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1937/1996

実食する時が来ました



「懐かしいとか、よく食べていたから受け入れやすいというのはあると思いますけど……俺、嬉しそうにしていました?」

「はい。重大な話が椿油の事ではないと聞いた時は肩透かしをされたようではありましたが、その後の卵を使った料理の話になってからは」

「そ、そうですか……」


 感情が顔に出やすいから、自覚がなくともそうだったんだろう。

 割と、ユートさんはまったく……みたいな感覚だったんだけど、やっぱり慣れ親しんだ、そのうえ美味しいとわかっている物が食べられる事が、無自覚に喜んで表情として出ていたのかもしれない。

 アルフレットさんだけでなく、ライラさんもそれはわかっていた様子だ。


「え、えーと、そうですね……生卵に限らずですけど、卵を使った物は色々あって……」


 無自覚に喜んでいた事を見抜かれた恥ずかしさを誤魔化すように、アルフレットさん達に卵の魅力について……というより、卵を使ったこちらではない物についての話をしていく。

 栄養価が高い、とかも一緒にな。

 こういう話はヘレーナさんにするのが最初かと思ったけど……。


「卵を使った料理というのは、多くあるのですね」

「そうですね。カレーやハンバーグみたいに、色々と応用が利きます。違うのは、カレーとは違って一つの味に統一するような物ではなく、多種多様な味に変化するところでしょうか」


 卵単体ならまだしも、様々な料理に使う事で色んな表情を見せてくれるのが卵、といったところだろうか。

 ……わかったように考えているけど、地球で先人達が卵を使った多くの料理を考えてくれていたからこそではあるけども。


「味の違いという事であれば、私はプリンと茶碗蒸しというのが気になりましたね」

「甘い食べ物と、色々な具材を入れた料理……興味深いですが、私はマヨネーズと言うのが気になりました。旦那様の仰る通りならば、それはどんな料理にも使える万能な調味料との事ですが」

「……万能というのはちょっと大袈裟ではありますけどね」


 プリンやマヨネーズの話をする時に、少し力が入り過ぎてしまったからか、二人はそちらに興味がそそられたらしい。

 女性だからというのは偏見かもしれないが、甘い物への興味と茶碗蒸しの違いに興味を持つライラさんと、マヨネーズという調味料としての用途を気にするアルフレットさん。

 少しだけかもしれないが、生卵に対する心配は薄れたような気がする。

 あと、俺はマヨネーズは好きだけどマヨラーというわけではないので、なんにでも使ったりはしない。


「プリンと茶碗蒸しはそうですね……食感は豆腐に近いかな? 全く別物で、味とかも違いますけど……あと、加熱もするので安全に食べられると思います。マヨネーズは……加熱しないので、こちらは色々確かめてからヘレーナさんと相談ですかね……」


 とりあえず、生卵への心配をするよりは展望を語って、楽しい話にしておいた方がいいだろうと、俺が知る限りの卵料理……ほとんどプリンや茶碗蒸し、マヨネーズといった二人の興味が向く話に終始したけども。

 興味のある話の方が、心配する気持ちも薄れて良さそうだし。

 実際にその効果はあったのか、話しながらでペースは遅めだったけど、生卵の事を聞いた後よりはアルフレットさんの手は動いているようだった。

 俺は話す方に意識が向いていて、遅めのペースになったけど……まぁ急ぎの仕事というわけでもないからな――。



「さて……と……」

「タ、タクミさん……本当に食べるのですか……?」

「うぅむ、無理はして欲しくないのだが……」


 あれから、執務室での仕事を終えた後に厨房でヘレーナさんに事情説明。

 ユートさんを呼んで生卵の事などを伝え、実際に処理済みの生卵を受け取り夕食と一緒に出してもらう。

 周囲では、ユートさん以外の人達のほとんどが固唾を飲むようにして俺を見ている。

 クレアやエッケンハルトさんは心配そうに声をかけてくれた。


 あとヘレーナさんは、新しい料理ができるという事に一瞬だけ目を輝かせたけど、そこはやはり料理人という立場から特に心配というか、生卵に対してはアルフレットさん達以上に拒否反応を示した。

 生のままで食べるなんてとんでもない! という強い勢いだったので、ユートさんと一緒に説得するのは苦労したなぁ。

 とりあえず、俺とユートさんが実食して見せるので、それからの判断という事で一応納得してもらったけど。

 ……いや、押し切ったと言う方が正解かな? 納得はしていなかったかもしれない。


「念のため薬は用意しているし、多分大丈夫ですよ。――まず醤油をかけて混ぜて……と」


 何はともあれ、別皿に殻を割った卵を入れて醤油と一緒にかき混ぜる。

 卵が大きめなのもあって、当然ながら白身の量が多く黄身も大きい……人によって、卵かけご飯の作り方はちょっと違ったりもするかもだけど、俺はこの作り方だ。

 別の器で醤油と混ぜた溶き卵をご飯にかけて混ぜるやり方だな。

 ご飯の上に直接卵を落としたり、白身と黄身を分けたりって人もいるらしいけど。


 他にもアレンジとして、ごま油を少量混ぜたり醤油の種類や量を変えたり等々、他にも様々な食べ方があるけどとりあえず一番スタンダードでわかりやすい食べ方にする。

 まぁ、これが一番食べ慣れているっていうのもある。

 そしてそれをゆっくりとホカホカの炊き立てご飯の上にかけていく……量の多い卵に合わせるようご飯の量も多めだ。

 どんぶり飯のような量になっているけど、まぁそこは仕方ないな。


「はぐ……ん!?」

「タ、タクミさん!? だ、大丈夫ですか!?」


 まず一口、とかきまぜた卵かけご飯を頬張る。

 目を見開いた俺に、クレアが大きく反応し心配そうな様子になるけど……。


「思っていたよりも、凄く美味しい! これは、卵がいいのかな? あ、ごめんクレア。大丈夫、なんともないから」

「はぁ……よ、良かったです」


 もし食中毒になったからと言っても口に入れた瞬間になるわけないんだけど。

 まぁそれだけ、心配してくれていたから大きな反応になってしまったんだろう、


「そ、それで味の方はどうなのだ?」


 エッケンハルトさんは、こちらを心配するように窺いつつも、チラチラと卵かけご飯の方へ視線が行っている。

 生卵を食べる事への忌避感とかはあるのかもしれないが、それよりも美味しい物への興味が勝りかけているのかもしれない――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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