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1891/1997

レオがいなくても街でのフェンリルの評判は良さそうでした



「馬車の件はわかったが、街の方ではどうであった?」


 とりあえず、フェンリルに色々と協力してもらうにあたって、新馬車の完成と量産はできるだけ急ぐ必要がありそうだという事で決着がつき、エッケンハルトさんはさらに別の質問を投げかけた。


「はっ。街の者達はフェンリルと共にいる、というのを見ると協力的な者が多かった印象です。その、公爵様にこれは言いづらい事ではあるのですが……」

「よい、言ってみろ。フェンリルに関する事だ、何か公爵家に対し不満があるだろうくらいは予想している」

「も、申し訳ありません! 公爵家に対して何か、という事ではなく……我々が公爵家の命を受けて動いている、というよりも、フェンリルと協力している。共にいるという事が、街の者にとって重要な様子でした。決して、公爵家に対する不満などがあるわけでなありません!」


 エッケンハルトさんの言葉に、直立不動になった兵士さん。

 言い辛そうに言葉を濁したのが、エッケンハルトさんに間違って伝わり、それがさらに兵士さんを委縮させてしまう事になったんだろう。

 エッケンハルトさん本人には、そんな意図は全くなく、兵士さんの反応を見て苦笑しているくらいだけども。


「街の者にとっては、公爵家よりもフェンリルの方が重要、か……タクミ殿の評判は、それだけラクトスに浸透しているのだろうな?」

「いや、俺じゃなくてレオとフェンリルだと思いますけど……」


 自嘲するような笑みを浮かべて、俺に視線を向けるエッケンハルトさん。

 だけど、評判という意味では目立つレオとフェンリル達に対してであって、俺にではないと思う。

 レオがシルバーフェンリルだって事や、多くのフェンリルがラクトスを通って住民に見られているし。


「あ、いえその……さらに一部の者となりますが、タクミ様の名を出す者もそれなりにおりました」

「え……そうなんですか?」

「はい。多くがタクミ様に感謝を述べる言葉などが多かったと、他の者も言っておりましたし、私も同様に耳にしました」

「そ、そうですか……うーん、あんまり街のために何かをしたりはしていないんですけどねぇ」

「タクミさんのおかげで、ラクトスに蔓延しかけていた疫病も収まりましたし、薬師というのも広まっていますからね。カレスの店で売り始めた薬草や薬は、タクミさんの手によるものとラクトスに住まう者なら多くが知っています。レオ様と仲良くされている姿もそうですが、タクミさんのおかげで、ラクトスそのものが変わろうとしているのもあるかと思いますよ?」

「やはり、私の見た通りタクミ殿の評判で間違いないようだな」

「えっと……」


 笑顔でそう言うリーベルト親子に対し、なんて返したらいいかわからず頬をかく。

 もちろん、薬師としての評判が広まっているとしても、カレスさんの事だから『雑草栽培』の事などには考えが及ばないようにしてくれているんだろうけど……なんというかちょっと照れるな。


「あとそうでした、後続の輸送隊の物資と共にですが、タクミ様にお渡しする物を街で受け取りました」

「俺に、ですか?」


 なんだろう、街で買い物をするならまだしも、プレゼントみたいにものを受け取った事はないし、そんな事があるとは思っていなかったんだけど。

 レオを連れて、大通りの屋台で飲み食いしていると、おまけをしてくれる店主さんとかはいたけども。


「街の者達の多くが、耳の付いた帽子を使用しているのですが、その新作だそうです。是非リーザ様にとの事で……」

「あぁ、成る程……あの帽子ですか」


 これは俺というより、リーザがきっかけの事だな。

 耳を隠す帽子は、ラクトスですっかり流行ってしまって、今では街中を歩けばどこでも見かける程、多くの人が使っている。

 獣人ではない街の人達が、耳隠しのための帽子……早い話が獣耳っぽい装飾の付いた帽子を被るのは同なんだろう? と思わなくもないけど、楽しそうに受け入れられているからそれでいいんだろう。

 まぁリーザやデリアさんなどが、その帽子を被って街の中を歩いていても、目立たないという意味でも、悪くないと思うけど。


 気を隠すなら森の中、みたいな感じかな。

 ……とはいえ尻尾もあるから、完全に隠せなかったりもするがそれはいいか。

 ちなみに、ラクトス方面で集められてランジ村に来た調査隊の中でも、その耳隠しの帽子……というよりもう、ただの耳付き帽子か。


 それを持っている人がいたりもして驚いた。

 プレルスさんも持っていてさらに驚いたりもしたけど、男女関係なく受け入れられているという事だろう。


「というか、その品物というか新作を渡してきたのって、ハルトンさんですね」

「私が直接受け取ったわけではありませんが、確かそのように名乗っていたと聞いております」

「やっぱりですか。わかりました、後続の輸送隊が到着したら受け取っておきます」


 新作と言って耳付き帽子を渡してくる人は、他に思い当たらないしな。

 スリッパの時もそうだったけど、身に着ける物の機能性だけでなくデザイン性なども考えている人だから、新しいデザインの物を作ったって事だろう。

 多分その確認のためにとかだと思う。

 帽子の方は、耳を隠せる何か……みたいな話をした程度で、むしろ耳の形の物を取り付けて隠そうと作ったのはハルトンさんと、その店の人達だから、俺に確認する必要はないんだけど。


 スリッパみたいに、発案者契約みたいなものを結んだわけでもないのに。

 まぁ、リーザが喜ぶと思ってやってくれた事、と考えれば悪い気はしないか。

 ティルラちゃんも気に入っているから、そちらへのプレゼントも見越しているのかもしれない……と考えると、公爵家への献上品みたいに思えるかな。


 無償というのは申し訳ないので、そう考える事にしよう。

 あと、ハルトンさんにはいずれお礼を伝えるのと、何かお返しを考えないとな。


「しかし、これでは公爵家が治める領地の街なのに、我々は形無しだな」


 俺と兵士さんのやり取りを見つつ、苦笑ではなく単純に面白いといった表情でエッケンハルトさんが言った。


「ふふふ、公爵家としては、シルバーフェンリルのレオ様とそのレオ様と一緒にいるタクミさんが、公爵家より皆に良く思われている事は、喜ぶべき事だと思いますよ、お父様」


 エッケンハルトさんだけでなく、クレアまでそんな事を言い出した。

 さすがにクレアは、エッケンハルトさんのように面白そうとか、茶化そうみたいな雰囲気ではなくただ本当に喜ばしいと思っているのか、微笑んでいるだけだけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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