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1913/1981

クレアが決意を話しました



「つまりタクミ君は、自分のルーツを探したいわけだね。うんうん、わかるよ。自分探し、男の子なら一度はしてみたいよねー」

「それはちょっと違うような……?」


 ルーツ、というのは大きく外れていない気がするけど、自分探しではない、と思う。

 あと、男の子なんて年齢でもない、というのはまぁユートさんに突っ込んでも仕方ないか。

 性格も容姿も、この中で誰よりも少年っぽくありながら、実際は一番のお爺ちゃんだし。

 ユートさんから見たら、二十歳ていどの俺なんて男性というよりは男の子に見える若輩者だろうから。


「あ、タクミ君、今失礼な事を考えたでしょ?」

「い、いや、そんな事は……」


 女性にはそうだとよく聞くけど、ユートさんにとっても実年齢の事は気になるのかもしれない。

 それか、俺がお爺ちゃんって考えたのに反応したのか……いや、さすがに心が読めるわけじゃないだろうけど。


「して、タクミ殿の考えはわかったが……クレアはどう考えている?」


 俺とユートさんのやり取りを余所に、エッケンハルトさんがクレアに問いかけた。

 ただ俺達の話を聞くだけになっているルグレッタさんはともかく、エルケリッヒさんも窺うようにクレアを見ている。

 二人共、クレアに対して目を細め、ジッとどう考えているのかを観察しているようでもあった。


「私は、タクミさんとも話しましたけど……それでいいのかわかりません。でも、タクミさんが言ってくれましたので、シルバーフェンリルを追ってみたいと思います。もちろん、タクミさんとも相談して、危険な事などはできるだけ避けますし、以前のように思い付きで一人走り出すような事はしません」

「ふむ、そうか……」


 ティルラちゃんのためにラモギを求めて、というのはともかくとして、シルバーフェンリルを探すために森へ行った時は一人で走り出したわけではないけど……。

 でも、それくらい気持ちを抑えるという覚悟みたいなものなんだろう。


「クレアの気持ちはわかった。元々、クレアがシルバーフェンリルや初代当主様にどんな気持ちを抱いているか、ある程度は知っていたからな。それに協力できないのは心苦しくもあった。公爵家としての在り方などを考えるのにもいい機会なのだろうな」

「使用人など、公爵家に関わる者達の一部が初代当主様の生き写しとも言えるクレアを見て、何かしらの期待や噂をしているのも私も知っていた」


 エッケンハルトさんの言葉を継ぐように、エルケリッヒさんが話し始める。

 以前、エッケンハルトさんからはそう言った噂などは把握しているけど、クレアはクレアで、初代当主様とは違うという事は聞いていたけど……エルケリッヒさんも知っていたのか。

 まぁ、先代当主でもあるしまだまだ現役と言っても通用しそうなくらいだから、関係者からの噂とかっていうのは把握していてもおかしくないか。


「決して期待していないという事ではないのだが、クレアと初代当主様は違う。同じように、公爵家を盛り立てる事や、シルバーフェンリルを探そうとしたり、初代当主様の影を追いかけなくても良いだろうと、考えていた。ハルトと同意見だな。だが確かに、いい機会なのだろう。ハルトも私と同じように考えていると思うのだが……」

「はい。父上の言う通り、ここに今レオ様というシルバーフェンリル、そして一緒にタクミ殿もいる。色々と材料がそろっているとも言えます」


 初代当主様の生き写しであるクレアと、俺やレオ……全て偶然と言ってしまうのはやっぱり、ちょっと乱暴な気すらするくらいだからな。

 それに関しては、俺だけでなく皆も同じなんだろう。


「クレアは大事な娘だ。タクミ殿もそのクレアと親しくしているだけでなく、もはや公爵家にとっては欠かせない人物になっていると言えるだろう。その二人が決めた事だ、公爵家の当主として、全面的に協力する事を約束しよう」

「ありがとうざいます、お父様」

「エッケンハルトさん、ありがとうございます」

「だが!」


 クレアと揃って、協力してくれると言うエッケンハルトさんにお礼を言うが、すぐに厳しい表情になって語気を強めた。


「二人共、危険な事だけは避けるように。もちろん、それが必要な事はあるだろうが、その時はタクミ殿はクレアに、クレアはタクミ殿と相談する事。そして、必ず私や身近な使用人達とも相談する事。これだけは約束してくれ。クレアが大事な娘だと言ったが、タクミ殿ももう息子のようなものだ。二人が危険な目に遭うのは、私を始めとした周囲の者達を苦しませる事と同じだと思って欲しい」 

「「……はい」」


 言葉の途中で表情を崩し、優しい父親の顔になるエッケンハルトさんに、俺もクレアも深く頷いた。

 心配させてしまう事はできるだけ避けて、相談しつつ進めて行かないと。

 俺の事を息子のように思ってくれている、とまでは思っていなかったな。

  元々、気のいい近所、もしくは親戚のおじさんみたいな感じでエッケンハルトさんの事を見ていたけど……そう言ってくれたエッケンハルトさんの期待や心意気に応えらえるように。


「もっとも、クレアと一緒になって本当の意味で義父、父親としてタクミ殿を息子にするのも期待しているがな?」


 なんて、ニヤリと笑うエッケンハルトさん。

 真面目な空気に耐えられなかった可能性はあるけど、色々と台なしな気がしなくもない。


「……お父様ったら、もう」

「それがなければ、いい話で終わったんですけど……」

「ハルトはこれがないとね。だから僕も面白い」

「むぅ、二人に期待する気持ちはわかるのだが、さすがにここでそれを言うのはどうかと思うぞ? ハルトは真面目にするのが続かない病にでもかかっているのか?」

「そ、そんな病はありませんよ父上……」


 一部……ユートさん以外から非難されるような視線や言葉を浴びせられ、慌てるエッケンハルトさん。

 エルケリッヒさんが言っているような病は多分ないと思うが……エッケンハルトさんやユートさんを見ていると、もしかしたらあるかもと思ってしまってもおかしくないなぁ。

 あと、義父になるとかそういう事は、考えていないわけではないけど相手方の父親から言われるのは、ちょっとどうすればいいわからない。

 それに、他にもやらないといけない事があるし、追々というかゆっくりクレアと二人で考えていきたい事だ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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