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1927/1996

強行偵察隊が結成されました



「あ、あと出発する時は見送りたいので、できれば起きている時間にしてもらえるとありがたいです。絶対ではありませんけど……」

「そうですね、調査のお見送りというのはちょっと珍しいと思いますが、フェンリル達が美味しい物を食べてから出たいと思いますので、早くても朝食後としましょう」

「グルゥ、グルル」

「ありがとうございます。――フェリー、お腹いっぱいになった後でも大丈夫か?」

「グル!」


 俺の問いかけに元気よく頷くフェリー。

 美味しい物を食べてからというのはまぁいいんだけど、食べてすぐだと動きづらいとか体に悪い気がしたんだが、それはフェンリル達にとってはあまり関係ないようだ。

 まぁ体調が悪くなったりしないのなら、それでいいか。

 そう考え、ルグリアさんやフェリーともう少しだけ打ち合わせをして、夕食の席に着いた――。



 ――翌日、早々にルグリアさんが調査隊メンバーを選別し、朝食後少ししてからの出発となった。

 もちろん見送りに行くため、俺とレオ、リーザやクレアなど、他の人達も屋敷から出てきている。

 エッケンハルトさんは朝が弱いのもあって、まだ寝ているようだけど。

 場所は庭ではなく薬草を作っている畑を越えた、森に近い場所だ。


「ガウ~? スンスン、ガッフ!」

「美味しそうな匂いがするかもしれないけど、我慢だぞー?」

「ガ、ガウゥ……」


 風呂敷に包んだ荷物をくくり付けたフェンリルが、自分の持っている荷物を窺っているので、一応注意。

 フェリーを始めとしたフェンリル五体にはそれぞれ、ルグリアさん達が乗っていて、さらに食料を含む荷物を括り付けてある。

 ……馬に持たせるよりも大きく重い荷物を持っていても、平然としているのは単純に凄いが。

 その中には、今日中に食べるとして調理済みの物も包んであるので、その匂いが気になるんだろう。


 とはいえそれはお弁当みたいなものなので、食べたいからとすぐに食べたらルグリアさん達が困ってしまうからな。

 そもそもさっき朝食を食べて、満腹でへそ天状態になっていたのに……食いしん坊で底なしな部分もあるのかもしれない。

 まぁヘレーナさん達の作った料理が美味しいからっていうのもあるんだろうけど。

 ちなみにもしもに備えて、サニターティムの丸薬は既に飲ませてあるし、予備も荷物の中に一緒に入れてある。


 途中でカナンビスの薬の影響を受けてしまったら、引き返す事も難しくなる可能性もあるからな。

 もし怪しい臭いなどがあれば、無理に近付かないようには言ってあるから、万全じゃなくとも大きな問題にはならないだろう、と思いたい。


「タクミ殿、必ずや成果を持ち帰ります」

「もしかしたら何もない可能性、というのもありますからあまり気負わず……」

「しばらく森の中かぁ。訓練しなくていいのは、悪くないな」

「フィリップさん、森の中でもお屋形様から欠かさぬよう申し付けられております」

「くっ……逃げられなかったか……っ!」


 フェリーの背中に乗ったルグリアさんと話す俺とは別に、フィリップさんとニコラさんが何やら話しているのが聞こえた。

 二人は、ルグリアさんが選別していて、今回の調査に参加するためルグリアさんと同じくフェンリルに乗っている。

 エッケンハルトさんやクレアは了承済みで、聞こえた話からすると森の中でも引き続き何かしらの、最低限の訓練を課せられているようだ。

 他に二人……片方は相変わらず顔を隠すように鎧に頭からつま先まで鎧で包まれたパプティストさん、それから近衛護衛さんからもう一人の計五人が、それぞれフェンリルの背中に乗っている。


 パプティストさんは、フェンリルと仲が良くというか人よりもフェンリルといる方が心休まるようで、今も籠手に包まれてはいるけど、優しくフェンリルを撫でているな。

 もう一人の近衛護衛さんはあまり話した事はないが、ルグリアさんが選んだ人だから信頼できるだろう。

 近衛隊って事は、エリートでもあるようだし。


「ニコラさん、無事に戻って来るのを待っていますね!」


 と、そんな事を考えているとニコラさんへと駆け寄る女性が一人。

 クラウフェルトの従業員、コリントさんだ。


「は、はぁ……フェンリル達がいますので、あまり危険はないとは思いますが……必ず無事で帰ってきます」


 コリントさんはずっとニコラさんの追っかけ状態になっていて、ニコラさん自身もまんざらではないらしく、よく一緒にいるところを見かけるようになった。

 以前面談をした時のコリントさんは、ランジ村でいい人を見つけたいような事を言っていたけど、それはニコラさんに向いているようで、ちょっと微笑ましく皆で見守っている状態だ。

 コリントさんは事務方としてキースさんの下で率先して働いているらしいし、真面目に護衛をしてくれるニコラさんとお似合いだと評判だし、俺も二人の進展を心待ちにしていたりする。

 ……セバスチャンさん達が、俺やクレアを見ているのは、こんな気持ちなんだろうか?


「けっ! ニコラは早々に相手を見つけやがって……俺なんて、声を掛けてもほとんど愛想笑いしか返って来なくなってるってのに……」


 幸せそうな未来が想像できる二人に対し、それを見ていたフィリップさんがやさぐれる。


「愛想笑いでも、ちゃんと笑顔が返って来るだけありがたいと思った方がいいのではないですか? フィリップさんは、少々どころではないですが、軽薄すぎるんです。そのうち、女性に相手されなくなっても知りませんよ」


 コリントさんと一緒に来たのか、ヨハンナさんがやさぐれているフィリップさんに止めのような言葉を突き刺した。

 うーむ……俺としては、ヨハンナさんとフィリップさんって結構いいコンビに見えるんだけど、どうなんだろう?

 ……おっと、こんな事ばかり考えていたら、セバスチャンさんやエルミーネさんに変な勧誘をされそうだから、程々にしとかないとな。

 今は、ルグリアさん達強行偵察隊のお見送りなわけだから。


 ……強行偵察隊、話しを聞いたユートさんが思い付きで決めた名称だけど、他の調査隊と別けるためにという事で、ルグリアさん達には受け入れられてしまった。

 強行偵察は威力偵察とも言い、実際は敵に攻撃しながらの偵察だったりするんだけど……まぁ魔物と遭遇して戦う事もあるから、大きく間違えてはいない、のかな?

 まぁ呼び方はなんでもいいか、わかればいいだけだし。

 なんて考えている俺の横、つまりすぐ近くにいるフェリーの背中から衝撃の言葉が聞こえた――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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