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1901/1980

自覚なく恥ずかしい事を言ってしまいました



「それでね、初代当主様と一緒にいたシルバーフェンリルがいないとしても、家族を大事にする種族であるなら、家族がいるかもしれないってね、思わない?」

「家族……そ、そうですね! 確かに……!」

「家族を大事にするというのがどう伝わってきているのかはともかく、それが伝わるための何かがあったんだと思う。つまり、子供がいる可能性が高いかなって」


 子供がいて、その子を大事にしているのなら、家族を大事にという部分も説得力があるし、伝わりやすい。

 まぁそれを誰が見てどう伝えたか、なんて疑問は残るけど。

 案外、初代当主様のジョセフィーヌさんが見ていたなんて事もあるかもしれない。


「本当に何度も言うようだけど、これは俺の推測で想像でしかない。けど、シルバーフェンリルがいる可能性っていうのはやっぱり高くて、今もフェンリルの森の奥にいるんじゃないかって思うんだ」

「タクミさんの話を聞いてしまうと、本当にそうだとしか思えなくなってきました。諦めようと、していたんですけど……」

「それは、森に行く時に皆を振り回してしまったから?」

「それもあります。でもそれだけじゃなくて、ずっと初代当主様の生き写しだ、生まれ変わりだと見られていた事で、何か変な期待をさせてしまっているんじゃないかって思っていて……なんと言いますか、これは私自身の呪縛のような物かなと。だから、諦めて振り切れば少しは解放されるかもと……ふふ、自分が楽になりたいだけかもしれませんね」

「そうは思わないけど……」


 本当の意味で諦められたら、それこそクレアは初代当主様とは違うという事を、何らかの形で宣言しようとしていたとかじゃないだろうか?

 今クレアの話を聞いていて、なんとなくそう思った。

 あと、フェンリルの森へ行こうとした時のように、感情に任せて周囲を振り回してしまう事への申し訳なさ、みたいなものも感じる。

 あの時は、あとでかなり後悔していたみたいだからな……。


「でもね、本当に諦めていいのかなって。諦めなくてもいいんじゃないかって俺は思うんだ」

「ですけど、もしかしたら諦めない事でまたタクミさんに迷惑をかけてしまうかもしれません。タクミさんだけでなく、レオ様やリーザちゃん、もっと他の人達にも……」

「まぁ、レオやリーザはクレアに懐いているから、多少の迷惑なら多分大丈夫だろうけど……俺が言う事じゃないかな?」

「ワフ、ワッフワフ!」

「キャゥキャゥ!」

「ほら、レオとシェリーもクレアが必要なら頼って欲しいってさ」

「もう……そんな事を言われたら、諦めようと思っていた私が馬鹿みたいです」

「ははは、馬鹿とは言わないけど、しなくていい苦労をしていたのかもしれないね。それに俺も……前にも言ったけど、綺麗な女性に頼られるのは、男としては嬉しい事だからね。それに今は、好きな人だ。思いを寄せる女性に頼られれば、もっと嬉しいくらいだ」


 男の見栄みたいなものだろうか……以前クレアには、綺麗な女性に――というのを、あれは確かフェンリルの森で夜の見張りをしている時に話をした際に言ったと思う。

 まぁ申し訳なさそうにしていたクレアを落ち込ませないため、元気づけるための言葉ではあったけど。

 でももしかすると、俺はすでにあの頃からクレアに惹かれていたのかもしれないな。

 じゃないとあんな言葉、素面で俺が言えるとは思えない……なんて今更ながらに思う。


「迷惑……はどういう物かにもよるけど、そうじゃなくて。迷惑とかではなく頼るって考えればいいんじゃないかな? そして、クレアに頼って欲しいって思う男がここにいる。レオやシェリーもそうだ」

「ワッフ」

「キャゥ」


 俺の言葉に同意するように、レオとシェリーも鳴く。

 けどレオ、俺の足の上に顎を乗せたままで横着しているから、全然頼もしくないぞ? クレアには、レオの心意気みたいなのは伝わっているようだけど。


「そ、そうですか……あ、ありがとうございます」

「キャゥ~?」


 俺の言葉を受けてだろう、何やらクレアが恥ずかしそうに俯くのを、シェリーがどうしたのかと見上げて窺っている。

 あれ、もしかしなくても俺、結構恥ずかしい事を……言ったな、うん。

 流れというか勢いで口にしたけど、今更ながらに恥ずかしい事を言ったのだと気づく。

 とはいえ言ってしまった事は仕方ないし、今更変えられないというか覆す気もない。


 本心からの言葉でもあるからな。

 ただちょっと恥ずかしいので、強引に話しを進めさせてもらおう。


「だ、だからえっと……以前のように急にというのは難しいかもしれないし、距離も離れちゃったけど。でも、またシルバーフェンリルを探しに行くというのはいいかもね。俺も、レオ以外のシルバーフェンリルに会ってみたいし」


 レオ以外のシルバーフェンリルがどうなのかとか、色々と気になる事もあるし……伝わっている話だけでなく、実際に目の前にしてみたいという気持ちは俺にもあるからな。

 フェンリルだけでなく、ラーレも認めている事から、レオがシルバーフェンリルである事は疑いようがないんだろうけど、それでもレオと本物のシルバーフェンリルに違いがあったりするのかとか。


「ですけど、やはり森には魔物もいますし、レオ様がいるとしても安易に私のためとして探しに行くのは、いい事なのでしょうか……?」


 と、ちょっと迷っている様子のクレア。

 俺の言葉に関しては、多分誤魔化せたようだ……上げた顔はまだ少しだけ、赤みがかっているけど。


「俺も見てみたいっていうのもあるし、魔物がいてもそうそう危険はないんじゃないかなって。ほら、俺だって鍛錬して戦えるようになっているし……もちろん、それで全てが安全になるわけじゃないし、油断するわけじゃないけど。それに、フェンリル達もいてくれるからね」


 フェリーを始めとしたフェンリル達がいてくれれば、森にいる他の魔物なんて物の数じゃない……と思う、多分。

 他に、フェンリル以上の魔物の話とか聞かないしな。

 一応、人を乗せてどこか離れた場所へ向かうフェンリルには、もしもの場合を考えて警戒するようにとは注意しているけど、あくまで念のためってだけだ。


 そもそも、フェンリルの森には他のフェンリルもいるわけだし、レオが以前行っていた雑魚扱いはともかくとして、絶対服従みたいな話にも今では信憑性があるからなぁ。

 友好的なのもそうだし、実際にフェリー達がレオの下で多くの人と仲良く過ごしているのがその証明だ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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