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1898/1997

レオを甘やかしてみました



「私は、そんなレオ様のお姿を一度見てみたいとは思いますね。このシェリーよりも、小さかったのは話には聞いていてもやっぱり想像がしづらいです」

「今とは全然違うから、そうかもね」


 大きさだけでなく、以前は垂れ耳で今は立ち耳だし、毛質からノズルの長さや体格も違うからなぁ。

 もはや別もので、俺もこちらに来て目の前にいるレオを、マルチーズだったレオだとすぐにわかったのは不思議なくらいだ。

 声質は違うけど、鳴き方や仕草が、マルチーズだった頃のレオを思い出させるから、と言うのはあるかもしれないが……体の大きさに伴って、スケールはアップしたけど仕草などは大きく変わらないようなきもするしな。


「まぁ俺も、以前はレオを抱き上げている事が多かったし、レオもよくせがんできたからね。あれがないというのは少し寂しいくらいだけど……」


 俺にくっ付いているか、抱かれているか、それとも膝の上に乗っているか。

 一緒にいる時はずっと付いて回っているくらいだったからなぁ、シェリーを抱いて撫でているクレアを見ていると、あの頃の事を思い出してちょっと寂しくなったりはする。

 そういう時は大抵、こちらのレオを撫でて変わらない喜びの反応を見て、満足しているんだけど。


「キューン……」

「ははは、どうした? 以前の事を思い出したのか?

「ワッフ」


 突然レオが、椅子に座っている俺の膝の上にひょこっと顎を乗せた。

 重さはほとんど感じないから、ただ乗せている雰囲気にしているだけなんだろう。

 話していて、マルチーズだった頃の事を思い出したのかもしれない。


 まだこの世界に来て間もなく、クレアとすら出会う前には川辺でレオが座っている俺の足に顎を乗せたり、なんてのもあったけど、最近はあまりやっていなかったからな。

 これもレオの成長……ではなくリーザといたりして、あまり機会がなかっただけだろう。


「でもそれだとちょっと体勢的にきついだろ? ん……っと。これで、顎くらいは乗せられるだろう」

「クゥーン。ワフワフ」


 ただレオと俺の大きさの違いから、人間で言う中腰になっているようなものなので、ずっと体勢を維持しているのは辛いかもと、椅子から離れて床へとじかに座る。

 あぐらをかき、その上に伏せをしたレオがお礼を言うように鳴きながら、ゆっくり軽く顎を乗せて、尻尾を振る。

 ついでに撫でてやると、ものすごくご満悦な様子だ。

 今日は俺がフェンリルを撫でるところを見ていたのもあるし、甘えたかったのかもな。


「ふふふ、タクミさんの前ではレオ様もシェリーとあまり変わらないですね」

「ワフー、ワフワフ」

「ちょっと心外みたいに言っているようだけど、クレアの言う通りだからなレオ? まぁ、レオはそれでいいんだけどな」


 シェリーと変わらないというのは、レオとしてはあまりお気に召さないようだけど、やっている事は大差ないからな。

 でも、それでこそレオだし、立派にはなったと思うけど甘えられないのもそれはそれで寂しい気もするから、これでいいと思う。


「ほらほらー、嫌がっているとこれもなくなるんだぞー?」

「ワ、ワフゥ~」


 やはり構われて、さらに撫でられるのには逆らえないようで、抗議するように鳴いていたのはどこへやら、ゆっくりと尻尾を振りながら気持ち良さそうに鳴くレオ。

 うむ、レオはやっぱりこうでなくてはな。

 シェリーも、クレアに抱かれつつ撫でられてご満悦なようだし。

 そんなわけで、少しの間レオやシェリー、クレアと共に和やかな雰囲気で過ごした。


 他に人がいれば、微笑ましく見守ってくれていただろう、心休まる時間になったかな。

 森の調査だなんだで、気を張っていた部分が解れて行くような気もした。

 ただ、俺の真似なのかクレアも椅子から降りて床に直座りになったのは、ちょっと申し訳ない気がした。

 この世界の人達は、地べたに座るとか慣れていないのに……まぁクレアとシェリーが楽しそうだからいいんだろうけど。


 でも……そういえば、まだ話しておかないといけない事があったような……?

 何か、クレアに話しておこうと思った事が……あぁそうだ。

 フェリーから聞いた話で、もしかしたらレオ以外のシルバーフェンリルに繋がる可能性のある事があったんだった。


「そういえば、フェリーと話していてちょっと気になる事を聞いたんだ」

「気になる事ですか?」


 それぞれに、レオとシェリーを撫でて構いつつ、世間話というわけではないけどあまり深刻にならない風に切り出す。


「あくまで、話しを聞いたうえで俺の予想とか推測も混じってなんだけど……フェリーの親世代。かなり古い話になるみたいだけど、その親世代のフェンリル達は、フェリー達よりも荒々しい性質だったらしいんだ。それこそ、実際に今のフェンリルを見た事のない人が考えている、獰猛な魔物って言う感じで」


 群れとしては、今のようにフェンリル同士は基本的に争わない、少なくとも群れの中では争わないようにはなっていたみたいだ。

 けど、人間も含めて群れの外に対しては攻撃的だったというか、決して友好的ではなかったという話だったからな。

 もしかしたらレオがいなくて、その頃のフェンリルと会ったら有無を言わさず襲われていた、とかもあり得そうだ。


「荒々しい……場合によってはそうなりますが、シェリーを始めこの屋敷にいるフェンリル達を見ていると、そんな風には全然思いません」

「うん。俺もそうなんだけど、でも昔は違ったっていう事みたいだ。フェリーも今のようになったというか、生まれた時からかもしれないけど、実感としてそうだったという感覚はあまりないみたいだね」


 狩りをする時なんかは、当然だけど荒々しくはなる。

 けど普段だとかなり穏やかで、獰猛な種族と言うのが全く信じられないくらいだから、クレアの言うこともわかる。

 俺なんて、レオやシェリーがいるから特にだが、フェンリルって元々友好的で親しみやすい……こう言っていいのかはわからないけど、警戒心の強い野生の狼というよりは、人懐っこい犬みたいな感じに思っていたくらいだしな。


「まぁフェリーが生まれた頃からなのか、その前か……それとも生まれた後に変わっていったのかはわからない。フェリーとしても自分が親世代に聞いた話と、今とでの違いはあまりよくわかっていないみたいなんだ」


 徐々になのか、それとも急に変わったのかまではわからないが、少なくともフェリーは以前の荒々しかったという性質を知らないようだったな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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