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1908/1978

日を改めて一部の人が集まりました



「ふふふ、それだけで結構よ。ごちそうさま」

「うむぅ、なんとなくではあるが、セバスチャン達がこういうことを楽しむ気持ちが少しわかるな」


 微笑むマリエッタさんと、複雑な表情ではあるけどどちらかというと楽しそうとも言える表情のエルケリッヒさん。

 二人共、俺とクレアの反応を見て楽しんでいるんだろう。

 それはセバスチャンさん達を始めとした一部の使用人さん達も同様で、エッケンハルトさんもそうなので、誰も止める人がいない。

 ただルグレッタさんだけは、少しだけ目を伏せたり考える仕草をしているので、またいずれクレアと相談に乗った方がいいのかもしれないが……。


 それからしばらくは、皆にからかわれるという程ではないけど、微笑ましく見られながらもいじられて、夕食とその後のティータイムが終わって行った。

 おかしい、俺はシルバーフェンリルの存在する可能性や、フェンリルの森に今もいるかも、という話をしていただけだったのに……。

 結局、年齢や立場などで経験値が違うエッケンハルトさん達に、まだ付き合い始めたばかりの俺やクレアが太刀打ち……じゃない、誤魔化そうとしても上手くいかないって事がよくわかった。

 いや、ほとんど俺一人で対応して誤魔化そうとしていただけだったんだが。


 ……もしかしたら、誤魔化さずに堂々としていた方が照れや恥ずかしさといったダメージは少なかったのかもしれないな。

 堂々としていても、恥ずかしさなどはあるだろうけど――。



「さて、昨日はタクミ殿とクレアの様子を見て楽しんだが、今日は少し真面目な話だ」

「俺とクレアで楽しまずに、最初から真面目でいて欲しかったんですけど……」


 翌日、あれこれとやる事を終えて昼食が終わった後、慣れた様子で俺の使う執務室にやってきたエッケンハルトさん。

 俺からのジト目もそ知らぬふりで、表情を引き締めている。

 他に執務室にいるのは、何やら元気のない……昨日俺とクレアの様子を見て、それを自分に重ねたのかで悩んでいる様子のルグレッタさんはともかくとして。


 ユートさんとクレア、エルケリッヒさんもいる。

 話の内容はまぁ昨日の夕食時の続きらしく、主役はユートさんになるため、アルフレットさんやライラさんといった使用人さん達には、お茶を用意してもらった後に席を外してもらっていた。



「昨日は面白かったよねぇ。うん、僕も若い子達が青春をしているのは、見ていて顔が綻ぶばかりだよ」

「青春って……」


 俺は青春なんて言える歳じゃないような、ギリギリセーフなような……まぁどっちでもいいか。

 ただ実際に生きてきた年月はともかく、見た目年齢としては俺やクレアとそう変わらないどころか、少し幼い印象を受ける童顔のユートさんに、若い子達呼ばわりされるのは微妙な感覚。


「タクミ君達はこれからも期待して、楽しめるとして」


 楽しまないで欲しい、なんて考えてもエッケンハルトさんやセバスチャンさんを筆頭に、皆楽しむ気満々だから言っても無駄だろうな……。


「えっと……クレアちゃんは、タクミ君に僕の事は聞いているんだよね?」

「は、はい……」


 顔をほんのり赤くしながらも頷くクレア。

 引っ越し祝いでいいのか、と思うけどとりあえずクレアにはユートさんから伝えてもいいという許可があったので、ギフトの事や俺と同じ所から等々の事は伝えている。

 初代当主様、ジョセフィーヌさんの事やユートさんとの関係などもだな。


「だったら話は早いね。とはいえ、どこから話したものか……」 

 

 ニッコリとクレアに微笑むユートさんはすぐに、顎に手を当てて天井を見上げ、考えているようだ。


「そもそも、シルバーフェンリルに関して覚えている事ってどれくらいあるんだろう?」

「うーん、結構印象深いし、いずれはあの裏ボスを! って考えていたから、それなりに覚えてはいるんだけどね」


 相変わらず、シルバーフェンリルを裏ボス扱いするのは変わっていないようだ。

 まぁレオに向かって行く事は今のところないし、特に注意したわけでもないから変わる事はないんだろうけど。


「特にジョセフィーヌさん関連は、折に触れてハルト達にしたように、誰かに話してもいるし」

「ジョセフィーヌ……初代当主様の事ですね」


 初代当主様に付いて、クレアはやっぱり思うところがあるんだろう。

 公爵家に生まれたからというよりも自分が生き写しと言われる程にている事や、シルバーフェンリルへ特別な想いがあるからっていう方が強いのかもしれないけど。


「そう。まさかシルバーフェンリルと仲良くしているなんてって、強く覚えているよ」

「それまでに、シルバーフェンリルを見た事は?」

「あるよ。ただ、戦ったりとか仲良くなったりとかじゃなくて、遠くで見かけたくらいかなぁ。ただ、どうしようもない相手というか……絶対にかなわないって存在感は感じていたかな」

「絶対的な存在として、ってところか」

「まぁね。昔はね、今よりもっと魔物との距離が近かったんだ。当然ながら、危険とも隣り合わせって意味でもあるんだけど……」


 頷いて昔の事を話してくれるユートさん。

 この国を作るより以前、ユートさんがこの世界に来てすぐの頃は、人と魔物が棲んでいる距離が近く、いつ襲われてもおかしくなかったし、人が集まっていた場所に魔物が襲ってきて壊滅、なんて事も日常茶飯事だったらしい。

 その中で、シルバーフェンリルは人を助ける事があったり、逆に人を襲う事だってあったんだとか。

 もちろん人だって、何もせず魔物にやられるだけなんてわけじゃない。


 魔法なり、武器を手に取って対抗するわけだけど、一部の魔物は単体ですら凄まじい強さで敵わなかった。

 それこそ、国が魔物を倒すために集めた、または訓練させた戦闘集団……つまり軍を作っても対抗できない魔物もいたとか。

 ただそれでも敵わなかった魔物の中に、シルバーフェンリルがいて、さらにカッパーイーグルもいたらしい。

 カッパーイーグル、ラーレの事でもあるけど、空を飛べる魔物だし、人は基本的に空を自由に飛べないからっていうのもあったみたいだ。


 それでなくても、ラーレではないけど実際にカッパーイーグルが暴れて、国が一つ滅ぼされたなんて事もあったとか。

 以前、カッパーイーグルに関して聞いた話では、国一つを壊滅させる程の魔物、という話を聞いたけどもしかしなくてもその時の事が歴史なりなんなりで残っていて、そう伝わっているんだろうと思う。

 そのカッパーイーグルであるラーレは、日中はティルラちゃん達と遊んだり、空を飛んで散歩に行ったりとのんびりしているけど……まぁこれは、以前ユートさんが懲らしめたからっていうのがあるのかもしれないが――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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