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1925/1997

フェリーに役目をお願いしました



「しかし、北の森の先を調べるですか。その先に何かあるとタクミ殿は考えておられるのですね?」

「そうですね……もしかしたら何もないかもしれませんけど、調べてみる価値はあるかなって思っています。まぁ、勘みたいなものですけど」


 俺の提案というのは、フェリー達一部のフェンリルに頼んで森を突き抜け、その先を調べてもらうという事だ。

 一応多くの兵士さんやフェンリル達の協力で山狩りならぬ森狩りのように、広く、そして綿密に調査を進めていて、決定的な何かがなければそのまま森を抜ける事にはなっていたと思うけど。

 ここらで、何か調査の進捗をというか、早められるのなら早めた方がいいと提案したわけだ。

 森を抜けた先の事は、セバスチャンさんから説明された事から何もないはずの場所だからこそ、何かあるのではないかという勘でだから、エッケンハルトさん達には反対される可能性はあったけど。


 さっきの会議のようなもので、フェリー達が引き受けてくれるのならという条件の下、了承されたってわけだな。

 皆、調査の成果があまり芳しくない事を、気にしていたようだから了承されたんだと思っている。

 焦っていたわけではないとは思うけど。


「あとは、何かあった時のためにフェリー達だけだと判断できなかったりすることもあると思うので、調査隊からも誰かを付けないといけないんですけど……」

「でしたら、その役目は私が。それと、調査隊から数名選出しておきます」

「危険があるかもしれませんけど、いいんですか?」

「であればこそです。近衛騎士の隊長である私こそ適任でしょう。それに、選出する者も実力者を選ぶように考えています」

「実力に疑いを持っているわけではないんですけど、ルグリアさんがそう言うのであればお任せしますね」

「はっ、必ず何かしらの成果を持ち帰る事をお約束します!」

「あまり意気込まずに……何もなければ、それはそれで成果といえるでしょうし、もし危険がありそうなら避けて下さいね?」


 ルグリアさんは、第二近衛騎士隊の隊長さんだしその実力は、俺は見た事がないけど疑いようがないからな。

 剣の腕とか、戦う事だけでなくそれ以外にも……というか、実力のない人が近衛騎士にはなれないと思うし、隊長にも選ばれないだろう。

 その役職が、ルグリアさんの実力だけでなく人となりも証明しているようなものだ。


「グル、グルゥグルル!」

「お、戻って来た……よしよし」

「ワフ、ワフ」

「ふむ、今更ですがこうしていると獰猛な魔物として恐れられているのが嘘のようですね。まぁ私はもちろん、近衛騎士の皆も調査やタクミ殿との関わりを通じて、信頼でき、心強い味方だという事は承知しているのですが」


 数体のフェンリルを連れて俺の所へ戻って来るフェリーを、レオと一緒に労う。

 それと共に、感心しながら俺と同じくフェリーを撫でるルグリアさん。

 その言葉だけでなく表情は優し気で、恐ろしい魔物に対してではなく、親しい友人や家族を見るような雰囲気だった。


「いいかフェリー。これは調査だけど今までと違って密かに、そうだな。密偵みたいな役目だと思ってくれ」

「グルゥ」


 一通りフェリーを含めて、集められたフェンリル達をルグリアさんと撫でた後、もう一度確認をするために今回の作戦を話す。

 密偵という言葉がフェリーに理解できるか不安だったけど、ちょっと楽しそうに頷いたのでわかってはいるみたいだ。

 というか、密偵という役目が嬉しいようでもあるようだな。


「途中、魔物の気配とか匂いを感じる事もあるだろうけど、できるだけそれは無視していい。というより、あまり魔物には構わないようにしてくれ」

「ガフ? ガフガウ?」


 集まったフェンリル、フェリーを入れて五体いるけどそのうちの一体が、俺に質問をするように片方の前足を上げて鳴く。

 結構律儀だな……ともあれそれをレオに通訳してもらうと、狩りはしちゃいけないのか? という事みたいだ。


「狩りは凄く助かっているけど、今回は目的が違うんだ。余計な時間を狩りに使っていると、一緒にいるルグリアさん達にも迷惑がかかるし危険にもなる。森の奥だから、何があるかわからないという事もあるからな」


 フェンリルが複数いるのだから、魔物に対しての危険というのはほとんどないだろうけど、それでも念を入れておくに越した事はない。

 それに、狩りをしていると森を抜けるにも、その先での調査も時間がかかってしまうため、調査を早めるための一手として提案した意味が薄くなってしまうから。


「遭遇した魔物から逃げる必要はあまりないかもしれないけど、できるだけ避けてくれるとありがたい。それ以外にも、もし人や何かしらの痕跡を途中で見つけたら、ルグリアさん達に判断を仰いでくれ」

「お任せ下さい。フェリーだけでなく他のフェンリル達も、よろしく頼みます」

「グルゥ!」


 フェンリル達に判断できない事だってあるだろうし、それに関しては同行するルグリアさん達頼みだ。

 何か決定的な痕跡などを見つけた場合は、すぐに引き返して持ち帰る事になっているけど、そうでない場合はさらに奥へ突き進む。

 それらの判断は、ルグリアさんとフェリーで協議しながら進めて行って欲しいところだ。

 今回の提案、森を北に突き抜けての調査となるわけだけど、それにはフェリーも参加するようお願いしている。


 他にも、群れの中でも高い位置にいてフェリーに近い……ルグリアさんともある意味立場が似ている、親衛隊と勝手に俺が呼んでいる二体も参加だ。

 要は、群れのリーダーとして頼もしく信頼しているフェリーと、さらにフェンリルの中でも特に頼りになるらしい精鋭を選んでもらっての調査をするってわけだな。

 多くのフェンリルが参加しても、移動に時間がかかるだろうかという考えでの少数精鋭だ……それでも、人だけよりも数十倍速いんだけど。

 まぁ数が多くなればなるほど、目立つから他の魔物と遭遇しやすくなってしまうだろうし。


 あと、もし森を抜けた先やまだ調べていない程の奥には、人が入り込んでいる可能性もあるし、そちらにできるだけ見つからないようにという事でもある。

 森の中を密かに移動し、突き抜ける途中かその先で何かしらの情報を相手に悟られずに収集できればする、これが俺が密偵といった理由だ。

 なんとなく、忍者もそうだけど密偵というのはそうするってイメージから。

 ……さすがに、物語であるような忍者に近い動きをフェンリル達の身体能力ならできそうだけど、イメージとしてはかけ離れているので密偵という事にしただけだし、別の呼び方がしっくりくるのならそっちでもいいんだけどな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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