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1923/1997

寝る前と逆転している状況に気付きました



「そ、そうなんだ。別邸で一度熱を出してから、気を付けているつもりではあったんだけど……結構、ライラさんが気を遣ってくれるというか、厳しく見ていてくれたりもしたし。でも、やっぱりちょっと色々考える事とかあったからかも」

「そうですね。私もそうですけど、タクミさんはもっと慣れない事ばかりですから。大丈夫と思っていても、やっぱり疲れてしまうものなのかもしれません」

「そうかもね……って、あれ?」


 目を覚まし、段々と頭がはっきりしてくる中でクレアと話しているけど……そういえばなんで、クレアを見上げる位置から話しているんだろう?

 というか、後頭部がなんだか柔らかい物の上に置かれている気がするのは、気のせいじゃないよな。

 普段使っている枕とはまた違ってこう、言い方が正しいのかわからないけど、肉感的な柔らかさというか……。


「どうされました、タクミさん?」


 目をキョロキョロと動かす俺に、上から覗き込むクレアは少し頬が赤い気がするけど、それ以外はなぜか楽しそうだ。

 そういった表情は、どこかエッケンハルトさんを彷彿とさせて、やっぱり親子なんだなと思わせられるけど……。

 

「も、もしかしてなんだけど……」

「はい」

「俺って、クレアの膝枕で寝ていた……とか?」


 後頭部には何やら枕などとは違った柔らかさ、そして見上げるクレアの顔との間には、どうしても目に入ってしまう山脈が。

 どこをどう考えても、クレアに膝枕されている状況以外の何物でもなく、口に出して聞かなくてもはっきり頭が理解していた。


「そうですね。ふふ、こうしているとタクミさんの可愛らしい寝顔がよく見れました」

「えーっと……俺がクレアに膝枕をしていたのに、気付いたら立場が逆転? 一体何が……」


 と、クスクスと笑うクレアや、可愛らしいという言葉は恥ずかしかったけど、いつの間にか変わっていた立場への混乱で、どうしてこうなったという思いの方が強い。


「っと、ごめん! いつまでも膝枕させちゃって!」

「あら、私はずっとあのままでも良かったですのに……」


 慌てて起き上がる俺に、少し残念そうなクレア。

 いやいや、さすがに起きてちゃんとした意識があるのに、いつまでも膝枕をしてもらうのはなぁ。

 それに、俺がクレアに甘えているようでなんだかバツが悪いし……。


 いやまぁやっぱりというかなんというか、クレアに膝枕していた時とはまた違って、恥ずかしいし照れるけど良かったと思う……って、俺は何を考えているのか。

 まだ起きたばかりで、少し頭が混乱しているのかもしれない。


「はぁ、クレアにお昼寝させて休んでもらうはずだったのに、すっかり俺が休んじゃったね……ごめん」

「いえ、気になさらないで下さい。むしろ私としては、恥ずかしい気持ちの強いタクミさんの膝枕よりも、タクミさんの寝顔を見ている方が癒される気がしますから」

「それはそれで、俺が恥ずかしいんだけど」

「私も恥ずかしかったんですから、おあいこですよ?」

「そうかもね。はは、してやられたなぁ」

「ふふふ」


 クレアの頬は少し赤いけど、多分俺も赤くなっているんだろう。

 お互い恥ずかしいながらも、なんとも言えない空気が流れている気がするが、悪い感じじゃない。

 俺もクレアの寝顔を観察しながら、髪を撫でるのを楽しんでいたし、クレアも同じようにしていたんだろうな。

 うん、お互いさまって事で納得しておこう。


 ちなみに、体を伸ばしながら頭だけでなく体の方も起こしつつクレアに聞いたら、案の定クレアが起きた時には俺は座ったまま寝ていたらしい。

 体勢が悪かったのか、ちょっと苦しそうに寝息を立てていた俺を見かねて、クレアがお返しにと膝枕をしてくれたという事みたいだ。

 それでなぜ、俺は横向きではなく仰向けで転がっていたのかは、クレアとしてもどうしてそうなったか謎らしいけど……俺が寝返りとかで体勢を変えたとかではないらしい。

 まぁ、変に動いてクレアが恥ずかしがるような事にならなくて良かった、と思っておこう。


 あとなにかとてつもなく嬉しい事を、夢の中で言われたような気がするけど……起きてからすぐにその夢の内容はおぼろげになっていき、今では何かを言われたような? という感覚しかない。

 クレアに膝枕されていたから、夢見が良かっただけなんだろうけども。


「っと、うえ!? もう結構な時間……結局、クレアよりも俺の方がしっかり休んじゃったみたいだ」

「あら、そうみたいですね。タクミさんの寝顔を見ていたら、時間を忘れてしまっていました」

「俺もクレアの寝顔を見ている時はそんな感じだったから、何も言えないけど……」


 ふと目に入った時計は、クレアを寝かしつけた時から約二時間近く進んでいた。

 クレアは結構すぐ起きたみたいで、大半は俺が寝ていたようでちょっと失敗した気分。

 でも、しっかり寝たからなのか、枕が良かったのか、いつもの同じ時間よりも体が軽くて頭もスッキリしている気がする。


「俺は十分に休ませてもらったけど、クレアの方はどう? 足が痺れたりとかはしていない?」

「はい、大丈夫です。なんだか頭がスッキリしていますね。タクミさんの寝顔を見たからでしょうか? 眠気もありません」

「そ、そう。なら良かった、のかな?」


 スッと立ち上がるクレアは、俺の頭が乗っていたとは思えない程動きがスムーズで、無理をしているようには見えない……結構な時間膝枕をしてもらっていたと思うんだけど。

 あと、俺の寝顔に疲れを癒す効果はないと思うんだが、クレアがそう言うならクレアにとってはそうなんだろう。

 クレアの寝顔を俺が見たのと同じってところだ。


「おっと、こうしちゃいられないね。結構時間が経っているし……」


 そろそろ、ルグリアさん達調査隊の人達が森から戻って報告に来る頃合いだし、その前に起きられたようだ。

 調査に行かせておいて、俺はクレアに膝枕されてぐっすり寝ていた……なんて場面を目撃されなくて良かった。

 とはいえ、余裕があると思っていた時間をとうに過ぎているわけで、誰も部屋に入って来なかったのは不思議だ。


 さすがに誰かが来ていたら、クレアか入って来た人に起こされるか、俺自身が気付いたはずだけど、それはなかったわけだしな。

 ……今朝レオが別働の調査隊を見送りに部屋を出た時は、一切気付かず寝ていたのは考えないでおこう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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