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1930/1979

ヨハンナさん達姉妹の話を聞きました



「私とティルラも離れている方だけど、そこまでじゃないわよね?」

「そうですね……クレアお嬢様とティルラお嬢様では十程ですか。私とルグリア姉さんとでは、七程になります」

「そういえば、クレアとティルラちゃんも歳が離れていたね」


 クレアは俺と同い年……以前ちょっと聞いたけど、クレアの方が早く生まれていて、一年離れていないけどちょっとお姉さん、みたいな感じだ。

 まぁ日本でなら同学年だけど。

 それに対しティルラちゃんは十歳だから、割と離れている方か。


「子供の年が離れている、というのは一つや二つでも大きな違いになります。クレアお嬢様とティルラお嬢様程離れていたら、また別だとは思いますが……私は小さい頃、姉達と自分を比べてしまったんです」


 姉妹だから、お互いの様々な部分を比べるなんてのはよくある話。

 それこそ、悪気やそのつもりがなくても無意識で周囲の人が比べるような事を言う、なんてのもある。

 年が離れすぎていると、逆に比べてもそこまで気にならなくなる事もあるが、ヨハンナさんはそうではなかったらしい。


「ルグレッタ姉さんは、私よりもルグリア姉さんの方が年が近いので、どうしても小さい私が上二人に勝る事と言うのがありませんでした。それも当然なんですけどね」

「リーザと同じくらいなら、七歳くらいですか。それくらいで、十代前半の二人と比べたら……そりゃ勝てませんよね」


 小学校低学年が、高学年や中学生に挑むようなものだしなぁ 

 例外はあるかもしれないけど、基本的には年齢が高い方には勝てないだろう……それでなくても、一年で大きな違いになるのに。


「はい。今考えると当然の事なのですが。でもあの頃の私はそれが悩みだったんです。その、姉二人に劣る妹として。どうして自分はこんなにできないのかと。少し話は変わりますが、私の家は騎士を輩出する家でして。小さい頃から、その方向の教育をされます。もちろん、本人が望まなければ騎士になるのを強制される程ではありませんでしたが、それでも期待を受けるというのは近い事でもあったのです」

「期待されると、応えなきゃって思ってしまいますからね」

「私も、多少は覚えがあるわ」


 クレアの場合は、初代当主様にそっくりだからというのと、公爵家の娘が混ざったような期待だろうか。


「それから、姉二人にかなわないと悩み始めてしばらくした頃、ルグリア姉さんの騎士団入りが決まったのです。当たり前の事なんですが、私はまだまだ幼く未熟でした。そうして……」


 空を仰ぎ見ながら、少し懐かしそうに話してくれるヨハンナさん。

 その様子から、悩んでいたとは言ってもどちらかというと今では子供の頃の懐かしい思い出、のようになっているんだと見えた。

 ヨハンナさんからも、苦しそうな雰囲気とかは感じないというのが大きな理由だろう。

 昔の自分に対して、苦笑くらいはしているけど。


 ともかくそのヨハンナさん曰く、ルグリアさんの騎士団入りが決まってさらに焦ったヨハンナさん。

 年齢的には早かったのは間違いないけど、十五で成人と認められるこの国では凄く珍しいという程ではないし、傍から見ていると年齢的にもまだ十歳にすらなっていないヨハンナさんが焦る必要はない事だった。

 だけど、姉二人に対して仲が悪いわけではなく、どちらかと言うと仲が良かったにもかかわらず、ちょっとだけ劣等感を持っていたヨハンナさんは、それで落ち込んでしまったらしい。

 そこからは、騎士団入団して忙しいルグリアさんはともかく、当時まだ近くにいたルグレッタさんが止めるのも聞かず、鍛錬……というより訓練に精を出し過ぎて無理をしていたようだ。


 鍛錬くらいなら今のティルラちゃんでもしているけど、それよりも訓練という言葉が合う程、自分を追い詰めるような事をしていたらしい。

 チラッとだけ聞いてみると、筋肉回復薬草も使うからこそのメニューになっている俺やティルラちゃんの鍛錬が、鍛錬というより暇つぶしに思える程だった。

 寝ている時間以外は、ほとんど体を動かし続けるような内容だし。

 それを十に満たない女の子がこなしていた、というのはちょっと信じがたいが……嘘を吐くような人ではないので、間違いないんだろう。


 まぁそんな無茶をずっと続けられるわけもなく、数か月でぶっ倒れたらしいが。

 数か月も続けられたのは単純に凄い、俺なら数日……良くても十日かそこらで倒れそうだ。

 ともあれ、無茶をしていた事で周囲、特にルグリアさんやルグレッタさん、さらに両親にも心配され諭される。

 それに合わせて、ヨハンナさん自身の成長も伴い、ようやく背伸びをして今すぐ姉二人に追いつかなくてもいいんだ、と理解し始めたとの事。


 まぁ、ルグリアさんが無茶をしていたヨハンナさんくらいの頃には、もっと色々できなかったとかの話を聞いたから、というのが大きかったようだけど。

 ともかくそれで、色々と無茶をするのをやめた頃にちょっとした出会いというか、クレアと対面する機会があったらしい。


「あの時のクレアお嬢様のお言葉で、私は自分の生きる道がこれなのだと、クレアお嬢様を守るのが使命なのだと考える事ができました。それからは無茶をする事なく、姉二人とは違う道に行く決心がついたんです。それと、無理に追いかける必要もないのだと」

「……」

「クレア?」


 ヨハンナさんは少し楽しそうに話して屋敷を目指して歩いているので気付いていないようだけど、クレアが何やら訝し気な表情をしていた。

 どうしたんだろうと、ヨハンナさんに聞こえないくらい小さく声をかけてみる。

 当然、レオやリーザもクレアの様子には気づいているようだ。


「い、いえ……私、ヨハンナに何を言ったかなと。あまり覚えていなくて……もちろん、ヨハンナと会った時の事は覚えているのですけど」


 さすがにいい思い出であり、人生の岐路と言える決心をした時の話をしているヨハンナさんに聞かれたら不味いと思ったのか、答えるクレアの声は小さい。


「貴族の集まりというか、お祭りみたいな時に会ったのは間違いないんだよね?」


 こちらの国にもお祭りがあるというのはともかく、数年に一度くらい貴族家が一堂に会す場があり、そこでヨハンナさんとクレアが運命? の出会いを果たしたとさっきヨハンナさんから聞いた。

 その事くらいはクレアも覚えているのだろうか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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