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ティルラちゃんと一緒に遊ぶ事になりました



 少しおどけた様に笑うクレアさんだけど、確かにセバスチャンさんの言う事が正しい。

 もし俺やレオがクレアさんの声に気付かなかったらどうなっていたか……。

 それにクレアさんは美人だから、街に行くとしても護衛とかはいた方が良いと思う。

 変な男が近寄ってくるかもしれないからな……この世界にナンパとかあるのかは知らないが。

 それにクレアさんにもしもの事があったら、悲しむのは一人じゃない。


「クレアさん、もしもの事があったらどうするんです? 何かあったらティルラちゃんやセバスチャンさんが悲しみますよ」

「タクミさんにも怒られました。……そうですね、ティルラを悲しませる事はしたくありませんね」

「セバスチャンさんは?」

「セバスチャンはいいのです。元々お父様付きの執事でしたのに、わざわざ私を監視するためにこの屋敷までついて来たのですから」

「お嬢様、私はもとより旦那様はお嬢様の事を心配して……」

「わかってるわ。……これからは心配をかけ過ぎないように気を付けるわ」

「心配を掛けないように、ではないんですね」

「そこは……まぁ……タクミさん、聞かなかった事にして下さい」

「ははは、わかりました」


 クレアさんはお転婆なのかもしれないな。

 まぁ、深窓の令嬢が妹のためとは言え一人で屋敷を飛び出して魔物が出る森に行ったりはしないか。

 元々クレアさんと接していて好ましい人物だと思っていたけど、さらに親近感が湧いた。

 奥ゆかしい令嬢というのも良いかもしれないが、俺は少しくらいお転婆な所があっても良いと思う。


「タクミ様、そこはもう少し強くお嬢様を叱って下さらないと」

「ははは、まぁ良いじゃないですか。これくらいの方が可愛くて良いと思いますよ。俺が世話になってる間はレオに護衛でもさせますから」

「……レオ様が護衛に付くのなら、どんな護衛よりも頼りになりますね」

「そうでしょう?」


 セバスチャンさんと笑って話してたけど、クレアさんがおとなしい。

 どうしたのかと思って見たら、顔を赤くして俯いてる。

 何でだろう?

 もしかして俺が可愛いって言ったからかな? でもクレアさんくらい美人ならよく言われてると思うけどなぁ。


「……タクミさん、私が可愛いって……」


 クレアさんが俯きながら小さな声で呟いたが、何を言ったかまでは聞き取れない。


「お嬢様、レオ様がいるからと言っても気を付けねばなりませんよ」

「……わかったわ」


 セバスチャンさんが話しかけると、顔を上げて答えた。

 その頃には赤くなっていた顔も元に戻っていて、いつものにこやかな表情だった。

 何だったんだろう?


「ワウ?ワウワウ!」

「あ、レオ様待ってー!」


 レオが顔をこちらに向け、俺が来た事に気付いて尻尾を振りながら走って来る。

 ティルラちゃんはそれを後ろから追いかける形だ。

 さっきまでと逆の構図だな。


「レオ、どうした? あのままティルラちゃんと遊んでて良いんだぞ?」

「ワフワフ……ワウ!」


 レオはしきりに俺の着替えたばかりの服を咥えて引っ張る。

 もしかして俺も遊びに参加しろという事だろうか……。


「ちょっと待てレオ。さすがに俺が一緒に走り回るのは……」

「タクミさんも一緒に遊びましょう!」

「ワウワウ!」


 ティルラちゃんが一緒に遊んでくれる人が増えると期待した笑顔で見ている。

 レオは相変わらず俺を引っ張って連れて行こうと服を離さないし……。

 ……仕方ない、しばらく一緒に遊ぶとするか。

 この年でっていう程じゃないかもしれないが、さすがに子供や犬と走り回って遊ぶのは体が辛い事があるんだぞ。


「ふふふ。タクミさん、すみませんがティルラの相手をお願いします」

「……クレアさん……はい、行って来ます」

「はい、行ってらっしゃいませ」

「タクミさん早くー!」

「ほほほ、私とお嬢様はこちらで見ておりますのでしっかりと遊んで来て下さいませ」

「ワフワフ!」


 半ば引きずられるようになりながら俺は屋敷から少し離れた裏庭の、先程までティルラちゃんとレオが走り回っていた場所に来た。

 朗らかに見送ったクレアさんとセバスチャンさんはこちらを笑顔で見守っている。

 明日は筋肉痛とかになりそうだなぁ……でもティルラちゃんやレオが喜ぶならそれで良いか。


「タクミさん、何をして遊びますか?」

「ワウ?」

「そうですね……俺が枝を投げるので、それをレオが地面に落ちる前にキャッチする、というのはどうでしょう?」

「ワウ!」

「私は何をしたらいいのですか?」

「ティルラちゃんは、レオの背中に乗っていて下さい。レオの走るスピードを感じるのは楽しそうですよ?」

「楽しそですー!」

「ワフ」


 俺が言った事を疑いようも無く完全に理解してるレオは、ティルラちゃんが乗りやすいように伏せの姿勢を取った。

 俺やクレアさんが乗った時より低い位置にしてるのは、ティルラちゃんが小さい子供だからか。

 レオも気を遣えるようになったんだな……。

 なんとなく感慨にふけるような事を考えながら、地面に落ちてる小枝を何本か拾った。

 裏庭だからって完全に整備されてるわけじゃないのか。

 それとも小枝程度は掃除対象じゃないのかな?


「ワフ!」

「タクミさん、良いですよー!」

「では。レオ、行くぞー」


 準備の終わったティルラちゃんの声で立ち上がったレオはすぐに走り出せる体勢を取る。

 俺は屋敷とは反対側、裏庭の奥へと力いっぱい枝を投げた。

 ……運動不足かもしれないな……考えてたよりも枝は遠くまで投げられず、俺から20メートルくらい先に放物線を描いて落ちようとしてる。


「レオ様頑張ってー!」

「ガウ!」


 ティルラちゃんの応援を受けて一声吠えたレオが風のような速さで飛び出した。

 あ、一応ティルラちゃんが振り落とされないように体を揺らさずに走ってるな……器用な事をしてるなレオ。

 そういえば犬って競走馬と比べた場合、短距離限定という条件なら犬の方が早いんだったっけ?

 馬が最高速になるための距離を走るよりも犬が最高速になる距離の方が短いからだとかなんとか……にわか知識だから間違ってるかもしれないが。

 そもそも今のレオは馬よりも大きいから、多分競走馬より速く走れるのだろう。

 実際にレオに乗った俺の体感としては、高速道路の車くらいのスピードが出てた。

 時速100キロくらいかな?

 ……地上を走る生物で世界最速と言われてるチーターとどっちが速いんだろうか……こっちの世界に同じような動物がいたら競争させてみたいな。

 何て事を考えながら、レオが走る姿を見ていた。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


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