらをしていたらしい。


 ただ、異変を知った俺達がフェンリルだけでなく、兵士さん達を集めて調査を始めたから焦ったトレンツァさんが、暗部をけしかけてこちらに探りを入れようとした。

 でもそれはフェンリル達に見つかって捕まるという失態が続いて、失敗。

 近くに多くのフェンリルがいるうえ、シルバーフェンリルまでいるという環境があるのに、と業を煮やしたトレンツァさんが直接乗り込んできたという流れだったらしい。

 ついでだから、フェンリル達がいる事で魔力が濃くなった環境に、突然変異が起こっていないかという調査もしようとしていたとか。


「予想通りというか、トレンツァの周囲にいた者達は全て暗部所属の者達だったが、その者達が村に出ていたのは、それを調べるためだったようだ」


 イザベルさんの店で魔力を調べるために使っていた水晶、あれの小型版のような物を持って村を調べていたとか。

 その手のひらサイズの水晶は、イザベルさんの店で俺が使った物とは違い、トレンツァさんが開発した、突然変異とかを調べられる物らしい。


「まぁそれで、最初はタクミ君達の様子を見る程度で済まそうと思っていたらしいんだけど、兆候が見られたらしくてね。結局村に滞在して見せかけの契約を結んで近付こうとしたってわけ。僕らが仕掛けなくても、最初からあの騒動は仕掛けようとしていたみたいだね」

「そうだったんだ。じゃあ、何も警戒せずに仕掛けられるよりは、マシだったのかな」

「うむ。無警戒であれば、フェンリル達がもっと利用されていたかもしれないし、それこそ私やクレア、タクミ殿も直接狙われていたかもしれん」

「とはいえ、レオちゃんがいればそんな事、目的を完遂なんてできないだろうに、無駄な努力と目論見だったよね」


 そう言って両手を持ち上げて首を振るユートさん、やれやれと言った感じだ。


「そもそも、進化のための研究なんて一朝一夕で結果が出るわけないのに、焦って直接来るなんて、研究者としては失格だよね。使っていた物も理論もお粗末な物だったし」

「使っていた物……そういえば強制隷従具だっけ。あれは悪い意味で凄い物って思ったけど」


 強制的にとはいえ、フェンリルに言う事を聞かせられるようにできるんだからな。

 仲良くなれば、フェンリル達は大抵のお願いは聞いてくれるので、俺には必要ないけど……もちろん、聞いてくれるのは嫌がるような事以外だけどな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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