フェリーから聞いた話と推測を交えて伝えました
「それで、フェリーの親世代っていうのは数百年前までにいたフェンリル達の事らしいんだ」
「数百年前……フェンリルが長寿というのはなんとなく聞いた事がありますし、シェリーの成長でもちょっと触れていましたが……」
「うん。ついでにフェリーが生まれてからどれくらいなのかとかも聞いたんだ。まぁ人間とは数え方がちょっと違うから、正確な年数はわからないんだけど……大体五百年近く前なんだよ」
「五百年近く……多少の差異があるとしても、そのくらいの頃というのは……もしかして!?」
「そう、実際にはズレるかもしれないけど、初代当主様がいた頃かもしれないってわけだね」
正確な年数はフェリーに聞いてもよくわからない部分があるから、もしかしたら時期としてはズレているのかもしれない。
けど大体五百年近く……人間とはスケールが違うから、数十年単位でズレたとしてもその頃にあった大きな事と言えば、やはり初代当主様の事が引っかかる。
ユートさんが建国したのが約五百年前、それからしばらくして、とは言ってもこちらは人間での尺度でしばらくなので、数年から十年程度のズレだろう。
建国した後に、色々と会った時代にユートさんが出会ったらしい、初代当主様とシルバーフェンリル……。
「他にも大きな事ってあったのかもしれないけど……フェンリルの性質に影響を与えそうなくらい、大きな事って言えば、多分その辺りなのかなって。俺の推測が多分に入っているけど、もしかしたら初代当主様、それか初代当主様と一緒にいたっていうシルバーフェンリル。そのどちらかか両方が関わっているんじゃないかってね」
「成る程、言われてみるとそうかもしれませんね。私も含め、フェンリルのような強大な種族全体に対して、性質が変わる程の影響というのは簡単にできる事じゃありません」
「そうだね。フェンリルの強さとかを見る限りだと、それこそ国を挙げて取り組んでもできるかどうか……みたいにも思うし」
ユートさん抜きで考えればだけど、エッケンハルトさん達の話からすると、現在屋敷にいるフェンリル達だけでも、この国の人としての戦力を軽く越えているんじゃないか、ってくらいだし。
しかもフェンリルの数はもっともっといるわけで、そんな種族全体に影響を与えるなんて……獰猛で荒々しい性質だったのなら、特に武力なども当然のように必要そうではある。
そのフェンリル達をねじ伏せて、というのは人聞きが悪いかもしれないけど、性質そのものを根底から変えるなんて、そこらの人が集まった程度ではできそうにない。
もしかすると、国の人達をまとめてもできるかどうかも微妙だ。
まぁある程度友好関係を築く、とかはまぁできなくもないかもしれないけど、そもそもに性質を変えるなんて事ができるとは思えないしな。
「時期的にももしかしたら合っているかもしれない。そして、フェンリルの性質を変える程に影響力があって、さらに言えばフェンリルが従うに足る程の存在でなければいけない、と思うんだ。そこから考えられるのは……」
「初代当主様……いえ、シルバーフェンリルの存在、ですね」
「そう。もしかしたら、初代当主様と一緒にいたシルバーフェンリルがそうしたんじゃないかって、俺は考えたんだ。確証はないんだけどね」
「でも確かに、シルバーフェンリルであればそれも可能な気がします。シェリーもそうですが、フェリーやフェン、リルル……私達がこれまで見た事のあるフェンリルは全て、レオ様には絶対的に従う様子を見せていますから」
「まぁ、出会って早々にひっくり返ってお腹を見せて降伏のポーズとかもやっていたしなぁ」
フェンリルの森で、フェンやリルルと出会った時など、まず真っ先にやったのがレオに対しての服従の意思を見せる事だった。
それだけ、フェンリルにとってシルバーフェンリルは特別な存在って事なんだろう。
あれだけ強力な力を持っているのに、レオにとっては雑魚と言い切れるくらいだからな……シルバーフェンリル、どれだけなんだよって話。
まぁこの世界で本当の意味で最強と言われているし、ユートさんも裏ボス扱いするくらいだからなぁ。
裏ボスと言えば、ゲームとかでは事実上の最強の存在とかだし……いや、レオを裏ボス扱いするのはどうかと思うけど。
俺にとっては相棒だし、決して敵にして戦う相手じゃないから。
「ワフ」
当然とでも言うように鳴くレオ。
この世界に来てすぐの頃、フェンリルの森に行く事に対して話を聞いた時の事を思い出した。
どれだけのフェンリルが襲ってきても、レオがいれば絶対安全って事だったな。
「レオにとって、というかシルバーフェンリルからすると、フェンリルも……それこそラーレのようなカッパーイーグルであっても、恐ろしい相手とかではないみたいだから、そう言うこともできるんじゃないかなって。つまりそれは、レオ以外にもシルバーフェンリルがいた事の証明……になるかはともかく、確かにいたと考えられるんじゃないかなって。もちろん、初代当主様の話や、公爵家に伝わっている話を疑うわけじゃないけどね」
ジョセフィーヌさんの話はユートさんからも聞いたし、シルバーフェンリルの存在を疑っているわけじゃない。
けどこれまで、あまり存在していたと感じられる事が少なかったからな。
フェンリルが今のように穏やかで友好的になったのが、もしシルバーフェンリルや初代当主様の影響であるのなら、その存在感は俺の中で以前より大きくなる気がした。
それとクレアが特別視しているのか、シルバーフェンリルの話になると胸が弾むというか……いや、物理的な意味ではなく、気にしないようにしても気にしてしまうことにも繋がるんじゃないかってね。
「存在は確かにしていた、という話はよく聞きますしリーベルト家にも伝わっています。けれど、口伝や伝承以外ではこれまでほとんどそれらしい事がなかったので……これは新しい発見になるかもしれません!」
「俺の推測が多分に入っているけどね……」
「いえ、話を聞く限りではそのような事ができるのは、シルバーフェンリル以外にあり得ないとすら思います。もちろん、私を含めた公爵家の人間が特別視しているのもあるでしょうし、私は特にそう思いたいという意識もあるとは思いますが。もう諦めるつもりでいたのですが……」
シェリーを見ながら、少し懐かしむようにクレアがそう言った――。
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