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1897/1996

クレアにシェリーの成長の話をしました



「いやぁ……俺一人で考えても良さそうなのは出てこなかったでしょうし、思い立ったが吉日と言いますか、クレアに相談しにいったらちょうど他にも人がいてその流れで……」


 あの日、アルフレットさんにできるだけ早く決めた方がいいだろう、と釘をさされてすぐにクレアに相談しに行ったからなぁ。

 これまで二の足を踏んで、全然決める素振りがなかったのに、一日どころか数時間で決まったと聞かされたら、アルフレットさんとしてはあまり面白くないだろう。

 というか、もしかしたら何か意見というか案みたいなのがあったのかもしれない。

 ライラさんは一緒にいたけど、アルフレットさんも連れて行った方が良かったなぁ、と言外に責める様子のアルフレットさんからの視線を感じつつ思った。


 事後報告のようになってごめんなさい、なんて心の中で謝りつつ、相談して決めた屋号はこれで決まりで良さそうだ。

 ちょっと肩の荷が下りた気分でホッと息を吐きつつ、その後もしばらく書類整理やら確認の仕事を続けた。

 アルフレットさんは大きな不満というわけではなかったようで、すぐにいつもの様子に戻った――。



「どうぞ」

「失礼しますっと」

「ワフ」

「キャウー」


 仕事を手早く済ませ、再び訪ねるクレアの執務室。

 クレアの方も今日の仕事は終わっていたようで、窓の傍で椅子に座り、シェリーを膝の上に乗せてくつろいでいたようだ。

 そのシェリーから歓迎の鳴き声を受けつつ、レオと一緒に中へと入る。


「キャウー」

「あ、シェリー!」


 クレアの膝の上から、飛び出したシェリーがこちらに駆けよって来る。


「おぉ、よしよし」

「キャフ!」


 ワシャワシャとシェリーを撫でてやると、嬉しそうに尻尾を振っているな。


「まったく……タクミさんに懐いているのは見ていて微笑ましいですけど、少しだけ妬けますね」

「キャウ? キャゥ、キャゥ!」


 それはどちらに、というのは聞かない方がいいんだろう。

 ともあれシェリーは、撫でられながらもクレアの方に顔を向けて何やら弁解するように鳴いた。

 シェリーはクレアの従魔であって、リーザのように獣人ではなく、ティルラちゃんのようなギフトを持っていないから何を言っているのかはっきりわからないけど。

 でもなんとなく、クレアの事も好きだと訴えているような雰囲気だな。


「ふふ、わかっていますよ。タクミさんもレオ様も、私も皆好きなんですねシェリーは」

「キュウ」

「ははは、相変わらず仲良しだ」


 俺に撫でられつつも、微笑むクレアを見上げるシェリー。

 仲がいいのは、両親も含めて多くのフェンリルが近くにいるのに、リーザやティルラちゃんと遊ぶ時以外は、基本的にクレアと一緒にいるのが物語っているだろう。


「キャゥ~?」

「ワフ、ワフワフ。ワウ」

「キュゥ」


 その後、すぐにレオの元へと行ったシェリー。

 お互いの鼻先を触れ合わせ、何やら会話をしているようだ。

 レオの声から察するに、リーザがいない事をシェリーが聞いているっぽいな。

 遊び相手として、リーザはティルラちゃんと同じくシェリーにとってはお気に入りみたいなものなんだろう。


 というか、ランジ村でお婆さんの所にいたジョシュアちゃんと会った時もそうだけど、鼻先をくっつけるのはレオなりというか、フェンリル達も含めたコミュニケーションなんだろう。

 野生の狼や犬だと、お尻の匂いを嗅ぎ合うとかはよく聞く話だけど……こちらの世界では、フェンリル達が鼻先をくっつけて会話っぽく鳴いているのをよく見かけるからな。

 まぁそっちはいいとして……。


「それで、タクミさん。どうされたんですか?」

「あぁうん。特に相談とかがあるわけじゃないんだけど……一応、クレアにも話しておこうと思って。フェリーから聞いた話なんだけど……」


 シェリーの今後、というかこれからの成長について、クレアには話しておいた方がいいだろうからな。

 特に秘密とかではないので、そのうち他の人達にも話す事になるだろうけど。

 そう思って、クレアに促されて向かい合うように椅子に座りながら、フェリーから聞いたフェンリルの成長の話をしていく。

 というか、子供のフェンリルが兵士さん達を乗せて走る練習をした時、エッケンハルトさんも含めて話しておいても良かったんだけど……忘れていた。


「成る程……。シェリーはもう少ししたら、しばらく成長が止まるのですね」

「そうみたいだ。もう少しくらいは大きくなるようだけど、しばらくは抱き上げる事もできるままみたいだよ」

「ふふ、ティルラはいつか大きくなったシェリーに乗ってみたい、と言っていたので少し残念がりそうですね。でも私としては、こうして抱き上げる事ができるのは嬉しいです」

「キャゥー?」


 てこてこと、レオとの会話? を終えて足元に戻って来たシェリーを、クレアが抱き上げる。

 出会った頃より少し大きくなって、重くはなっているようだけど。

 正確な大きさや重さは計っていないが、シェリーの大きさを例えるなら、出会った頃がちょっと小さめのコーギーくらいで、今は柴犬に近いくらいになっているかな。

 これからさらに成長したら、大人の中型犬と大差ないくらいになるのだろうか。


 どれくらいになるか次第だけど、なんとか女性でも抱き上げられなくはない……かも? というくらいだと予想している。

 まぁこちらの世界での女性は米袋ならぬ、小麦袋一つくらいは難なく運ぶ人が多いので、中型犬くらいであれば、大きさ的にも問題なく抱き上げそうではあるか。


「近くに多くのフェンリルがいますから、いずれシェリーもあのように立派に……とは思うのですけど、やっぱり出会った頃からのように、こうして抱き上げられるくらいの大きさのままで、とも思ってしまいますね。もちろん、シェリーに成長して欲しくない、というわけではないですけど」

「そうだね。俺も、レオには以前の頃のような小さな姿を懐かしく思う事もあるよ」

「ワウ!? ワ、ワウゥ……?」

「ははは、レオが大きくなったのが嫌とかじゃないんだぞ? それで助かっている事も多いしな。ただちょっと、シェリーみたいに抱き上げていた頃があったって、懐かしく思うだけだからな」

「ワフゥ」


 ホッと息を吐くレオ。

 レオが大きくなって、そりゃまぁ不便な事っていうのももちろんあるんだろう……街に行った時はもちろん目立つし、お店の中には入れないしな。

 けど、そのおかげで色々助けてもらっている事の方が多いから、小さい方が良かったとまでは思わない。

 どちらもレオだからな、という気持ちを込めて体を撫でた――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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