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クレアが眠そうなのが気になりました



「むぅ、どうしても朝起きるのは苦手でな……タクミ殿の薬草があれば別なのだが、あまり使用させてくれないしな」

「まぁ、病とかではないんですから、それに頼り過ぎるのはよくないですしね」


 俺の考えはともかく、少しバツが悪そうに言うエッケンハルトさん。

 安眠薬草があれば、エッケンハルトさんでも朝はスッキリ起きられるから、睡眠の質などが多少関係しているんだろうけど、あまり薬草に頼り過ぎるのはなぁ。

 薬効としての依存性がなさそうなのはある程度確認できているし、調合された薬と違って副作用もないみたいだから安全ではあるんだけど。

 不眠症なら別だろうけど、そう言うわけでもないし……寝られないではなく、起きられないだからな。


「レオ様も、起きるのが苦手というわけではないでしょうけど、大きなあくびをしていましたからね。早い時間でしたし、今回は仕方ないでしょう」

「そうだね、まぁエッケンハルトさんには薬草は時々くらいで我慢してもらって……って、レオも起きてたの?」

「え、あ、はい。私達が見送りに外へ出た時、タクミさんの部屋からレオ様が来られましたよ?」

「そうだったんだ……全然気づかなかった」


 レオの奴、俺が起きた時は何も言っていなかったし、いつも通り俺の部屋でリーザと一緒に寝ていたのにな。

 多分、クレア達が屋敷内で動いている事か、もしくはフェリーの声などが聞こえて起き出し、見送った後に戻ってきてまた寝たんだろう。

 器用に扉を開けて、レオだけで出入りできるしな……深夜のトイレとか、俺へアピールのために微妙に起こしてから行くけど、やろうと思えば物音ひとつ立てずに出る事もできるようだし。


 俺にアピールするのはマルチーズだった頃の名残だろう。

 まぁ、リーザを起こさないようにだろうけど、本当に微妙に、尻尾の先で寝ている俺の顔をくすぐる程度だったりするけど。

 それはそれで、ちょっと困った癖だったりする。


「ふっふっふ、タクミ殿も朝は苦手なのだな」

「いや、熟睡していて、本来起きる時間じゃなかったから気付かなかっただけですけど……そうか、だからかぁ」

「何か、思い当たる事でも?」

「起きた時、昨日の夜と違う体勢で寝ていたからね。夜に起きただけかと思ったけど、そういう事だったんだなぁって」


 体が大きくなってからのレオは寝ている時にほとんど寝返りというか、体勢を変えないんだよな。

 マルチーズだった頃は、俺の寝ているベッドに入り込んだ挙句、俺の体を隅に追いやったり上に乗る事もあったけど……。


「しかも、お腹を上に向けてその上にリーザも乗せていたからね」


 リーザの寝相はまぁ人並みで、寝ている時も動くけどさすがにベッドから出てレオに乗るなんて離れ業はしない。

 だから多分、早朝とはいえ起きる時間に近かった事もあって、レオが見送りをした後に戻って来た際、起きてしまったのかもしれない。

 なぜレオがへそ天状態だったのかはわからないが、おそらくただレオがそういう体勢になりたかっただけだと思う。


「ふふふ、それは可愛いですね」

「ほぉほぉ、クレアが私のお腹の上で寝こけていたのを思い出すな。まぁあれは今のリーザよりももっと幼く、赤ん坊と言っていい頃だが」

「お、お父様!」

「おっと、これ以上はクレアに叱られてしまうな。タクミ殿にも話せたわけだし、私はこれで退散しよう」

「あ、はい。すみません、呼び止めてしまって」

「気にするな。ではな……」

「もう、お父様ったら……」


 クレア本人ですらおそらく覚えていない昔の事を出されて、深い溜め息。

 赤ん坊の頃なんて、はっきり覚えている人がいるのかどうかくらいだろうし、でもその時の話を親に出されると、妙に恥ずかしいからクレアが溜め息を吐いたり、ちょっと恥ずかしそうにしている気持ちはわかる。

 俺としては、そんなクレアの話を少しでも聞けて嬉しかったりはするが……聞こうと思っても、クレアに止められそうだしな。

 あと、エッケンハルトさんは面白おかしく脚色しそうな気もするし。


 ……聞くなら、セバスチャンさんかマリエッタさん辺りが、一番冷静に教えてくれそうだ。

 とまぁ、そんな計画はとりあえずおいておこう。


「ふわ……あ、すみませんタクミさん!」

「あぁいやいや、気にしないで。朝が早かったんだから仕方ないよ」


 エッケンハルトさんが部屋からいなくなり、俺とクレアだけになってゆるんだのか、あくびをしそうになって慌てて噛み殺すクレア。

 俺に見られて恥ずかしそうにしているけど、そういうところも可愛いなんて思うのと共に、俺といてリラックスできているんだろうと少し嬉しくなる。

 一緒にいて、常に緊張を強いる関係とか嫌だし、どうせならクレアにとって安らげる存在になりたいからな。


「んー、まだちょっと時間はありそうだし……クレア、こっちこっち」

「? どうしたんですか、タクミさん?」

「いいからいいから……」


 他に誰もいなくなった部屋と、時間を確認。

 執務室にある横長のソファーの端に座り、すぐ横をポンポンと叩いてキョトンとしているクレアを促す。

 疑問を感じながらも、素直に隣に座ってくれるクレア。

 多少照れるけど、体の力を抜くように言いつつ手を添えてクレアを誘導。


「こ、これは!? す、少しどころか大いに恥ずかしい気がするのですが、ど、ど、どうお考えでしょうかタクミさん!?」

「ははは、落ち着いて。確かに恥ずかしいけど、たまにはこういうのもいいんじゃないかな?」


 こてん、と座っている俺の太ももの上に乗るクレアの頭。

 柔らかな髪を撫でつつ、慌てて口調がおかしくなりつつあるクレアをなだめる。

 よく、女性に膝枕されるのに憧れる男、なんて話をよく聞くし気持ちはわかる方だけど、逆になるのも悪くないと思うんだ。

 まぁ、男の太ももが硬くて嫌って言う人はいるかもしれないけど。


 というか、クレアの髪は俺のとは全然違って繊細でありながらも柔らかくて、指どおりが凄くいいなぁ。

 手入れを欠かさないおかげでもあるだろうし、元々綺麗な金髪だったけど……最近使うようになった椿油のおかげもあるのかもしれない。

 撫でていると、ほんの少しだけ椿の花の香が広がるような気もするしな。

 椿油は、屋敷の多くの女性に受け入れられていて、さらに化粧水としても使われているようだ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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