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1934/1997

卵料理が食べられるようになるみたいでした



「とにかく、これで生卵が使えるから色々と食べられるよ! 卵かけご飯はマストとして、他にも……」


 卵を俺に見せておいて、あらゆる卵料理を夢想し始めるユートさん。

 口から出てくるのは、俺の知っている卵料理がほとんどだけど、食に関してはよく記憶しているんだなぁ。

 味覚と記憶は簡単に想起させる事ができるからかもしれないが。

 オムライス、オムレツ、スパニッシュオムレツ……はオムレツだから同じ物だけど、他にも天津飯や親子丼なんてのも口にしていた。


 だし巻き卵や茶碗蒸しなんてのも出てきた時は、ちょっと思い出して俺も食べたくなったが。

 さらには、スクランブルエッグとか俺も知っている物以外にも、メネメンとかエッグベネディクト、ブリックなど聞いた事があるようなないような、よくわからない料理名も出していた。

 多分、日本から見て海外の卵料理なんだろう。

 ちなみにこの世界、生卵が衛生的に危ないというのは当然知られているけど、保存して数日経つと一気にゆで卵にするのが基本になっている。


 生のまま保存し、さらに茹でる事で保存する期間を延ばすのが一般的だとか。

 あと、料理に使うにはまず生のまま保存していたのを使うにしても、まず茹でてからになるため、スクランブルエッグや卵焼きなど、生卵から炒めるような料理とかもないみたいだ。

 文化的にそうなっているようだから、研究者でもない俺は詳細を聞いてはいないけど、消毒して生のまま食べられない卵は茹でる以外の火の通し方だと、殺菌できないという事か。

 菌という存在などについては、ほんのり知っている風味程度で、研究とかはされていないみたいだが、地球とは卵に付いている菌などが違うという事で納得している。


 ロエやラモギなどの例もあるし、世界が違えば菌だって違うだろうからな……ちょっと話は違うかもだが、畑にいた害虫とかも見た事ないのばかりだったし。

 んで、それをユートさんが言うにはジュウヤクという植物から抽出した食品にも使える次亜塩素酸ナトリウムに似た消毒液を作る事で、生卵も消毒してそのままでも食べられるようにする、という話だな。

 その成果は、今目の前で楽しそうに……いや、不審者のように口元を緩めて涎を垂らしかけながら、いろんな卵料理名を思い出しつつ口に出しているユートさんが持っている卵にあるってわけだ。


「ちょ、ちょっとそこらへんで。料理名だけ出してもいきなり全部は作れないし食べられないから」

「おっと、そう言えばそうだね。全部一度に作っても食べられないや。それに、卵の数もまだまだ少ないからなぁ。もちろん、僕がいるしジュウヤクを作ってくれているタクミ君もいるここには、優先するようにしているけどね」

「それはありがたいけど、数はまだできないって事でいいのかな?」

「うん。ジュウヤクが少ないのもそうなんだけど、そういった施設というか設備がまだ整っていないからね。僕が絶対食べられるようになるって言って用意しようとしても、懐疑的な人が多いし。まぁまだこれからだね」

「そりゃまぁ、これまで食べられなかったし、生卵に抵抗ある人は多いだろうなぁ。うん、俺とユートさん以外もそうみたいだ」


 俺は生卵を日常で使う日本で育ったしユートさんもそうだから、消毒すれば食べられると特に忌避することなく話しているけど……。

 ふと見た執務室にいる皆の表情、アルフレットさんやルグレッタさんはかなり複雑な表情をしている。

 というか、どちらかというと本当に生で卵を食べるのか……という恐れにも似た表情だ。

 ライラさんは、いつもと変わらず無表情に近いけど、それでも近くでよく見てきたからわかるが、なんとなく嫌そうな雰囲気を醸し出している気がする……心が読めるわけじゃないので、気がするだけかもしれないが。


「だからまぁ、ゆっくり広まって行けばいいかなって僕は思ってるよ。食べた事がある人ってのもいるとは思うけど、基本的には生では食べられないと思われてもいるからね。刺身とかと一緒だよ」

「こっちに来てから、魚を食べた覚えはないけど……馴染みがないならそうなるかな」


 刺身も、こちらでは食べられていないんだろうな。

 あれは消毒とかというよりも、寄生虫が怖いから仕方ない。

 よく食べられている日本でだって、絶対寄生虫がいないとか、食中毒にならないわけでもないしな。


「うん。とりあえず、僕が食べられればそれでいいかな。卵自体は元々あるわけだし、食べ方の一つが増えるような物だからね」

「じゃあ、とりあえずジュウヤクの量産はあまり考えなくていいって事でいいのかな?」

「そうだね……後々は変わるかもしれないけど、もし大量に必要になるようであれば、その時はタクミ君と相談するつもりだから。タクミ君以外というか、量産する方法を模索したりとか、そういう事を考えたり試す余裕はあると思っていいよ」

「それはまぁ良かったかな」


 椿油の問題、というか『国境を持たない美の探究者』とかとの関係や、椿の量産をどうするかってのもあるのに、それに加えてジュウヤクまで多く作って欲しいと言われたら、どうすればいいかわからなかったからな。

 多分、断る事になるんだろうけど……今でも、薬草畑で栽培する薬草の予定は埋まっている状態だし、後々で余裕が出てからできるならそれに越した事はない。

 ……薬草作りの予定で、アルフレットさんには色々と考えてもらっての事でもあるし。


「というわけで、これからは卵に関しては心配しなくていいよ。米や醤油と同じく、定期的にここに持ってくるように手配しておくから」

「ありがたいけど、元々あまり卵に関しての心配はしていなかったんだけども」


 生ではないというだけで、以前から食べていた物だし、不足しているとかって事情があるわけでもない。

 フェンリル達が森に行くついでに、狩りでお肉を持って帰ってくれる以外の食材は、定期的に使用人さんが買い付けて運んで来るんだから。

 とはいえ、生卵が食べられるという事に喜んでいないわけではない。


 手抜きとか、料理と言えるかわからなかったりもするけど、やぱり卵かけご飯は庶民の味方だと思っているから。

 手軽で簡単、安上がりというのを考えなくても、卵かけご飯を追求する人だっているくらいだ……俺はそこまでじゃないけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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