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1912/1997

可能性を踏まえてどうするかを考えました



「むぅ、本邸にある物を全て持ってこさせようと思ったが、先ほども言ったように選定はさせる事にしよう。タクミ殿が歴史書にかかりきりで、諸々が疎かになってはいかんからな。クレアも、寂しがるだろうし」

「もう、お父様! 真面目な話ではなかったのですか?」

「おっと! これ以上は怒られてしまいそうだから、控えておこう」


 なんてやり取りをしつつ、歴史書に関してはエッケンハルトさんからの取り寄せ待ちに。

 歴史好きというわけではないけど、当然俺の知らない事ばかりだろうから、ちょっと楽しみだ……その分、新しい事を覚えるのが大変だとは思うけど。


「さて、話しを戻しまして……フェンリルの森には現在もシルバーフェンリルがいるかどうか。俺はいると思います。どこかに存在するのは間違いないと思えますし、その場合はいくら大昔と言っても、そこに棲んでいたという話がある以上、まだそこにいると考えるのが自然かなと」

「うむ、そうだな。私もタクミ殿に賛成だ。初代当主様とフェンリルの森にいた、という事は真実なのだし、そこから別の場所に移住していた場合、シルバーフェンリルという目立つ存在である以上、そういった話が他で聞かないのは不自然だろう」


 と、割と強引に話しを引き戻した俺に、エッケンハルトさんが賛同。

 クレアやエルケリッヒさんも同じく賛同してくれて、反対意見はなくなった。

 というより、元々反対意見なんかなかったし、それをするなら逆にシルバーフェンリルがいない可能性も示さないといけないからな。

 反証できる材料がない以上、ちょっとズルいけど皆は賛成するしかなかったのもあると思う。


「公爵家は、元々漠然としていて確証などはもちろんなかったが、今も初代当主様と共に過ごし、公爵家の基礎を築いて下さったシルバーフェンリルが、あのフェンリルの森にいると考えていた。だがそうだな、タクミ殿の言うようにそれはもしかすると代替わりくらいはしていてもおかしくない」

「それに、あくまで漠然といるだろう、という推測や予想、想像を交えてでしたからな。父上も私も。そしてそれに満足し、確かめようとはして来なかった。クレアを除いて、だが……」

「私も、シルバーフェンリルに対する思いというのはもちろんありますが、レオ様がいて下さらなければ、確かめようとはしなかったと思います。実際に、タクミさんやレオ様と出会うまでは、フェンリルの森の近くにいながら、積極的にあの森に入って調査をしていませんでしたから」

「だが、それもティルラの病を治すために、一人で行ったのだがな?」

「それは……はい。ご心配をおかけしました、申し訳ありません」


 反省を促すように言うエッケンハルトさんと、謝るクレア。

 厳しく叱る、というわけではないけど一応注意しておこう、という程度のものだ。

 これまでも散々、クレアはあの時の事を反省していたからな、これ以上は過剰だろうな。


「してタクミ殿……クレアもそうだが、シルバーフェンリルがフェンリルの森にいる可能性が高いと見て、どう動くのだ?」


 エルケリッヒさんが、目を細めて窺う。

 目の奥に鋭い光があるように見えるのは、俺がどう考えているかを見極めるといった意図があるんだろう。

 こういう部分は特に、エッケンハルトさんとエルケリッヒさんが親子なんだなぁ、としみじみ思う。


「俺はもう決めています。もちろん、クレアや他の皆さんの意見も聞きつつですけど……フェンリルの森の奥まで調べてみたいと。ただ、危険な事をするつもりはありませんし、自分の身や周囲に危険が及ぶようなら諦めるか、別の手段を考えます」

「ふむ、そこまでしっかり考えているのであれば、私から言う事は何もなさそうだな」

「はい。シルバーフェンリルの事は気になりますが、あくまでできる範囲で調べてみよう、と思うくらいですから。もしかしたら、俺がこの世界に来た事と何か関係があるかもしれませんし」

「タクミ殿が?」


 納得した様子のエルケリッヒさんとは別に、窺うような視線をこちらに向けるエッケンハルトさん。

 クレアもこちらを見ている。


「なんと言いますか……ただの偶然、と言うには色々と揃い過ぎているんですよね。もちろん、だからと言って本当にそれが作為的で、偶然ではないとは言い切れないんですけど」

「ほぉ?」

「んー、確かに。僕もそれは思ったかなぁ。ジョセフィーヌさんがいて、シルバーフェンリルもいた森。そこに、シルバーフェンリルになったレオちゃんを連れた、ジョセフィーヌさんと同じ異世界からのタクミ君。タクミ君じゃなくても、何かあるんじゃないかって思うよねー」


 ユートさんの言う通り、全てが同じではないけど、こちらの世界に来てシルバーフェンリルと出会ったジョセフィーヌさんに対し、レオというシルバーフェンリルになった存在を連れていた俺。

 しかもフェンリルの森という広い場所ではあるけど、同じ地名の場所に異世界から来たというのはなんというか、偶然で片付けていいのかと迷ってしまうからな。


「まぁシルバーフェンリルを発見したとして、俺との事が関係しているかどうかわかる保証はないんですけどね。でも、偶然とも言い切れない何かがあるなら、それを探してみるのもいいんじゃないかなって」


 ユートさん曰く、知る限りでは元の世界に帰った人はいないらしい。

 だから俺も帰る事はできないと覚悟はしているし、クレアを置いて帰るつもりもない。

 そもそも、帰れるとしてもレオがどうなるか、という心配もあるしな……元の世界に戻っても、レオが今のままだったら向こうでは大騒ぎ間違いなしだ。

 犬だと言い張ったとしても、体の大きさだけでも無理があるし。


 まぁ、クレアにも話したように未練がないわけではないし、実際に選択肢が目の前に現れたら、迷わないとは思わないけど。

 ただ今の時点では、お世話になった人達に何も返さず、さっさと元の世界に帰るなんて事は考えられない。

 というより、クレアと離れるだなんて考えたくもない、というのが正直なところだし、この世界に根差すために歴史を学びたい、というのもある。


 またエッケンハルトさん達を楽しませて、クレアが恥ずかしがりそうだから、口にはしないが……。

 あと、変にクレアを心配させたくない、という考えもあるからな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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