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1992/1996

セバスチャンさんに調べている事を聞きました

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。


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 フェンリルは俺が考えている以上に強力な魔物の部類らしく、敵う魔物などと遭遇すれば国や領主貴族が多くの軍を動かしてどうにかなるか……といったくらいの話だとか。

 ランジ村にいるフェンリルは、野生を忘れているのかと思う程だが、模擬戦などを見ていると納得できる。

 その他の薬品の損失などに関しては、通常の損耗率で折半する事で試算した数字と比べると、完全補償でもお釣りが出る程みたいだ。


 だから今回は初めての事、そしてフェンリルと伝えずにまず契約を、とバスティアさん達に信頼してもらうために全額保証としたわけだな。

 公爵領内はクレアがまとめてくれるだろうけど、今後他にも取引契約を結ぶのなら、色々と考える余地はあるだろうが。


「ふむ……あ、ここの定期取引の期間ですが、もう少し間隔を空けられませんか? フェンリルのおかげで輸送日数が短縮できるとはいえ、ちょっと短すぎると思うんです。向こう側にも、販売するペースなどもあるでしょうし、それは作るこちらも同じですから」

「成る程、そうですね……つい、売れるならばと間隔を短くしすぎていました。検討しましょう」

「お願いします」


 契約は期間中、取引の数量と価格はほぼ変わらないのに対し、取引の間隔が短ければそれだけ多くの薬品を売買する事になる。

 途中交渉は可能としてあるけど。

 とはいえ売れるなら売れるだけいい、というのは利益としてはいいんだけど、こちらにも作るペースがあるからなぁ。

 見込みより多くの薬草が作れる状況になってくれているけど、それでもやっぱり限界はあるし……群生地を探して見つけて摘み取るよりは、かなり多くが作れるけども。


 薬品なんて、基本的に必要がなければ求めない物だし、向こうも仕入れれば全てがすぐ売れるわけでもないだろう。

 もちろんこれまで確認した契約内容も、この取引間隔も、決定ではなくバスティアさん達に確認してもらって、そこからさらに交渉をして細かく詰めていくものではあるが。


「ふぅ……とりあえず、ちょっとだけ直せば完成ですね。向こうとの交渉次第ですが」

「はい。っと、本日は以上となりますね」

「そうですか。それじゃあ、セバスチャンさんと……あとエッケンハルトさんはどこにいるかわかりますか? クレアは、俺のように執務室かな?」

「セバスチャンさんなら、今であればティルラお嬢様、エルケリッヒ様、それからアロシャイスといるかと」

「あぁ、ラクトスのスラムに関してですね」


 ティルラちゃんが乗り気な、ラクトスのスラム撲滅活動……と言っていいのかわからないが、治安向上も含めてのスラム対処。

 エルケリッヒさんが協力して、ティルラちゃん主導で色々やるらしく、スラム出身のアロシャイスさんを交えて色々学んでいる途中だ。


「お呼びいたしましょうか?」

「邪魔にならないようであれば、お願いします……あ、エッケンハルトさんやクレアとも話したいので、こちらも邪魔にならないようであれば、お願いします」

「畏まりました」


 取引契約に関して、というよりも交渉した商人二人に対しての相談があるので、セバスチャンさん達を呼んでもらう。

 話したら話したで、「タクミ殿の管轄なのだから、私の許可は必要ないのだぞ?」なんてエッケンハルトさんは言いそうだが、意見は聞いておきたいし独断で動くのはしたくないからな。


「ワフゥ?」

「パパ、お話終わったの?」


 俺が仕事をしている間、おとなしくしてくれていたレオとリーザは、アルフレットさんが退室したことで執務机に付いている俺の傍に来る。

少し前の、俺が狙われる可能性を考えてべったり引っ付く、と言う程ではなくなってきているけど、それでも基本的には一緒にいる事にしているようだ。

 リーザはデリアさんとのお勉強があるので、常にではないけど。

 俺としては、レオやリーザが一緒にいると情けない姿を見せないためにも、と仕事を頑張るためのやる気に繋がっているからいいんだけども、リーザが退屈していないかが少し心配だ。


「うーん、まだこれからかなぁ。退屈なら、外で遊んできていいんだぞ?」

「ううん、パパと一緒にいるー。ママもいるから、退屈じゃないよ」

「ワッフ」

「そうか。ありがとうなぁ」


 レオとリーザをそれぞれの手で撫でる。

 仕事の合間にこうしているだけで、癒されるなぁ。

 家族のために、というのは仕事を頑張る気力に繋がるよな、やっぱり。


「失礼いたします。タクミ様、およびとの事でしたが」

「セバスチャンさん。エッケンハルトさん達も一緒だったんですね」


 少しの間レオやリーザと過ごしていると、セバスチャンさん達がやってきた。

 後ろには呼びに行ってくれたアルフレットさんだけでなく、エッケンハルトさんやクレアも一緒だった。

 途中でアルフレットさんと合流したらしいキースさんは契約書関係で、ライラさんはすぐにお茶の準備を始めてくれているから、必要だと思ったんだろう。

 

「ありがとうございます。それで、皆を呼んだのは……まだ交渉が必要でしょうけど、商人さん達と契約が進むのを見越してです」


 ライラさんが用意してくれたお茶を受け取り、お礼を言って皆が落ち着いたのを見計らって話始める。


「まずは、セバスチャンさん。商人さん達の様子はどうでしょうか?」

「ほっほっほ、タクミ様は私が調べているのをおわかりだったようで」

「まぁ……指示を出しているのを何度か見ましたからね」

「あからさま過ぎましたかな?」


 公爵家の使用人さんや、護衛兵士さんに、商人さん達の様子をそれとなく窺うように、というような指示を出している姿を、屋敷内で見かけた。

 おそらく、エッケンハルトさんかエルケリッヒさんからの命があったのだと思われるが、裏で動くのを表に出さず見せないセバスチャンさんにしては、わかりやすすぎた。


 多分、こういう事も大事なんだと俺に見せるためにそうしたんだろうと思っている。

 ニックの時とか、俺の知らないうちに結構調べていたみたいだからなぁ。


「セバスチャンさんなら、その辺りは上手くやるんだろうと思っていますから」

「少々過大評価されている気がしますが……そうですね、二人の商人……共にランジ村に来られた方々も含めれば十人少々ですが、特にこれと言って何かあるような動きは見せていませんな」

「そうですか……」


 契約をする方向で進めているけど、まだクラウフェルトの名と商品を広める前のこのタイミングで、というのが気になった。

 怪しんでいると言えるわけだけど、何もないのならそれでいい。

 ちょうど、セバスチャンさんが調べているようだったし、この先の契約を進めるにあたって必要な事もあるわけで、そのために意見などを聞こうと呼び出したわけだしな。

 レオもそうだが、フェンリルとは現状で接触しないようにしているが、いずれ話す、または紹介しないといけないだろうから、そのためでもある。


「詳細をお話しても?」

「あ、はい。お願いします」


 ちょっと考え込んでいたのを、セバスチャンさんの声で引き戻される。


「まずバスティアさんの方ですが、村の者達とも和やかに過ごしている姿を見かけております。連れの方も含めて、レミリクタで売っている薬品の評判や、タクミ様の事などを聞く事もあるようです」

「取引契約を結ぶ相手の事を、村の者達からの評判で知ろうとしているのだろうな」

「そう考えられますね。とりあえず、村の人達とも仲良くやれているなら良かったです」


 秘密厳守、と言う程ではないけど村の人達にも、レオやフェンリルの事は話さないように伝えてある。

 接触しないようにしても、村の人達は全員レオやフェンリルの存在を知っているので、そうしないと無駄になるかもだしな。

 まぁ、もし話してしまったとしても罰則なんてないし、そんな事を俺ができる立場ではないが、ラモギを持ってきた時や、オークに襲われた際の対処等々で強く恩を感じてくれているらしく、皆守ってくれているようだ。


「あとは……そうですな。やたらとレミリクタで売っている薬品の一部を、その品質の高さや効果の高さを褒め称えるような発言が多いようです」

「一部、ですか? というか、褒め称えるって……品質は確かな物だとは思いますけど」


 『雑草栽培』でできた薬草は、高い品質で全て一定だ。

 摘み取らず増えていく中で、数段階進めばその限りではないようだけど、それでも品質は高いとか。

 それはいいんだけど、一部だけと言うのが気になった。

 調合してくれているミリナちゃんは頑張っているし、薬に関してもちゃんとした品質になっているはずなんだが。


「詳細を村の者から聞き取ったのですが、薬草と単一の薬草を元にした薬を称賛しているようですな」

「つまり、複数が混ざっていない物、と言う事でいいのね?」

「はい、クレアお嬢様」


 クレアの言葉に頷くセバスチャンさん。

 複数が混ざっていない物……薬には、複数の薬草や一部本来は薬草ですらない物を混ぜて作る物もある。

 さらに言えば、加水すら混ざり物という事にもなるが……。


「真意は直接聞かねばわからない部分もありますが、おそらくタクミ様が『雑草栽培』で作った物が関わっているのかと思われます」

「『雑草栽培』で? という事は、複数の物を混ぜたら品質が下がると?」

「私が見る限りでは、品質が損なわれているようには見えません。ですが、薬品に特別詳しい者が見ればまた違うのかもしれませんな。それか……調べる手段を持っているか、です」

「調べる手段? 品質を直接見て確かめる以外に、何かあるんですか? それこそ、実際に使ってみるとか……」


 品質を調べるなら、直接見て触れて確かめるくらいしか、俺にはわからない。

 まぁ匂いとかもあるかもしれないけど。


「鑑定箱、という魔法具があってな。高価な物なうえ、あまり出回っていない物でもある。希少だから高価というのもある」

「鑑定箱……」


 名前を聞く限り、何か物を鑑定、つまり詳しく調べるために使う魔法具のような物なのか。

 それがあれば、薬品の品質とかも良くわかるのかもしれない。


「それだけでなく、使用者が限られるのです」

「魔法具なのに、ですか?」

「はい。特殊な魔法、と言うわけではないのですが、繊細な魔法でして。それが使える者しか鑑定箱を正しく扱えません」

「そのような物だから、多く作られず出回らず、結果希少になったのだ」

「魔法と鑑定箱に関しては――」


 生き生きと目を輝かせるセバスチャン曰く、魔法自体は呪文を聞けば使用自体は簡単だし、魔力も少量でいいらしい。

 ただ、その魔法を使用した際の魔力の動きなどを繊細に操作せねばならないとか。

 天性か、熟練か、いずれかの努力を経て正しく操作し、鑑定箱に対象物を入れて使用する事で初めて、詳細な品質がわかるようになるみたいだ。


「まぁ、魔法自体は難しくないのと、鑑定箱さえあれば多少の鑑定ができはするようだがな。しかし、それは目で見て触れて確かめるよりも、情報が少ないらしい。私は使った事がないが……」

「それは確かに、ちゃんと魔法が使えないと必要とされませんね」


 そもそも、物を鑑定する必要があるのは結構限定的な状況だ。

 商品の検品作業のためになる、と考えても基本的にある程度知識のある人が直接確かめればいいだけだしな……ヒューマンエラーはあるだろうが。

 それだけのために、生まれ持った天性の才能でない限り、努力して身に着けようと考える人はほとんどいないだろう。


「タクミさんが作った薬草、それがどんな風に知る事ができるのか、興味がありますね!」

「ははは……まぁ、確かに」


 興味深々な様子のクレアだけど、それは俺も同じ。

 鑑定箱に魔法をかけてという事だけど、どのように品質などの情報がわかるのかっていうのは気になる。

 まさか、ゲームみたいに数値とか説明文とかが浮かんでくる……とかではないだろうけど。


「ふむ。正しく使えるとは言えなくとも、一度取り寄せて試してみるのもいいかもしれんな。私も興味がある。もしかすると、タクミ殿の『雑草栽培』で作った物には、特別何かがあるかもしれん。まぁ、正しく使えてもギフトとの関連は何も出てこない可能性の方が高いが」

「もし、『雑草栽培』……ギフトに関連する情報も知れるのであれば、今頃バスティアさん達は大騒ぎでしょうからな。タクミ様も知っての通り、現状のこの国にギフトを持つ者は公式にいないものとなっております」

「タクミさんを秘匿しているわけではありませんが、今はまだ公表していませんからね」


 クレアの言う通り、国の公式としても秘密にしてくれと頼んでいるわけではないけど、それでも広く知られてしまう可能性もあるため、時期を見定めているようだ。

 それはともかく、エッケンハルトさんの言う通り、そういう鑑定箱のような物があればギフトが関与しているなどの情報が出る可能性があったのか……。

 セバスチャンさんが掴んでいる、バスティアさんの動きによるとその気配はないようだから、おそらく鑑定箱でもそこまではわからないようになっているか、それとも鑑定箱を使える人が完全に使えると言える程ではないのか、のどちらかだろう。

 実際には俺とユートさん、それにティルラちゃんというギフトを持っている人物が現在この国に三人いるが、公式にいない事になっているなら、発見されたら騒ぎそうでもある。


 公爵領内では、レオがいる事もあってそちらの印象が強く、これまで話した人の中に騒ぐような人はいなかったが。

 驚くくらいはしていたかもしれないけども。


「少々話が逸れましたが、鑑定箱を使える者を抱えているとなれば、それなりに大きな商会で地盤も確かだと言えるでしょう。そこと取引の契約を結べるのなら、商売としては成功に近いとも言えます。鑑定をして確かな商品を探せるのですから」

「品質もそうですけど、良い物である事、さらに売れる物を判断できるからですね」

「判断に関しては、商会長のバスティアさんの手腕、もしくはその近くにいる者が優秀なのでしょう。バスティア商会と言えば、こちらにまでその名が届いている程です」

「そうだな。タロンメルという街はここから離れており、公爵領ではない。線引きが難しいが、北部貴族に属する貴族領にあると言える。その貴族領内でも、タロンメルに限らず街や村々に手を広げて商売をし、そして成功している商会だな」


 他領の事なのに、エッケンハルトさんも知っている程の商会か……それだけ大きな商会なんだろう。

 バスティアさんは謙遜していたが、大きさで言えばクラウフェルト商会なんて取るに足らないと考えてもおかしくない程の大きさなのかもしらない。

 それにしても、内面はまだしも失礼ながらパッと見悪徳商人のようにも見えるバスティアさんが、貴族領内で深く広く根付いているというのは、悪い方向で考えると似合っていると言えなくもない。

 実際に悪い事をしているかは別として……エッケンハルトさん達が特に嫌悪感を示しておらず、むしろ好意的に話しているようにも見えるので、悪い噂すらほぼないに等しいんだろう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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