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1878/1996

ラーレが何かを発見したようでした



「……うーん、今後もカレーを作る事を考えたら、レオ用にもっと大きなスプーンを作るのもいいのかなぁ? フェンリル達に使っても良さそうだし。まぁその分、お世話をする人が必要にはなるけど」


 なんて、自分の分のキーマカレーライスを食べながら、せっせとレオの口にスプーンでキーマカレーを運んでいるリーザを見ながら呟く。

 とはいえ、俺がクズィーリさんから購入した分のカレー粉は全部使ったみたいだし、次にカレーが食べられるのはしばらく後になりそうだけども。

 ちなみに、フェンリル達も同様に汚さないよう専用のスプーンを用意した場合のお世話について、俺側の使用人になったチタさんと、別邸の使用人になるシャロルさんの二人が意気込んでいた。

 二人共、フェンリルのお世話係を主に任せてあるからだろう。


 それから、レオやフェンリル達の毛並みを愛でるのが好きな従業員さんの一部、エメラダさん主導で子供達も含め、意外と言うべきか多くの人が引き受けてくれそうだ。

 手間を増やしてしまうかなぁ、と考えていたけど皆がやる気なら本当に専用スプーンを用意する方向で考えるかな。

 あとエメラダさんは、元々クレアに憧れて同じ女性としての見本みたいに考えていたらしいけど、今ではフェンリル達にべったりで、よく一緒にいるのを目撃されている。

 まぁ、仲いいのは悪い事じゃないし、エメラダさんはリルルとも仲良くなっているので、輸送やクレアに付いて屋敷の外での交渉に赴く役割にも、悪い影響はないだろうからいいけども――。



「キィ、キィー!」

「ラーレの声ですね?」

「うん、そうだね。どうしたんだろう?」


 キーマカレーを食べた翌日、庭でティルラちゃんと鍛錬をしていたら、空から響くラーレの声。

 ラーレは基本的に静かで、鶏よろしくコッカー達と一緒に朝には大きく鳴く事があるが、それ以外では鳴く事がほとんどない。

 ティルラちゃんを始めとした、誰かと話したり遊んでいる時は別だけど。


 そんなラーレが、大きく鳴き声を響かせているというのは何かがあったという事だろう。

 俺達が鍛錬で遊べないため、コッカー達と空の散歩に行っているはずだったけど……何か見つけたのかな?


「キィ、キィ~」

「ラーレ、お帰りなさい! どうしたんですか?」


 声を響かせつつ、ラーレが庭に……ティルラちゃんの近くに降り立つ。

 以前、急降下してエッケンハルトさんを弾き飛ばしてしまうなんて事故があってから、ラーレが何度か練習して静かに着陸するようにしているのを、俺は知っている。

 まぁ、たまたまトイレに起きた深夜、少しだけフェンリル厩舎ではなく庭にいるフェンリル達の様子を見るために出た先で、見かけただけなんだけどな。


 フェンリル達は、厩舎を作って寝床が用意されてはいるけど、外で寝るのが好きなのもいるため交代ではあるけど一部のフェンリルは庭で寝ていたりする。

 畑付近でも寝ているフェンリルがいるけど、そちらは夜の畑を見張っているつもりでもあるみたいだ。

 それはともかく……。


「キィ、キィキィ」

「ふんふん、そういう事ですかー」


 翼を広げて、手で指し示すような素振りをしつつ、何やらティルラちゃんに伝えているラーレ。

 ティルラちゃんとラーレは従魔契約をしているから、ティルラちゃんの『疎通令言』という、理性ある存在と意思疎通……つまり会話ができるギフトがなくても、話が成り立つ。


「ティルラちゃん、ラーレはどうして騒いでいたの?」

「ワフゥ?」

「ティルラお姉ちゃん?」


 降りてきたラーレに気付いたのか、俺の質問と同じくして離れて遊んでいたレオやリーザも寄って来た。

 まぁリーザは、俺達の鍛錬を見つつ真似なのかレオと一緒に走っていたりもしたんだが、それが遊びになるのがなんとも体力がある事だなぁ。


「えっとですね、ラーレがあっちの方を飛んでいる時に多くの人間が移動しているのを発見したらしいです」

「多くの人間……?」


 ティルラちゃんがラーレの代わりに指示した方角に視線を向けつつ、その言葉を考える。

 示されたのは南方面で、森とは逆方向……敷地の北側にある庭からだと屋敷があるだけだけど。

 ともかく南側という事は、森の異変とはあまり関わりがないか。

 それに、多くの人間が移動しているとしたらもしかして……。


「ラーレ、その人間達はこちらに向かっている、でいいのか?」

「キィ」


 頷くラーレ……やっぱりか。


「タクミさん?」

「うーんと、多分予想通りだと思うけど……ラーレ、いくつか質問するけど……」


 ラーレが見つけた人間達の特徴を聞いて行く。

 曰く、武器や鎧を見に付けている人が多かった。

 また、多くの幌馬車で多くの人間がいた、規則的に動いていて何かしらの訓練を受けているようだった等々、いくつか確認して確証が持てた。


「ラーレが見つけたのはきっと、調査隊の人達だろうね」

「キィ?」

「そうなのですか?」

「うん。予定では今日か明日に到着するみたいだから」


 南からだという事と、大まかな人数なども含めての結論は調査隊でほぼ間違いないはずだ。

 ラーレは空を飛んでいたから、さすがに幌馬車の中にいる人まではわからないだろうけど、予想される人数とエッケンハルトさんから聞いていた、到着予定の人数とが近かったのもある。

 しかもそれだけの人数が、訓練されているように規則的に動いているのなら、もう確定と言っていいだろう。

 商隊だと規模が大きすぎるし、ラーレから見ても規則正しいと感じる動きにはならないだろうしな。


 そもそも、商隊がランジ村やこの屋敷に近い場所を通るなんて事は聞いていない。

 ランジ村の南は、かなり離れないと街道もない場所だから、商隊だとしても近くまで来ているのは不自然過ぎるしな。

 ちなみに、ランジ村の玄関口はラクトスを向く西側、村の中央にある広場から見ると南西なので、通常の商隊や旅人が村に来るには街道沿いに迂回して西から来る。


 街道を外れたら多少なりとも魔物との遭遇率も上がるし、訓練された兵士さんでもなければ、できるだけ魔物と遭遇はしたくないものだしな。

 それが近道であってもだ……急がば回れとも言えるし、絶対的な安全が確保されないこの世界の旅では、避けられるリスクは避けるのが定石らしいからな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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