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1900/1997

シルバーフェンリルがいる可能性



「ははは、森での捜索で見つからなかったけど、シェリーを見つけちゃったからね」

「キャウ?」

「え、えぇ……あの時は本当に、何も見つからなければ伝わる伝承と公爵家としての戒めなどはそのままに、私個人が思う事はすっぱり諦めて、気にしないように努めるつもりでした。もちろん今も、できるだけそうするようにはしているのですが……」


 理由はわからないけど、公爵家で唯一クレアだけはエッケンハルトさん達と違って、シルバーフェンリルに対して特別な感覚があるのだとか。

 それが、ジョセフィーヌさんの生き写しと言える程容姿が似ているからなのか、血筋で何かあるのかとかはわからないけど……。

 森で捜索に行った時は、何もなければ諦めようとしていたクレア。

 でもフェンリルの森と呼ばれるように、実際シェリーというフェンリルがいた事で中途半端になっていたからな。


 実際にレオ以外のシルバーフェンリルを発見したわけではないため、どちらかといえば諦める方向で考えてはいたんだろうけど、初代当主様に関して伝わっている話には、フェンリルも登場するわけで。

 それで結局、完全には諦めきれなくなってしまっていたというところだろう。

 一応これまでも、折に触れてフェン達にシルバーフェンリルの事を聞いて、首を振られて諦めようとはしていたみたいだけどな。

 まぁシェリーだけでなく、レオというシルバーフェンリルが近くにいる事も影響しているんだろうけど。


 そう考えると、あまりクレアの近くにいない方が良かったのかも? とも思えるけど、今更だ。

 気持ちは変えられないくらい強いし、俺自身はクレアと一緒にいたいし、そしてレオも懐いているからな。

 俺が自分勝手に考えて、クレアの傍を離れようとする方が不自然だし、やってはいけない事のように思えるから。


「それで、今思いついたというか……もしかしてなんだけど、クレアのそれもフェンリルと同じように何かしらの理由が……シルバーフェンリルが何か関わっているんじゃないかって思うんだ」


 いやまぁ、シルバーフェンリルに対して反応する時点で、関わっていると考えるのはむしろ自然なのかもしれないけどな。


「こじつけかもしれないけど、フェンリルの性質に影響を与えるんだから、世代を越えて初代当主様の家系の誰かに、何かしらの影響を与える事もできるんじゃないかってね」

「そうですね、私に影響をという事ならば、むしろフェンリルの性質にというより楽にできそうな気すらします」

「んー、どちらが楽かはわからないけど……」


 世代を越えて、その血筋に何かしらの影響、もしくはメッセージとかかな? と思ったりするけれど、それを残すのは、フェンリルの性質を変えてしまうよりも難しい気もする。

 どこをどうしてそうできるのかはわからないから、ここでどちらが簡単でどちらが難しいかなんて、考えてもわからないか。


「クレアのその何かは、レオ以外のシルバーフェンリルを見つけたら解消されるかもしれないし、されないかもしれない。どういうものなのかはまだ判明していないけど……少しはシルバーフェンリルがあのフェンリルの森にいる可能性、というのが上がったと思えるかもね」

「でも、数百年前……私が生まれるよりももっとずっと前で、それこそ初代当主様が関係しているのなら、五百年近く前の事になります。今もいるのかどうかまでは……」

「そうかな? 俺がこの世界に来てすぐの頃に聞いた話を思い出したんだけど、シルバーフェンリルって家族を大事にする種族なんでしょ?」

「それは……はい。そう伝わっています。初代当主様の事があったからなのか、それとも初代当主様が家族とみなされていたのかはわかりませんが、そういう種族であると」


 どこからそういう話になったのかはわからないが、まぁ家族というか血筋というか……一族を大事にするというのは人間に限らずある事だからな。

 子供を産む雌が雄を食べるなんて特殊な生態の生き物もいるけど、レオやフェンリルを見る限り、シルバーフェンリルはおそらくそうじゃない。


「同じかはわからないけど、フェリーが親世代に話を聞いていたように、親と子で一緒に過ごしたりっていうのはあるはずで、それがシルバーフェンリルも同様でそれこそ人に近い意味で、家族を大事にするならやっぱり可能性は高いと思う」


 親しくなければ、大事にしていなければフェリーが親世代から色々話を聞いていた、という事もないだろうからな。

 レオも、家族というか周囲の皆を大事にしているし……。


「シルバーフェンリルがどれだけ生きるのかはわからない。フェンリルと同等に長寿なのか。それとももっとか……逆に、人間と同じくらいしか生きられないのかとかね」

「はい……どれだけ生きるかなどは、一切謎になっています」


 体が大きいから、強いから長寿、なんて事はないだろう。

 あくまで平均ではあって個体差はあるけど、犬なら小型犬の方が大型犬より寿命が長いと言われているし。

 ともあれフェンリルとシルバーフェンリルは似ていても違う種族だから、全く違う寿命を持っている可能性だってある。

 ただ家族を大事にとかの生態が近いなら、そこも似ているんじゃないかとは思うわけだ。


 というか、長寿だった場合はいつか俺がレオを置いていなくなってしまうんだなぁ……。

 マルチーズだった頃は、レオの方が先にいなくなるし、それは仕方ない事なんだと、実際にそうなった時俺自身がどうなるかはわからなくとも、覚悟はしているつもりだったけど。

 いや、今それをあれこれ考えても仕方ないな。

 余計な事を考えずにまずクレアとの話に集中しよう……と思いつつ、なんとなくこれまで以上にレオの事が愛おしく感じて、撫でる手が優しくなった。


「ワウ?」

「ん、なんでもないよ。――えっとそれで、どれくらい生きるかはわからないけど、可能性としてなら初代当主様と一緒だったシルバーフェンリルはもういないかもしれないよね?」

「そう、かもしれませんね。その、フェリーの親世代というのは?」

「あくまでも、フェリーの率いている群れに限りだけど、最年長はフェリーなんだそうだよ」

「そうですか……」


 フェンリルだってユートさんみたいに不老というわけじゃない。

 だからもう、フェリーの親世代……直接の両親も含めてもういないんだろう。

 長く生きているからか、それとも受け取り方や命に対する考えが人間とは違うのか、フェリー自身はまったく気にしていなさそうだったが。

 いなくなってからも、大分経っているのもあるかもな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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