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幸せな時間がもたらされました



「辛そうなお顔になっていました。私のために、タクミさん自身の想いを押し殺してそこまで考えて下さって、ありがとうございます。代替えとは思いません。自分勝手だとも。それを言うなら、私だって、今タクミさんが言ったように、自分自身の心の引っ掛かりを解消すれば、タクミさんの心も晴れるんじゃないかって、勝手な事を考えています」

「それは勝手じゃないと思うよ? クレアの心の引っ掛かりを解消できれば、俺も嬉しいから。きっと、心は晴れるはずだよ」


 これこそ代替えになるんだろうけど、自分自身にはできなくても、クレアの引っ掛かりを解消させたとして、自分への言い訳できるのかもしれないから。

 ただなんとなく、それはクレアの事を利用しているように感じて、多分実際そうで、だからそんな気持ちも隠さずクレアに話しておきたかったというのはある。


「……私には、タクミさんと違ってタクミさんの心の引っ掛かりを取り除く事はできません」

「まぁ、こことは別の世界での事だから。それは仕方ないよ」

「はい。でも、少しでも私の事を考えて、私のためと想って下さるタクミさんに報いるために、それから、タクミさんにもうあんな寂しそうなお顔をさせないように、心の引っ掛かりを取り除けるよう頑張りますね。多分それが、一番タクミさんに喜んでもらえる事でしょうから」

「俺と言うより、クレアが喜んでくれるのが一番なんだけど……そうかもね」


 というか俺、そんなに寂しそうな表情になっていたのかな? 自分では気付かなかったけど。

 でもそうか、こちらの世界でも優しい人はいっぱいいるけど、やっぱり俺の中ではお世話になった伯父さん達は、特別な優しさを感じていたから。

 それがもうなくて、俺から何も返せないのだから、語る中で寂しそうな表情になっていてもおかしくないのかな……心の中では、もちろん寂しさを強く感じていたし。


「ですから、二人で。よくタクミさんが言うように、私とタクミさんの二人で、笑っていられるように頑張りましょう。もちろん、苦しいのに無理に笑う必要はありませんよ?」

「ははは、そうだね。うん、クレアのおかげで……いや違うな。クレアが無理せず自然と笑ってくれれば、俺も笑っていられるはずだよ」

「私も、タクミさんが笑っているのが好きで、だから私も笑っていられると思います。ふふ、なんだか二人ともずっと笑ってそうですね?」

「そうだね。それはきっと、楽しい将来になりそうだ。もちろん、俺達だけでなく他の皆もね。笑顔のおすそ分けだ」

「はい。私達だけでなく、他の皆も……」


 無理に笑うわけではなく、苦しみは分かち合って、それでいて楽しい事嬉しい事がいっぱいで、二人で笑っていけるなら、それは必ず幸せな未来になるだろう。

 って、なんだか結婚の誓いみたいになっている気がするけど、クレアとならそんな未来を築けるって、根拠は曖昧かもしれないけど確信を持てる。

 もちろん、レオやリーザ、シェリー…他にもリーベルト家の人達や使用人さん達、それに従業員さんやこれから関わる人達も含めて、笑って楽しく過ごせたらいいなと思った――。



 ――とまぁ、改めて考えると恥ずかしいやり取りをしていたなぁと考えはするけど、なんとなく離れがたくてクレアに抱きしめられたままの恰好のままでいたんだけど……。

 何か、妙な視線を感じる。

 ただそれを確かめるためには顔を動かさないといけないため、今はできない。

 なんというか、今顔を動かすのは非常にまずい気がするから……床に座って、クレアに顔というか頭を抱き込まれている状態で、結構シュールな気がするのはさておき、その状態で動かすと色々とね、柔らかかったり柔らかかったり、そんでもって柔らかい物がね、あるから。


 ……柔らかいと何度も考えるのもそれはそれでアウトな気がするけども。

 顔を埋めると言うよりかは、おでこから頭頂部に掛けて当たっているというのが、救いなのかそれとも男としては情けなく感じても、残念というべきか……。

 っと、変な事を考えてばかりだとクレアに嫌われる可能性もあるから、程々にしないとな。


「えーっと……クレア。その、いつまでこのままでいればいい……のかな? あ、その、嫌とかではないんだけど……」

「あっ! す、すみません、タクミさん。苦しかったですか?」


 俺の言葉に、ババッと体を離して離れるクレア。

 ……残念とか、考えちゃだめだぞ俺。


「苦しくはなかったし、むしろ幸せなくらい……じゃない。変な事を言ってごめん。ただその、ずっとあぁしているのはちょっと照れ臭かったからね」

「そ、そうですよね。すみません。タクミさんを見ていたら、なんだか胸が締め付けられるような気がして咄嗟に。……でも、いつもは私がタクミさんに抱きしめられる側ですから、たまにはこういうのも悪くないかも、ですね?」

「う、うん……いつもはさすがにあれだけど、たまになら、ね?」


 あれってなんだあれって……。

 クレアを抱きしめるのは、時折忘れてクレアの頬が膨らむ事はあるけど、俺としても幸せな気分になるから悪くない、というかむしろいいというか。

 でもこういうのもたまには悪くないと思ってしまっている俺がいる。

 そういえばクレアは、リーザが泣いている時も抱きしめたりしていたっけ……ティルラちゃんがいるからか、根っからのお姉さん気質も少しはあるのかな? それとも母性的な部分というか?


 なんにせよ、男としては情けない恰好と思えなくもないので、本当に時折くらいで勘弁して欲しいところだ。

 じゃないと、俺自身がなんか駄目になってクレアに折れてしまいそうな感覚すらあった。


「ワフゥ……」

「キャゥ~……」

「……やっぱり、レオとシェリーだったか」

「あ、あら? レオ様とシェリーに見られているのを忘れていました……うぅ、恥ずかしい」


 頬がほんのり赤かったクレアが、真っ赤になって恥じ入るように俯く。

 さっき感じていた視線は、まぁずっと同じ部屋にいたんだから当然だけど、レオとシェリーのものだったようで、レオ達は何やら残念そうに溜め息を吐いていた。

 さすがに、見られたままでずっといるのはどうかと思うから、期待に沿えなくても仕方ないだろうに――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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