レオの真実にフェリーが驚いていました
フェリーが親世代から聞いた今と昔の違いとして、親世代の頃は同種族で群れを形成するのは同じだけど、多種族は絶対に受け入れず、むしろ狩る対象になる事が多かったらしい。
多種族にはもちろん人間も入っているわけで、だからこそフェンリルは獰猛だという話が今も伝わっている可能性もあるな。
これまで、ジョセフィーヌさん以外でフェンリルと親しくしていた人間は、俺の知る限りではいなかったみたいだし。
知らない所では、もしかしたらいるのかもしれないけど。
「成る程なぁ。それじゃあ、フェンリルが大人になるのは大体どのくらいかかるんだ?」
シェリーの体の成長が止まるのが一年くらいだとしたら、子犬が成犬になるのと近い。
犬の場合、成犬と言えるのは大体生後一年くらいで、大型犬でも長くて二年くらいだからな。
まぁシェリーの場合は大人になるのではなく、一旦成長が止まるだけで子供のままのようだけど。
「グルゥ……グル、グルルグルゥ」
「ふむふむ。大体十年から二十年ちょっとってところか……結構幅があるんだな。これは人間の俺だからそう思うのかもしれないけど」
フェリー達の数え方で、早くて四千を数えるくらいから、その倍近くまで数える事もあるようだ。
一つが一日だとしたら、十年近くから二十年くらいと考えて良さそうだ。
幅が広いと思うのは、百年そこらのフェンリルから見たら短命な人間だからそう思うのかもしれない。
必ずしも長寿だから気が長いというわけではないだろうが、数百年を生きるとするなら十年も二十年も大きな差には感じないのかもな。
この辺りの感覚は、俺よりもユートさんならフェンリル達に共感できるかもしれないが。
あと、生まれてから一年程度で止まった体の成長は、そこからさらに五、六年くらいで再び大きく成長を始めるそうだ。
リーザやティルラちゃんが、シェリーの背中に乗れるようになるのはその頃だろうな。
「じゃああっちのフェンリル三体はまだ子供って事だけど、生まれて十年経っていないくらいなのか」
「グルゥ」
「リーザやティルラちゃん、それにレオと近い同年代って言えそうだな。いや、レオはもっと下か」
「リーザと同じー!」
「同じ……じゃなくて同年代だよリーザ。そうだな、近い年頃って事だ」
「グ、グルゥ……?」
「ん? どうしたフェリー?」
子供のフェンリルが同年代とわかってか、喜んでいるリーザに言葉の意味を教えていると、何やら口をあんぐりと開けたフェリーがレオの方を見ていた。
「グル、グルゥ?」
「んっとね、ママがあっちの子供のフェンリルと同じくらいなのに、驚いているみたいだよ?」
「そうなのか? まぁシルバーフェンリルとしては特殊な部類なのは間違いないだろうから、レオの年齢とかはあまり考えない方がいいんだろうけど……」
レオを拾ったのは、俺が高校に入って一人暮らしを始めたすぐの頃だ。
それから高校を卒業して就職して、さらに二年だから……生まれてから五年くらいだな。
リーザより年齢的には下だが、マルチーズとしては成犬でもあるわけで、ちょっとややこしいが子供ではない。
まぁ捨てられているのを拾ったため、正確な生まれた日などはわからないが、それでもまだ歯が生えそろっていなかったし、動物病院で診てもらったら生後一か月以内だろうと言われたし、ほとんど拾った時期と変わらないって事にしている。
毎年、レオと出会ったあの日を誕生日兼記念日として、お祝いしていた。
あの頃のレオはよくわかっていなかった様子で、大好物が食べられる日、くらいの認識だっただろうけども。
今年はこちらの世界に来ていたため、リーザと出会う前にクレア達と一緒に祝ったんだよなぁ。
レオ用に大きなケーキをヘレーナさんと協力して作ったりしたっけ……。
「グルゥ、グルルゥ……」
何やらさらに驚愕している様子のフェリーの言葉を、リーザに通訳してもらうと……。
シルバーフェンリルは悠久を生きる存在とフェンリルの間では認識していて、だからレオもフェリーよりもよっぽど長く生きていたのだと思っていたんだとか。
リーザはここまででもよくわからない言葉があり、ここでも「ゆうきゅう?」と首を傾げていたがそれはともかく、フェリーはそういった言葉もわかるんだな、とこちらも別の意味で驚いたりした。
まぁ数の数え方を知っているし、これまでフェリー達と通訳を通してではあっても会話が成り立っていたんだから、細かい事だし気にしない方がいいんだろうけど。
ともかく、数百歳を越えるフェリーより長く生きていると思っていたら、実は子供のフェンリルよりも幼い、それこそフェリーから見ればシェリーに近いと知って驚愕していたと。
だからと言って、シルバーフェンリルが絶対的な存在である事は変わらないとも言っていたようだが。
しかし、悠久を生きるシルバーフェンリルか……レオが元マルチーズという特殊な存在だから、同じとは限らないが、もしそうだとしたらもしかすると、これからさらに成長したりするのかな?
いやいやまさか、今でも既にフェリーより大きな体だし、これ以上大きくなったら大変だぞ……だからと言って、レオが大切な相棒である事に変わりはないが。
ま、まぁレオ以外のシルバーフェンリルを見た事があるはずのユートさんが、特に何も言っていないから体は既に成長しきっている可能性もあるし、あまり考えない方がいいのかもしれない。
……ユートさんが、忘れていたりうっかり話しそびれていた、なんて事がなければいいけど。
「ともあれレオの事はいいとして、色々教えてくれてありがとうなフェリー」
「ありがと、フェリー!」
「グルゥ」
何やらまだ多少の戸惑いはあるようだけど、とりあえずフェンリルの事を多少知れたからと、リーザと一緒にフェリーを撫でる。
レオの方を見ながらだけど、撫でられる気持ちよさには勝てないようで、フェリーは気持ち良さそうに鳴きながら尻尾を振っていた。
「お、レオ戻って来たか。お疲れ様」
「ワフ」
「ママもお疲れ様!」
フェリーを撫でて少しすると、子供のフェンリル達に注意をし終えたレオが戻って来る。
こちらもフェリーと同じく、リーザと一緒に労うように撫でるとすぐに気持ち良さそうに鳴きながら、目を細めて尻尾を振っていた。
フェンリルもレオも、わかっていた事だけど見た目は精悍な狼でも、人慣れした犬にしか見えないなぁ……俺だけかもしれないけど。
やっぱり怖がる人もいるしな――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
レオの誕生会については、GCノベルズ9周年フェアで書籍1巻を購入した方に特典として付いた、記念SSカードにある二次元コードを読み込むと見られる書き下ろしストーリーにありました。記念SSタイトル「感謝を伝えるための誕生会をしました」となります。
別作品も連載投稿しております。
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