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1928/1977

フェンリル達にとって号令は大事みたいでした



「ふぅむ、ヨハンナ、我が妹ながらなかなか素直ではないな? まぁ私もうかうかしていられんという事ではあるんだろうが」


 あれ……妹? ルグリアさんの妹はルグレッタさんじゃ……?


「姉さん、変な事を仰らないで下さい。私は素直に、クレアお嬢様を身命を賭してお守りするためにいるのですから」


 ルグリアさんの声が聞こえたヨハンナさんが、少し慌てた様子でこちらに来て言い返す。

 けど……おやおや? ヨハンナさんの方もルグリアさんの事を姉と……?

 どういう事だ? いや、どういう事も何も、妹と呼ぶ姉と、姉と呼ぶ妹、ただそれだけなんだろうけど……。


「ヨハンナは昔からそうだったな。才気溢れる妹達は、その気になれば私を越えて、第一近衛にもなれただろうに……まったく。まぁ、どちらも自分の思いに動いた結果なのだから、今更私がとやかく言う事ではないか」

「ルグレッタ姉さんも、私とは違いますが思う通りに動いた結果でしょう。まぁ再会した時は驚きましたが」

「だな。あれはどうかと思うが……だが、考え方によっては第一近衛を目指すよりも、あちらの方が上かもしれんな」

「そうですね……」

「おっと、こうして妹と語らうのは今ではないな。――ではタクミ殿、フェリー達の助力感謝いたします。調査の成果を期待してお待ち下さい」

「え、あ、はい……?」


 混乱中の俺に声をかけ、フェリーと共に他のフェンリル達と並び、森を見るルグリアさん。

 ルグリアさんとルグレッタさんが姉妹って事は知っていたけど……どちらも否定していなかったし、ヨハンナさんもそこに入るって事でいいのかな?

 話を聞いている限りではヨハンナさんが一番下みたいだが、知らなかった……いや、俺が聞いていないだけなんだろうけど。

 護衛が必要な状況はここのところなかったし、ヨハンナさんはエッケンハルトさんの訓練で忙しそうで、揃う事がなかったのもあるんだろう。


 よく見れば、なんとなく顔立ちとかも似ているようにも感じる……。

 姉妹と知ってからだから、そう感じるのは遅すぎるけど。


「グル、グルルゥ!」

「ワッフワフ」

「ん、フェリー、レオ?」

「ワフゥ……ワウワフ!」

「あ、あぁそうか……」

「タクミさん?」

「いや、なんでもない……わけじゃなくて、今知った事実があっただけだけど、まぁ気にしないで。後でちょっと聞くかもだけど」

「は、はぁ……」


 ぼんやり、というか色々と考えていた俺の様子を、クレアやレオが心配そうに見ていた。

 首を振って、とりあえずルグリアさん達姉妹の事は置いておくとして……。


「でも、本当にやるの?」

「グルゥ、グルルルゥ!」

「ワッフワフ!」


 出発する準備が整い、あとは走り出すだけという段階なんだけど、俺に任せられている事がある。

 それを躊躇すると、フェリーやレオから吠えられた。

 何やら、そっちの方が気合が入るからとかそういう事らしい。

 皆の見ている前でそうするのは、結構恥ずかしいんだけどなぁ……仕方ない。


 フェンリル達の体は森へ向いているけど、尻尾を振りつつ顔だけこちらに向けて期待するようにしているし。

 儀式という程じゃないけど、フェンリル達にとっては大事な事なんだろう。


「んんっ! えーっと……」


 とはいえ、皆の注目を集めた中でというのはやっぱり躊躇してしまうので、覚悟を決める、意識を変えるために咳払いしてとりあえず喉の調子を整える。

 緊張して声が裏返ったりしたら、もっと恥ずかしいからな。


「……強行偵察隊、森の調査はお前達に任せる!……行けっ!!」


 照れや恥ずかしさを我慢して、身振りも加えて叫ぶ……言葉は不慣れ感がかなり出ている気がするが。


「ワオォォォォォン――!!」

「グルゥ!」

「「「「ガフ!」」」」

「はっ!」


 俺の号令に続いてレオが遠吠えするように大きく吠えると、フェリーを始めとしたフェンリル達が一度大きく吠えた後、ルグリアさんの声と共に一斉に走り始めた。

 なんというか、群れで行動する習性があるからなのかもしれないけど、集団で何かをする時は最初にこうして号令をかけるのがフェンリル達にとっては好ましいらしい。

 前にも似たような事をやったけど、フェリーからそうするように頼まれていた。


 うぅむ、レオならわかるけど……もしかして俺、フェンリル達からフェリーみたいに群れのリーダー扱いになっていたりするのかな?

 俺じゃないと駄目みたいな事を言われたし。

 そんなつもりはないんだけど、まぁフェンリル達がそれで気分よく動いてくれるのなら、それでもいいのか。

 ……かなり恥ずかしいけど。


「お疲れ様です、タクミさん。立派に見えましたよ」

「あ、ありがとう。でもやっぱり、少し恥ずかしいな。さっきみたいに、号令を出すのって向いてないというか……これまでやった事なかったから」

「こういうのは慣れみたいなものですかね」


 近くで見ていたクレアから、にこやかな笑みと共に褒められるけど、様になっていた気はあまりしていないから微妙だ。

 何度かやれば慣れるのだろうか? 多分これからもやる機会はありそうだから、できるだけ早く慣れたいとは思うけど。


「私も、あまり好みませんけど……お父様なら、色々教えて下さると思いますよ?」

「うーん、機会があれば、かな? エッケンハルトさんは……面白がって練習とか言って色々やりそうだから、ちょっと」

「ふふ、そうですね。でも、フェンリル達を指揮するタクミさん、以前も魔物を相手にする時にラーレも含めてやっていたのを見ましたけど、とても立派でしたから、タクミさんはもう少し自信を持ってもいいと思います」

「そんな事もあったね……」


 確か、別邸に魔物が近付いてきているのを、レオとフェンリルの散歩中に気付いた時だったか。

 今みたいに落ち着いていなくて、咄嗟の行動ではあったから、あの時は恥ずかしいとかあまり気にしていなかったし。

 まぁこれも、自己評価というかクレアが言うように自信を付けるために、恥ずかしがらずにできるように頑張ろう。


 ちなみにフェンリル達は、クレアと話している数分と経っていないくらいで既に森へと突入していて、こちらからは見えなくなっている。

 相変わらず早いなぁ……張り切っているのもあるんだろうけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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