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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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2002/2008

物理的に仕掛けました



「……」


 自分達から何かを言う事は情報を出す事にも繋がりかねない、と警戒してか押し黙る連れの人達。

 ただその反応自体が、ユートさんの言葉が正しいと証明している事にもなっている。


「シルバーフェンリルさえ獲得できれば、セイクラム聖王国による周辺国への発言力は強まる。というより、全てを飲みこむ力にもできる。そして聖王国としての本願も叶える事とができるってわけだ。シルバーフェンリルがいれば、複数の国を相手取るなんて取るに足らないとも言えるからね」


 レオ……というかシルバーフェンリルはそこまで絶対的な存在として見られているのか。

 他は知らないが、レオはソーセージが大好物な可愛い相棒なんだがなぁ。

 まぁ人が絶対にかなわないなどは、色々とあって最近少しずつ理解してきているけど。


「だからこその、魔物の進化……あぁそうか、人の進化というのも間違いじゃないんだね。シルバーフェンリルと共に人も進化させ、ギフトの恩恵を自分達だけのものにする。大量に作り出し、独占する事でシルバーフェンリルの強さだけでなく、国としての盤石さも確保するわけだ。成る程、考えれば考える程、確実に覇を唱えるための条件を揃えようとしているね。――実現すれば、だけども」


 本当にトレンツァさんの研究が成功し、進化を促す事ができればそうなるわけか。

 ただ、以前ユートさんに聞いたけど、フェンリルとシルバーフェンリルは完全に別の存在であり、仮に進化があり得ても、フェンリルが進化してシルバーフェンリルになる事はあり得ないはず。

 おそらくそれを、セイクラム聖王国側は知らないのか……もしくは、知っていてもそうなる可能性を信じ込んでいるのか。


 魔力が進化に関わるというのは今回初めて聞いたし、ユートさんの話にもなかったから、もしかするとそちらの方向性から、絶対にあり得ないと否定できないと考えだしたのかもしれないな。

 セイクラム聖王国の考えはともかく、ユートさんの独演会は止まらない。


「ギフトを持つ人が増え、さらにそれを独占できれば確かに国は豊かになるよね。それこそ、シルバーフェンリルもいるんだし、他国だけでなく魔物も脅威ではなくなる。生活圏を広げられる、ってのはトレンツァちゃんの言葉だけど。それはそうだよね、多種多様なギフトとシルバーフェンリルが合わされば、文化レベルも上がるのは間違いないし、危険な場所もほぼなくなる。というか、シルバーフェンリルがいるだけで、危険と言える事なんてほとんどなくなるけど」


 なんだろう、ちょっとだけ俺に向かって言っている気がしてきた。

 俺はギフトを持っているし、レオというシルバーフェンリルとも一緒にいる。

 文化レベル……は薬草のおかげで、病や怪我が怖くなくなる程度ではあるけど、これまでと比べたら十分に上がると言えるだろうし。

 なんて考えつつも、油断せずいつでもどんな事が起こっても対処できるように備える。


 感覚強化薬草のおかげで捉えた気配によると、庭を囲む壁の向こう側では、フェンリル達と多くの人の気配が有事に備えている様子だし、屋敷の中でもそれは同様。

 話の流れや、何故取引契約からセイクラム聖王国の話になっているのか、考えが追い付いていない様子のバスティアさん達は、アルフレットさんがさらにこちらと距離を取るように誘導している。

 ユートさんが独演で気を引いているおかげで、こちらは安心して備える事ができるな。

 打ち合わせ通り――トレンツァさん達がどういう人物なのか、とあらゆる想定をして、その中でも危険があると考えられる場合の動きを、皆がしていた。


 ちなみに、ユートさんがトレンツァさんの話に突っ込んだのは少し驚いたけど、こうして情報を引き出しつつ整理し、注目を引くのは決めていた事だ。

 そして、ユートさんが出た以上、その先にどうなるのかも。

 ……そう仕向けている部分はあるけど、エッケンハルトさんとユートさんがコソコソと予想していた方向に進むという事でもある。


「そんな、まさか……それじゃあ私は、騙されて利用されるところだった事に……?」

「んー、これまでの話だと、そうなるのかもね。人の進化を目指すトレンツァちゃんと、人だけでなく、シルバーフェンリルという絶対的な力を手に入れたいセイクラム聖王国。トレンツァちゃんの研究の過程で得た事を、利用する腹積もりとも考えられるよね。本当に、騙されているんなら……だけど」


 信じられない、と言った表情で連れの人達を見るトレンツァさん。

 分が悪い、と思ったら被害者のように振る舞うつもりなのかもしれないが、ユートさんだけでなく俺達にもそれは通用しない。

 だって、計画を知っていなければ「王を迎える」という言葉に反応しないはずだからな。


「トレンツァちゃんは当然知っていたはずだよ。本心での目的、研究の求める先は人の進化なのかもしれないけどね。どちらを強く求めているかは別でも、結果や先の事は共有してたよね? だからこそ、この場にもトレンツァちゃん自身が来ているわけだし。そうじゃなければ、国で無駄な研究を続けていたはずだよ。セイクラム聖王国が、騙している相手を中核に据えてここまで来させるわけがない。弾除けというか、盾にするための可能性はあるけど、ここまでの話を聞く限りそうは思えない。僕はね、セイクラム聖王国とは色々とあって、やり口は知っているんだ」

「ちっ!」


 忌々し気に舌打ちをするトレンツァさんは、ユートさんに睨まれてすぐに顔を伏せた。

 被害者ぶって、この場から逃げ出す事はできないと感じだのだろう。


「でもねぇ、ここに来てもトレンツァちゃんの研究は無駄なんだよ。どれだけやっても、何を試しても無駄。その研究自体意味がなくて、間違いなんだ」

「何をっ! 私の研究が間違いなんて、そんな事があるわけないわ!」


 さすがに聞き捨てならかったのか、トレンツァさんはすぐに顔を上げて言い返す。

 相手を怒らせる方向での挑発に入ったという事は、そろそろか……。


「進化なんてするわけないじゃないか。どんなに魔力が影響を与えても。ギフトが得られる人の条件っていうのは、もうわかっている事だし、人が進化をしたからって発現はしないんだよ。それに、フェンリルがシルバーフェンリルになる事も、あり得ない」


 この否定は挑発のためであり、本気で否定しているわけじゃない。

 ギフトの条件やフェンリルがシルバーフェンリルにというのはまだしも、進化自体を否定しているわけじゃないから。


「だから無駄で間違いなんだ。そんなわけだから、徒労なのは少しだけ……ほんの少しだけ同情するけど、セイクラム聖王国や自称聖王。くだらない計画を立てて、我が国の男爵も巻き込んだ愚王に対する手段として、君達は利用させて――」

「貴様! 我が聖王様を愚弄するかっ!!」


 トレンツァさんから、連れの人達に標的を変えて挑発するユートさん。

 まんまと連れの人達がユートさんの言葉を遮って叫び、立ち上がろうとしたところで――。


「っとと、すみません」


 手に引っ掛けたようにして、ペンを机から落とす、わざとだが。

 言葉が遮られる直前、ユートさんからも合図があったので、まずは機先を制す……というよりは、動き出そうとする向こうに対し水を差す。

 それでもまだ止まらないようなら、エッケンハルトさん達が動く手はずだったけど、よしよし、ちゃんとこちらを見て中腰ではあるが、止まっているみたいだな。


「ちょっと失礼」


 断りを入れて、落ちたペンを取ろうと地面に手を伸ばしつつ、頭も机の下に入れる。

 向こうの表情などが見えなくなったけど、それはお互い様。

 動いていないのは机の下から足を見ればわかる。

 そして、その向こう側に並んでいる足を狙って……。


「……よし、行け!」


 地面に付いた手で、『雑草栽培』を発動。

 にょろにょろと生えて来た蔦が動くのを見て、小さく呟く。

 その蔦は、俺の意志を反映させて動き、机の向こう側にある足へと強く巻き付く!


「きゃっ!?」

「っ!?」

「な、何が!?」


 顔は見えないが、向こう側から戸惑った声が聞こえてくる。

 それとほぼ同時、こちら側に座っていた全員が武器を持って椅子から立ち上がる。

 ライラさんなどの非戦闘員と思われる人達の足は、すぐにこちらから遠のいて行った。

 素早く距離を取るための備えで、密かに椅子を引いて動きやすくしていた甲斐があったようだ。


「くっ! 切れない!」


 バタバタと、こちら側の人が動くのに対し向こう側では、蔦に脚を取られて倒れ込む人や、切ろうとしても切れずに戸惑う声などが聞こえてくる。

 その蔦は、慌てて切ろうとしても決して切れないくらい強いだけでなく、まともに剣を振るっても中々苦労するような物だ。

 以前、ユートさんから聞いて試した「マクレチス」という植物の性質を持っている魔物。

 俺の意志を魔力と共に流す事で、相手を拘束するために使えるわけだ。


「レオ、フェリー!」

「ワフッ!」

「ガァゥ!」


 蔦を掴んで伸ばし、立ち上がりながら屋敷と壁の外へ向かって叫ぶと、待ってました! と言わんばかりにレオとフェリー達が乱入。

 屋敷から飛び出して来たレオは俺の隣に一瞬で到着し、フェリーを筆頭に十体を越えるフェンリル達が壁を飛び越えてトレンツァさんを含むセイクラム聖王国の人達全員を抑え込む。


「ひっ!」

「な、何が……っ!」


 戸惑う声を出してはいるが、脚をマクレチスに巻き付かれて動かせず、なすがままにフェンリル達に踏まれて地面に伏していく。

 さらに、素早く動いたエッケンハルトさんやフィリップさん達が剣を突きつけ、壁の外からなだれ込んできた兵士さん……筆頭はルグリアさんとルグレッタさんだけど、その人達によって拘束される。

 エッケンハルトさんはもう少し後ろで、距離を取っていた方がいいんじゃないかな? 安全のために。

 ……っと、そろそろいいかな。


「ふぅ。上手くいって良かった」

「ワフゥ」


 練習はしたけど、本番で上手くいくかちょっと不安だった。

 それなりに魔力を持っていかれたけど、ちゃんと目標の人達を全員拘束できた事で安心し、マクレチスから手を放す。

 数秒後には、魔力が流れて来なくなったマクレチスが枯れ始め、パキパキと折れて地面に落ちる。

 フェンリル達に取り押さえられ、多くの兵士さん達に囲まれたうえ縄で拘束を始めたので、もう大丈夫だろう。


「タクミさん!」


 屋敷の方から俺を呼ぶ声に振り向くと、クレアがこちらにかけてきていた。


「大丈夫だとは思うけど、もう少し屋敷の中で待っていて欲しかったよ」

「だって、タクミさん達に危険がないか、心配でしたから」

「ありがとう。何とかうまくいったよ。それなりに、情報も引き出せたしね」


 挑発したり落ち着かせたり、話を長引かせまくったのは情報を引き出すためでもある。

 まず捕まえてから聞き出すのでも良かったんだけど、そうなると命すら捨てて口をつぐむ事も考えられたからな。

 暗部というのはそういう事もやる、とはユートさん談。


 セイクラム聖王国からだと、確信を持てたらそうするようにと前もって決めていたのが、上手くいったわけだ。

 実際には、もう少し別の情報も欲しかったけど……。


「クレア、私の事は心配してくれないのか?」

「あ……も、もちろんお父様の事も、心配でしたよ? けれど、それなら先頭を切って剣を突きつけるのはどうかと……」


 机の下にいた俺からは見えなかったが、屋敷の中から様子を窺っていたクレアにはよく見えたんだろうな。

 というかエッケンハルトさん、我先にと動いていたのか。

 本人は守られるだけでなく、戦えるのは間違いないけど、本来なら後ろで守られているはずの立場なのになぁ。

 今更か、ユートさんも参加していて、縄をかけられていく人達を煽っているようだし……多分同類だしな。


「タ、タクミさん……? その、これは一体? それに、そちらの……」

「ワフ?」

「バスティアさん。えーっと……」


 クレアやエッケンハルトさんと話していると、バスティアさんの一団がこちらに来た。

 離れていてもらうよう、アルフレットさんに誘導してもらっていたけど、さすがにこれ程の騒ぎになると黙っていられなかったようだ。

 まぁそりゃそうだよな、バスティアさん達は全員レオやフェンリル達を見ているし、気になるのは当然だ。

 トレンツァさんとの話が取引契約からズレて、雰囲気が悪くなってからこちらを気にしているようでもあったし。


「驚かせて、というか巻き込んでしまってすみません。とりあえず紹介しますね。こいつはレオ。俺の相棒です」


 気にしている視線の先、俺の隣でお座りしているレオを紹介する。


「ワフッ!」


 レオは、胸を張るようにして誇らしげに鳴いた。


「色々とあるんですけど、シルバーフェンリルです」

「シ、シ、シ……シルバーフェンリルですと!?」


 驚くだろうなぁと思って苦笑しつつ言うと、これ以上ないくらい目を見開いて叫ぶバスティアさん。

 バスティアさんの連れの人達も、似たような反応だ。

 声が大きかったのか、フェンリル達の数体や兵士さん達の一部がこちらを気にしたけど、なんでもありませんからねー。


「シ、シルバーフェンリルとは、誰にも従わない、従魔にもできない最強の魔物のはず。そ、そのシルバーフェンリルを、タクミさんは従魔にされているというのですか!?」

「従魔、とは少し違うんですけどね。ただ、このレオはむやみに人を襲ったりはしませんし、おとなしくて言う事も聞いてくれます。もちろん、無理な頼みは断られますけどね、ははは」

「ワッフ、ワフワフ!」


 レオからは、無理な事を言う方が悪いというように鳴かれるが……まぁ大体は嫌がったりなどの抵抗をする時は、お風呂関係くらいだけどな。

 抗議するようなレオを撫でて、宥めておく。


「な、仲がよろしいのですね。従魔にできないシルバーフェンリルとそこまで。以前、公爵家の成り立ちや言い伝えなどを聞いた事はありますが……」

「あ、俺は公爵家じゃないですよ? 昔の事は言い伝えだけでなく本当の事みたいですけど」


 わかってはいるだろうけど、変な勘違いをされないように一応言っておく。

 というか、公爵家の言い伝え、シルバーフェンリルとの関わりって公爵領以外の人も知っているんだな。

 まぁユートさんから聞いた話では国の紋章を賭けてだとか、やっている事はともかく、大きな事に関わってもいたようだから、広まっていて当然か。

 大きな商会を率いる商人として、情報収集の一環で聞いたのかもしれないけど。


「あと、紹介が遅れましたけど、こちらが本当の公爵家の人達です」

「うむ。タクミ殿の養父というのは違ってな。嘘を吐いていて済まない。私がエッケンハルト・リーベルト。公爵家の現当主だ。もっとも、私の事は既にわかっていたようだが」


 重々しく頷いて自己紹介するエッケンハルトさん。

 特に何かしているというわけではないのに、それだけで貴族感というか、威圧じゃないけどそれらしい雰囲気を出している。

 初めて会った時の事を思い出した……あの時は、まだ無精ひげを生やしていたエッケンハルトさんの人相もあって、かなり緊張したなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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