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1931/1980

ヨハンナさんの子供の頃の話を聞きました



「はい。ルグリアさんやルグレッタさんも、それからヨハンナの両親もいて挨拶したのを覚えています。ですが……ヨハンナと何を話したのかまでは……」


 ヨハンナさんは、俺やクレアより年上だけど、そこまで離れていない。

 となれば、クレアはその時十歳にもなっていなかったし、覚えていなくても仕方ないのかな?

 むしろ、ヨハンナさん達と会って挨拶した事を覚えている方が、凄いくらいなのかもしれない。

 けど……ヨハンナさんにとっては多分大事な思い出だからなぁ、向こうははっきり覚えているようだし。


「ヨハンナさん、クレアはなんて言ったんですか? ヨハンナさんにとって大事な言葉だったのかもしれませんけど、クレアの事ですから聞いておきたくて……」


 ここは、クレアが聞くのも気まずそうなので俺が聞くしかないと思い、前を歩くヨハンナさんに聞いてみる。

 なんとなく、ヨハンナさんにとって大事な言葉だから、聞かないとこのまま流れそうでもあったから。


「タクミ様は、クレアお嬢様の些細な事でも知りたいのですね」


 そう言って笑うヨハンナさん。

 知りたいか知りたくないかで聞かれれば、間違いなく知りたいから、まぁいいか。


「あの時クレアお嬢様は、初対面の私にこう言ったのです。『貴女、見込みがあるようですね。私は初代当主様のように、いずれは困難を打ち破る勇猛さを持たなければなりません。ですから、私と一緒に来ませんか?』と」

「えーっと……」

「わ、私そんな事をいったかしら……?」


 今のクレアさんとはかなり違う言葉だったけど、それは確かにヨハンナさんの心に響いたらしい。

 初代当主様に興味があって、憧れみたいなのもあったんだろうけど……と、クレアの方を見ると両手で包むように顔を隠していた、恥ずかしいらしい。

 ……そう言えば、小さい頃のクレアはお転婆だったらしいからなぁ。

 しかもその頃は年齢的に考えるとおそらく、まだ母親が亡くなる前のようだし。


「もちろんその時の私は、公爵家の方が言う初代当主様がどんな方なのか知りませんでしたし、ただ両親とルグリア姉さんに連れられて行っただけで、どこかの貴族に仕える気はありませんでした。騎士になって国か貴族か、後々仕えるのだろうと漠然と考えていたくらいですね」

「その、クレアの言葉で決めたんですか?」

「深く刻まれているのは今言った言葉ですが、それだけではありません。クレアお嬢様は、私より余程見込みがあると思える、ルグリア姉さんやルグレッタ姉さんには、興味を持たなかったのです。もしかしたら、私と歳が近かった、というただそれだけの理由かもしれませんが……」

「な、成る程……」


 まぁ、女の子だから俺にはわからない部分もあるけど、勧誘するなら自分と年齢が近い方がいいと考えたってところだろうか。

 公爵令嬢のクレアは生まれた時から、同年代よりも大人に囲まれて育っているだろうし、同年代の友人も作りづらかったと察せられるしな。

 ちなみにそのクレアを見てみると、言葉の方はともかくルグリアさん達に興味を示さなかったという部分は覚えていたようで、うんうん頷いていた。

 ……ヨハンナさんに言った言葉は、とりあえず気にしない事にしたようだ。


「で、でも私もルグリアさん達に興味がなかったわけではないのよ? あの当時、早くから騎士団の入団を決めていたルグリアさんや、同じく将来は騎士団に入るだろうと言われていたルグレッタさんに、見込みがないなんてとても私では言えないわ」

「もちろんわかっております、クレアお嬢様。姉二人と歳が離れていたため、その二人に隠れる形で私に興味を持つ貴族の方はいませんでした。貴族の子息方も同じくです。クレアお嬢様だけだったのです、あの時私に自分から話しかけて下さったのは」

「そ、そうだったかしら……?」


 ある程度覚えていても、クレアはヨハンナさん程はっきりとは覚えていないんだろう。

 子供の頃の事だし仕方ないと思うとともに、意外と何の気なしに言った言葉が、相手は覚えているのに言った本人は忘れているなんて事もよくあるだろうしな。

 あと、おそらくクレアはヨハンナさんとの出会い後に母親を亡くしているから……お見合い話の時と同じように、完全ではないにしても忘れてしまっていてもおかしくないだろう。


「そして私は、そんなクレアお嬢様の言葉を胸に、即日公爵家に仕え、クレアお嬢様と共にある事にしたのです」

「即日ですか!? 思い切りがいいんですね……」


 数日考えるとか、お姉さん達や両親に相談とかで少し待ってもらうとかはしなかったんだろうか。

 クレアの方も、多分すぐに来てという意味ではなかったと思うけど。


「ふふ、それはよく覚えています。お父様も驚いていましたが、ヨハンナを見てすぐに頷いて下さいましたし。今思えば、あの時のヨハンナの決断があったからこそ、こうして話しているのでしょうし」

「はい、私もそう思います。いささか急ぎ過ぎたと思い返す事もありますが、後悔はありませんから。それに、公爵家は評判も良く旦那様の勇名も騎士団の方には轟いていますから、両親や姉達が反対する事もありませんでしたし。というより、私以上に乗り気になっていました。特に両親がですが」

「エッケンハルトさんの勇名……」

「特に何か凄い功績を上げたとかではないのですが……お父様、会う機会があれば王都や王族の方々を守る、騎士団の団長といつも模擬戦をしていました。むしろ、探して見つけて吹っ掛けるに近かったでしょうか? 私から見れば、ですけど」

「そ、そうなんだ」


 そういえば以前、俺が剣を習い始める前だったかに、エッケンハルトさんが騎士団の団長さんがどうとか言っていたっけ。

 親しい間柄とか、腕を競い合うライバルというか、そういう関係なんだろう。

 しかも、エッケンハルトさんの話しぶりを思い出すに、その騎士団長さんに模擬戦で勝っていたようでもあるし……見込みのある人を訓練して護衛にしたり、輩出したりもしているようだから、ヨハンナさんの両親も反対しなかったのか。

 貴族家に仕えるというのが出世というか、いい事と思われているようだし、騎士の一家なら喜ばしいと考えても不思議じゃないしな――。


「そんな事もあり、今では幼かったと自分では思いますし、姉二人との仲も悪くはありません。ただ比べてみると、まだまだ未熟な自分が立派な姉二人に追い付けているのか、少し複雑だったりもしますね。まぁ久しぶりに再会したルグレッタ姉さんの方は、また別の意味で追いつけそうにありませんし、追いつきたいとか比べる気にはなりませんが……」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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