子フェンリルが参加するようでした
「グルゥ、グルルゥ。グルルル」
「えっとねー」
「ふむふむ……」
話を聞いたフェリーの鳴き声を、リーザに通訳してもらう。
走り足りないというか、遠くまで走ってみたいというのは多いし、元々人を乗せるのを気にしないか楽しんでいるフェンリルがここには多いため、特に問題ないという事だった。
まぁ、駅馬のために集まってもらったフェンリルでもあるからな。
あとやっぱりというか、フェリーもそうだけど食べる物が美味しいなら、断るような事はないみたいなのも言っていた。
フェリー自身、レオがいる事だけでなくハンバーグが食べられるならと、駅馬に対して前のめりに協力してくれているからなぁ。
「じゃあそうだな、行ってくれるフェンリルを四体……できれば五体を選んでもらえるかな?」
「グルゥ? グルル、グルゥ」
「んっと、乗って行く人は三人なのに、四体も? って言ってるよー」
「ありがとうリーザ。――数が人より多いのは……」
通訳してくれるリーザの頭を撫で、フェリーに数の説明。
三人だから少なければ二体いればいいんだろうし、一人一体の背中に乗るのなら三体で事足りる。
だけど、遠くまで行く事や移動中の食料等々の荷物があるからな。
「だから、それぞれ人を乗せるフェンリルにも荷物を持ってもらう事になるけど、さらに持ちきれなかった荷物も運んでもらおうってわけだ。美味しい物を食べてもらうためにも、必要だろう?」
「グルゥ」
俺の話に納得した様子で頷くフェリー。
フェンリルは見た目からしてそうだがそれ以上に力持ちだけど、人を乗せてさらに大量の荷物を持たせるわけにはいかないからな。
重い荷物が負担とかそういうわけではないのは、フェリーがそう言っていたから大丈夫そうだけど、それだけじゃなく単純に、荷物を載せる面積的な意味で。
幌馬車とかみたいに、荷物を載せられる物を使えればいいんだけど、今回はできるだけ早い移動を求められるからそれはなしってことをエッケンハルトさんからも聞いているし。
人を乗せても余裕がある程に体が大きいフェンリルでも、無限に荷物を載せられるわけじゃない。
だから、人を乗せる以外のフェンリルは荷物持ちとしてだ。
まぁ荷物がどれだけになるのか次第で、四体で十分なのか五体必要なのかは変わるだろうけど……エッケンハルトさんとは、できる限り四体で済むようにすると言われていたりする。
とはいえ、フェンリル達にも余裕を持たせるために、できるなら五体いて欲しいって事になっているわけだな。
「グル!」
「済まないけど、頼んだよ」
「ワッフ!」
「……レオも行くのか?」
「ワフ」
「じゃあ私もー!」
フェリーが頷き、調査に赴くフェンリルを選ぶために離れようとするのに対し、レオとリーザも付いていった。
後で聞いたけど、レオからも声をかけるというかちゃんとやるようにみたいな事を、伝えるためだったとか。
フェリーが群れのリーダーなはずだけど、今ではすっかりレオがリーダーみたいになっているなぁ。
まぁシルバーフェンリルだから、フェンリル達も素直に言う事を聞くみたいだし、フェリーも不満どころかむしろ少し肩の荷が下りている……とかみたいだから、いいんだけど。
「それで、選ばれたのがこの五体ってわけか……大丈夫かな?」
「ガフ! ガッフガフ!」
「ギャゥゥ……」
「ギャフ!」
少ししてレオやフェリー達が戻って来るその後ろから、五体のフェンリルが俺の前で整列してお座り。
俺の言葉に、ちょっとだけ憤慨した様子のフェンリルと、自信なさそうに俯くフェンリル、さらに意気込んで大丈夫と言うように頷くフェンリルがいた。
その三体以外のフェンリル、残り二体はフェリーに負けず劣らずしっかりした体躯で、大きさも少し他のフェンリルより大きめだったりするんだけど……。
「まだ成長しきっていない? 小柄な個性というよりは、子供のフェンリルのように見えるんだけど……」
フェリーが連れて来て、俺達と一緒にランジ村に来たフェンリルの中には、大人ではないフェンリルが混じっている事はわかっていたけど。
ちなみに子供でも、シェリーより大きいどころか人間を余裕で乗せられるくらいの大きさだし、これから成長するだろうから問題ないと思っていた。
ただそのうち三体、というかこれで子供のフェンリルは全部だったはずだけど、その三体を連れて選んだのはどうしてなのか。
「グルゥ、グルルゥ……」
「ふむ、成る程なぁ」
フェリーによると、人を乗せるのなら子供でも十分だという事。
それから、荷物を持つフェンリルが二体いて計五体用意すれば、子供の方の体が多少小さくても問題ないだろうという事などの理由が話された。
「かなりの長距離……凄く遠いところまで走る事になるけど、大丈夫か?」
「グルゥ。グルル、グルゥ、グルルル」
長距離走る事も特に問題なく、体力も走る速度も大人より劣るけど、それでも丸一日……フェリーの言い方からすると、明るくなって暗くなり、また明るくなるまで平気で走り続けられるとの事だ。
一日ずっと、平気で走っていられるってとんでもない体力だなぁ。
まぁ走る速度の方は、人を乗せる以上フェンリルにとっての全力で走るわけじゃなく、乗せた人に応じた速度になるだろうから、大人より劣っていても大丈夫だろうとは思うけど。
それでも速度だけでなく休憩も少ないだろうから、馬で強行軍の移動よりかなり早いはずだしな。
「わかった。フェリーが大丈夫だと言うなら信じるよ」
「グルゥ!――グル、グルルゥ!」
「ガッフ!」
「ギャゥー」
「ギャッフ!」
「ガウ!」
「ガフフ!」
俺の言葉を聞いたフェリーが、五体のフェンリル達へと顔を向け、檄を入れるように鳴いた。
五体のフェンリル達はそれぞれ、承諾するように意気込みと共に頷く。
鳴き声が、まだ少し高めなのや低くなっているけどちょっと他と違うのは、子供のフェンリルが成長途中だからだろうか。
というか、シェリーが大きくなったらこうなるのかなぁ?
「ワッフ……」
「レオからもか。わかった、そっちは任せるよ」
「ワフ~」
自分の出番か……と戻って来てから俺の横でお座りしていたレオが、のそっと立ち上がり、五体のフェンリル達の方へゆっくりと近付いた。
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