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1929/1996

見送った後は気になった事を話題にしてみました



「それにしても……」

「どうされました?」

「ワフ?」

「どうしたのパパ?」


 号令を出す役目などはともかくとして見えなくなったフェンリル達の走って行った方から目線を外し、まだ森の方を見ているヨハンナさんへと顔を向ける。

 そんな俺に、クレアやレオ、リーザが不思議そうに首を傾げた。


「いやその、ヨハンナさんがルグリアさんやルグレッタさんと姉妹だって知らなかったから……」

「そういえば、タクミさんにはお話ししていませんでしたね。まぁ最近はお父様の訓練で、屋敷内にいる事も少なかったですし」

「ワフゥ? ワッフワフ」

「そうだよねー。なんとなく、匂いでわかってたよねママ」

「レオとリーザはわかってたのか」


 クレアは当然知っているとして、レオやリーザは匂いで判断していたらしい。

 俺だけ知らなかったのか……まぁ話す機会がなかっただけだろうし、疎外感を感じる程ではないけど。


「ワウワフ、ワッフワフワフ」

「そんなに似ているかな? いやまぁ俺が匂いを嗅ぐとかはできないけど」


 レオによると、ルグリアさん達三人の匂いが似ているから、そうだろうなとわかったらしくリーザも同様みたいだ。

 匂いで嗅ぎ分けるのは、いかにもレオと獣人のリーザらしいとは思う。

 まず判断基準が目に入る情報ではなく、嗅覚頼りなところとかな。


 ただ最近は三人とも屋敷にいるけど、それぞれ離れて生活していたのに、そんなに匂いとかって似るのかなぁ? なんて疑問はある。

 まぁ俺も含めた人間が感じる表面的な匂いとは別の感覚を、鋭い嗅覚で感じている可能性はあるけども。


「どうされました、タクミ様、クレアお嬢様?」


 フェンリル達が見えなくなった後も、かたまって話している俺達が気になったのか、話題の本人であるヨハンナさんがこちらにきた。


「ちょうどヨハンナの事を話していたの。ルグリアさんやルグレッタさんとの関係とかね」

「そうでしたか。タクミ様には、改めてになりますが……あの二人は私の姉で、私は末の妹になります」

「みたいですね。ちょっと驚きました。改めて知ってから見ると、なんとなく似ている気はしますけど……」


 三人並ぶと、何も知らない人でももしかしたらわかるのかもしれないけど……これまでそんな機会がなかった。


「ルグリア姉さんとルグレッタ姉さんは似ているでしょうが、私はあまり自身でも似ていないと思っていましたが……そうでしょうか?」

「確かに、似ているというのはルグリアさん達の方ね。でも雰囲気とか目元はよく見ると似ているわよ?」

「クレアの言う通りですね。よく見ると確かに似ている部分があるように思います」

「ワッフワフ」

「それは、女性にはあまり言わない方がいいんじゃないかレオ?」

「ワウゥ?」


 俺やクレアに同意するように、レオが匂いも似ているというように鳴いたけど、それは俺の中だけにしておこう。

 悪い意味で言ったわけじゃないけど、匂いとか女性は特に気にしそうだからな。


「あの二人に似ている、というのは少し嬉しいですね。複雑ではあるんですが……」


 俺やレオの話はほぼ聞こえていなかったようで少し安心したけど、ヨハンナさんは確かにちょっと複雑そうではありながらも笑って見せた。


「複雑っていうのは、何かあるんですか? あ、いや、事情はそれぞれですから、話したくない事であれば別にいいんですけど……」


 気になってついつい聞いてしまったけど、家庭の事情というか姉妹のあれこれなんてのは、人それぞれだからな。

 仲が悪そうには見えなかったけど、何かあって話しづらい事もあるだろうし。


「いえ、私が勝手に悩んでいただけの事ですし、それも幼少期の事なので構いません。それに、悩んでいたと言ってもほぼ解決しているようなものですから」

「そ、そうですか。良かった……」


 先程とは違い、複雑さの全然ない笑顔のヨハンナさんにホッと息を吐く。

 踏み込み過ぎて、嫌な事を根掘り葉掘り聞くなんて事はしたくないから、良かった。

 俺にだって、興味本位で聞かれたら話しづらいことくらいはあるからなぁ……話したくないって程の事じゃないけど。


「とりあえず、屋敷に戻りながら話しますか。いつまでもここにいても……」

「そうですね」

「えぇ」

「ワフ」


 少し遠い目をして、森へと入っていったルグリアさん達の方を一瞥した後、屋敷へと促すヨハンナさん。

 リーザが立ったままのレオによじよじと上り、背中に座るのを待ってから、皆で屋敷へと移動を開始する。

 ……最近、遊びとしての意味もあるのか、リーザは乗りやすいようレオが伏せをするのではなく、立っている状態で背中に上るのにハマっているようだ。

 大人でも、立っているレオの背中に乗るのは結構難しいけど、リーザは体の小ささを上手く使ってレオの毛を掴んだりしつつ、頑張って登っているのを見るのは微笑ましい。


 もちろん、落ちて怪我をしないように俺含めて周囲の人が見守っているし、レオも毛を引っ張られても痛くはないうえ、振り落とさないよう動かずジッとしているんだけど。

 子供は、大人が予想つかないような遊びを良く思いつくなぁ……っと、レオとリーザの事ではなくて、今はヨハンナさんの話だな。


「随分昔の事になりますが……私がまだリーザ様と同じくらいか、それよりも小さかった頃の事です」

「リーザより? ヨハンナお姉さんも小さかったの?」

「ふっ、誰でも小さい時と言うのはあるのですよリーザ様。私だけでなく、クレアお嬢様やタクミさん達にも、リーザ様と同じく小さい頃と言うのが存在するんです」

「んー? よくわかんない……」


 顔をほころばし、首を傾げたリーザに答えるヨハンナさん。

 リーザは、俺やクレアを見て、またヨハンナさんを見たりしているけど、それぞれの小さい頃というのは想像できなかったらしい。

 小さい子から見て、大人が自分と同じくらいの頃っていうのは想像しづらいものだよな。

 俺だって、リーザくらいの頃は周囲の大人が子供だった頃なんて、想像できなかったし。


「ルグリア姉さんとルグレッタ姉さん……特に、一番上のルグリア姉さんとは、少し年が離れていまして……」


 三姉妹の年齢を詳しくは知らないし、見た目では年が離れているというのはわかりづらいが……ヨハンナさんが言うならそうなんだろう。

 俺も、伯父さん達の子供、つまり従妹に当たるのが二人いるけど、兄弟のように仲良くさせてもらっていたのは、歳が離れている事も大きかったような気がする。

 年齢が近かったら、もうちょっと何かしらで衝突していたかもなぁ……離れているからこそ、逆らえなかったというか、こちらが何かしても受け止めてくれたというか……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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