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1888/1997

子フェンリル達は練習が必要そうでした



「ワフ、ワフワフ」

「ん?」


 と、撫でていたら何やらレオから訴えかけられる。


「ワフゥ、ワッフワフワウ」

「ふむふむ、成る程な。レオが注意し過ぎたんじゃないか?」

「ワウー。ワフガウワッフ!」

「ははは、そうだな。ありがとうレオ」

「ワフウ!」

「ともあれ、それはエッケンハルトさんと相談だな。調査はできるだけ早い方がいいし、すぐに出発するかどうかだと考えていたけど……」


 レオから伝えられたのは、子供のフェンリル達が注意された事を受けて、人間を乗せて走る事に少し不安を感じているとの事だった。

 初めての事ばかりだから、注意しておいて損はないしお互い嫌な思いやすれ違いを失くして、親しくなるためでもあるから仕方ない事だし、本当にレオが言い過ぎたって事はないんだろうけど。

 ちなみに不安を感じているのは三体のうち二体で、残り一体はむしろ自信満々でそれがレオとしては逆に大丈夫なのか? と思ったとか。

 その自信満々な一体は、一番威勢が良かったのだな……ちょっとやんちゃっぽい印象だ。


 まぁ無茶な事や、興奮し過ぎたりしないように大人のフェンリル二体ついて行って、ちゃんと見るという事みたいだから、大丈夫そうではあるけど。

 ともあれ、人を乗せる事に不安がある……とは言っても、村や児童館の子供達と遊んでいる時に乗せた事はあるだろうけど、この場合は乗せたままで長距離走る事に対してだな。

 そうならば、練習すればいいわけで、出発を急ぐか次第にもなるからエッケンハルトさんと相談しようってところだな。

 というわけで、フェリーとの相談も終わったし報告ついでに話をしてみるため、エッケンハルトさんのところへと向かった。


「すみません、エッケンハルトさん。すぐに出発できなくて」

「なに、タクミ殿が謝る必要はない事だ。気にするな。それに、馬を使うよりもかなりの日数が短縮されると予想されるわけだからな。少しでも早い方がいい事は確かだが、必ずしも急いで今日中に出発しなければいけないわけでもない。それに、ちょうど良いしな」

「そうですね。お父様が急がせた別の調査隊が到着する予定ですし、出迎えるのなら、こうして屋敷の外に出るのもついでになりますから」

「うん、そうだね」


 あれからすぐエッケンハルトさんのところへと相談に行く途中、屋敷の中で仕事を終えたクレアと遭遇。

 諸々の話を伝えつつ、客間から厨房につまみ食いをしに行ったというエッケンハルトさんの情報を使用人さんから聞き、クレアと一緒にそちらへ。

 レオやリーザも一緒だ。

 ヘレーナさんが困りつつ、味見なら……とつまみ食いをしようとしていたエッケンハルトさんを捕捉し、クレアが注意して連れ出し相談した結果、ランジ村の外で調査隊を待つついでに、フェンリルの騎乗訓練をする事になった。


 ちなみにクレアの注意は、子供のフェンリルに対するレオの注意とは違い、叱るようなものだった事は仕方なかったと思っておこう。

 あまり貴族らしからぬエッケンハルトさんではるけど、さすがに小腹が空いたとしてもわざわざ厨房で料理人さんを困らせながらのつまみ食いはなぁ……。


「ガルゥ! ガルガル!」

「グルゥ、グルル!」

「ギャウ~……」

「ギャフ……」

「ガフ……!」


 そんな話をしている俺達の目線の先では、引率というか荷物を運ぶ係のフェンリル二体とフェリーが監督して、子供のフェンリル達への指導が行われていた。

 調査に行く兵士さんが背中に乗っているけど、今は途中で楽しくなったのか走る速度を上げすぎて叱られているところみたいだな。

 乗っている方の兵士さん達は最初、フェンリルに乗る事に対して及び腰だったりもしたけど、今はしっかり掴まっている……まぁ、振り落とされないようにって事だと思うけど。


 そちらの兵士さん達からは時折「ぐ、ぬ!」や「おぉぉぉぉ!」だの「これは中々、むむぅ……!」といったうめき声のような声が漏れ聞こえて来ていた。

 距離もあるしフェンリル達の鳴き声で、ほとんど聞こえないけど。


「子供のフェンリルとは聞きましたけど、それでもやはりフェンリルなのですね。荷物は載せていませんが、その分重量のある装備で人が乗っているのに、走るのは軽快です」


 子供のフェンリルの背中に乗っている兵士さん、カッフェールの街を目指す調査隊の人だけど、その人達は皆、重装備と言える状態だ。

 一応荷物として運んできてはいるけど、調査隊の人達は基本的に部分鎧を身に付ける程度の軽装で統一されていたんだけど、荷物を載せる代わりに重い物を身に付けて、フェンリルに負荷をかけての練習という事で、そうなっている。

 金属の全身鎧にフルフェイスの兜……そのおかげで兵士さん達の表情がどうなっているのかは見えず、漏れ聞こえて来る声で察するしかないわけだけど。

 さらに左右の腰辺りには剣が二本ずつ下げられており、背中には二本の槍が十字になるよう背負われていたりと、これからどこかに戦争へ向かうのか? といった装いだ。


 多分俺が同じ装備を身に着けたら、歩くのも一苦労だろなぁというくらい重そうだけど、それにもかかわらず子供のフェンリル達の足運びは軽快だ。

 軽快過ぎて、時折速度を出してしまい叱られたりしているんだけどな。

 叱られてちょっと落ち込んだ様子の表情をしているフェンリルでなく、やる気に満ち溢れたフェンリルにもう少し慣れた様子で兵士さん達が乗れるようになれたら、完全に騎馬ならぬ騎狼隊と言えるかもしれない。


「そうだね。フェリーも言っていたけど、あれだけ体が大きくなる頃には体力的にも大きく違いはなくて、人や重い荷物を載せても走り続けられるみたいだし」

「やはり、レオ様が不安に思ったように、気が付くと速度を出してしまう事が少々問題のようだな」

「ワフ」

「ガンバレー!」


 クレアに答える俺の横では、走る様子を見て頷きながらお座りしているレオと話すエッケンハルトさん。

 リーザは監督役のフェリーに乗り、走る子供のフェンリルに声援を送っている。

 それはいいけど、リーザの声に刺激されて威勢の良いフェンリルがまた速度を上げたなぁ……声に押されて調子に乗るとか興奮したんだろうけど、応援もほどほどにした方がいいのかな?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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