以前プレゼントした物に関して相談されました
「ワッフワフ」
レミリクタ、店名としての意味は特にない。
レオが嬉しそうに鳴いているが、それもそのはず。
この店名の案はレオが提案したもので、俺とクレア、それにレオとリーザにミリナちゃん、それぞれの名前の頭一文字をとって並べたものだからだ。
最初は俺とクレア、それにレオとリーザだけだったんだけど、そのお店で販売する薬などの調合はミリナちゃんが先頭に立って行うので、そこは外せないだろうという事で入った。
どういう順番に並べるかで少し悩んだけど、なんとなく語呂が良さそうなレミリクタで決まった。
まぁ、ここにいないミリナちゃんの名前も入っているから、使っていいか後で聞いてみてから正式決定になるけども。
それと、俺の名前も使われているけどそのままじゃないし、頭の一文字くらいなら気にならないからという理由もある。
なんにしても、レオのおかげで決める事ができてほっと一安心だ。
店名はもっと遅くても良かったけど、屋号を決めたついでだしな。
「とりあえず、仮でも決められて良かった。相談した甲斐があったよ」
「私にも関わる事ですし、タクミさんのお役に立てて何よりです。ふふ」
「うん。やっぱり一人で考えるより、誰かと相談した方が色んな意見が聞けるね」
俺だけで頭をうんうん悩ませても、何も出てこなかったからなぁ。
屋号の「クラウトフェルト」なんて、絶対思いつかなかっただろうし。
「では、私は『クラウトフェルト』と『レミリクタ』を使用人へ」
「私はクレアお嬢様とタクミ様が雇っている者達に」
「えぇ、お願いね」
「よろしくお願いします。あ、でも周知させるというより、反対がないかの意見もしっかり聞いてくださいね?」
「承知しております」
エルミーネさんは使用人さんへ、ヴァレットさんは従業員さんに確認と意見を聞きに行ってくれる。
あくまでもこう決まったから、というのではなく仮決定だけどどう思う? のようなご意見伺いのようなものだと、念を押しておく。
深く頭を下げて退室する二人に任せておけば、大丈夫そうだ。
「とりあえずこれで、差し当って考える事は終わったかな」
「そうですね……ふふ、ごめんなさいねシェリー。あまり参加できなかったわね?」
「キャゥ~」
「リーザもだな。まぁこういう事はまだよくわからないか」
「うーん、誰かの名前じゃないから、なんか難しかった。大事なのかどうかもわからないし……」
レオは積極的に参加したけど、リーザとシェリーは屋号だけじゃなくて店名を考える方にも参加せず、じゃれ合っているばかりだった。
まぁ名前決めなんて、これといった案があったりしなければよくわからないというか、積極的にはなれないものかもしれないな。
レオが参加したのに驚いたくらいだし。
「あ、そうでした。私もタクミさんに相談したい事があったんです」
「クレアが俺に?」
「はい。少し迷ったのですが……結局、タクミさんに直接相談するのが一番だと思いまして。それに、ちょうどタクミさんもこの部屋にいますし……」
クレアがシェリーを撫で、俺がリーザを撫でていると、ふと思い出したように切り出すクレア。
「タクミさんから頂いたものを、タクミさんに相談するのは申し訳ないというか、私が悪いのかもしれませんが……こちらです」
「これは……俺が上げた花、だね」
クレアが取り出した……というか足元から持ち上げたのは、以前告白する時に俺がプレゼントした花と水差し、というか花瓶だ。
花瓶に巻かれているレースは、使用人さん一同が俺のプレゼントを彩るために作ってくれた物でもある。
「うーん、元気がないように見えるけど……というか、今まで枯れずにいたんだね。クレアが悪いなんて事はないと思うよ。むしろ、ここまでよく持った方かな」
「そうなんですか? ずっと綺麗な花を咲かせていたので、タクミさんの能力なのかなと思っていました」
多分、せっかくもらったのに枯れてはいないけど、元気がない様子を見て申し訳ないと思ったんだろう。
その花を俺が『雑草栽培』で作ってプレゼントしたのは、黄色がかった白色の花弁が綺麗な薔薇、クレアオースチンという物だ。
なんとなく可憐なイメージと、名前がクレアと同じという事を思い出してこれしかない! とあの時は思ったものだ。
その花、元気なく萎れかけているクレアオースチン……薔薇の花は、まだ綺麗な花の色を保っている。
というかそもそも薔薇って、切り花にしてからこんなに長く保つ物だったっけ?
プレゼントしてからかなり経っているはずだけど……。
「大切なものなので、タクミさんから聞いた手入れを毎日欠かさずやっていたのですが……」
「うーん、切り花ってそもそも長く見ても十日前後くらいしか保たないはずなんだけど」
手入れも含めて、切り花に関しての知識はほとんど聞きかじり程度なので、その中からクレアには教えていた。
直射日光は避けるとか、水を替えるならぬるま湯だとか、花瓶も手早く洗って綺麗にしておいた方がいい、というくらいだけど。
ただそれでも、十日なんてとっくに過ぎているのに、花の色が褪せる事なく保てているのは素直に凄い。
というか、『雑草栽培』で作ったから何かあるのかもしれないが……。
「大事にしてお世話してくれていたというのは、プレゼントした俺としては嬉しい限りであり、クレアが申し訳なく思う必要は全然ないよ。むしろありがとうって言いたいくらいかな」
「そんな、あの時タクミさんがくれた言葉、それに使用人達の心がこもったプレゼントと、この私の名前と同じ花は宝物ですから。でも……」
「そうだね……ずっとそのまま綺麗な花を咲かせるのは、難しいと思う。クレアの気持ちはありがたいけど……」
残念だけど、花だってずっと綺麗に咲き続けるわけじゃないからなぁ。
もしかしたら、俺にもっと知識などがあればまた元気に咲かせてあげる事ができるのかもしれないし、もっと長持ちさせられるのかもしれないけど……。
「そう、ですか……残念ですけど、そういうものなのですね……」
顔を伏せ、悲しんでいるようにも見えるクレア。
できれば何とかしてあげたいけど、それはどうしようもないし……そういえば、いずれ切り花だと枯れてしまうとわかっていたから、別の物を用意しているんだった――。
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