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1868/1996

名前を早く決めた方が良さそうでした



「屋号などに関連して……カナンビスの調査で現状、開始が遅れているわけですが」

「それはまぁ仕方ない事ですけど、屋号に関連しているんですか?」


 アルフレットさんの言葉に首を傾げる。

 カナンビスの調査、まぁ森の調査でもあるけどその影響もあって現在、薬草畑の本格始動の予定を数日遅らせている状況だ。

 何があるかわからないから、という警戒もある。

 とはいえ実際の所、ミリシアちゃんは薬を調合して量産してくれているし、俺も薬草を作って数を増やしているから、畑の方はもう動き始めていると言っていいんだけどな。


 クレアの方は、当初の予定通り薬草や薬を持っていく場所への第一陣……薬草畑として、交渉や運搬を最初に行うという意味での第一陣だけど、そのメンバーの選別をしているとか。

 ただカナンビスに関しての事柄が落ち着くか、サニターティムの予備が十分にできるのを待つという、ここが一番影響を受けて遅れている部分ではある。

 リルルを始めとした、フェンリルに協力してもらう以上、カナンビスの薬での影響の心配を取り除いてからじゃないと動けないからな。

 クレア自身が、現状でこの場所を離れるのを良しとしない、というのもあるが。


「数日程で、公爵様が召集をかけた調査隊が全て集まる見込みとなっております」 

「まぁ、それは聞いています」


 ラクトス方面からの調査隊は到着したけど、逆方向、または別の場所からの調査隊はまだだ。

 距離が離れているから連絡するだけでも日数がかかるし、移動にも時間がかかるからな。

 それも、二、三日中には到着する見込みだと、エッケンハルトさんから聞いている。


「調査隊の兵士達は、公爵領内のみとはいえ各地から集められた者達です。いつ終わるかはまだ確定しておりませんが、今回の調査や問題が解消されれば解散します」

「そうですね」

「となると、調査隊は元いた場所など各地に戻るわけですが……それまでに屋号などを決めて調査隊の兵士達へ広めておけば、と考えておりまして……」


 アルフレットさんの考えとしては、公爵家の関係者でもあるとはいえ兵士さん達にはそれぞれの生活がある。

 だから、このランジ村で俺やクレアが始めた薬草畑の事を覚えてもらっておき、各地に戻った際に広めてもらおうという考えらしい。

 口コミが一番評判などに響くからこその手段、ってところかな。


 積極的に広めなくても、兵士さん達が自然と広めてくれるだろうという目論見ってわけだ。

 公爵家の評判がよく、兵士さんも含めて信頼されているからこそ使える、大きな手間をかけない宣伝とも言えるが、効果はかなり高いと思う。


「確かに、使えそうですね……」

「はい。突然こちらに多くの薬草や薬を求める者達が殺到する、という程でもなく、緩く大きく広がると予想します。もちろん、人のやる事ですので絶対ではありません。ですがそれに加えて……」

「クレアが各地で販売するための交渉をする時、有利になる……ですか?」

「その通りでございます。公爵家がやっている、と思われる者もいるでしょうが、それはそれで交渉を有利に進める材料にもなります。その辺りは、クレア様の手腕によるとは思いますが……」

「まぁ、レオやフェンリル達が前面に出て威圧する交渉にもならないので、有利になる状況は嬉しいですね」


 あくまで俺の考えだけど、レオを利用するような事はしたくない、というのにも合うな。

 権力を誇示するわけではないし、クレアなら有効に使ってくれると思う。

 つまり、俺が考えるのは余計なお世話かもしれないが、屋号を早く決めて名を広める事で、お膳立てのような事ができるわけだ。

 間接的にでも、協力できる事があるというのは嬉しい事だ……いい案が思い浮かばない屋号などを、早く決めないといけないけど。


「えーっと、それじゃあ問題が解決するなりして、調査隊が解散になるまでには……」


 できるだけ猶予が欲しいと思ってそう言うが、アルフレットさんは首を横に振った。


「いえ、できるだけ早く……早ければ調査隊が揃うまでには決めて頂きたいと」

「そんなに早くですか? でも、早く決めてもまだ調査が進んでもいないのに」

「名というのは、浸透するのに時間がかかります。できるだけ多くの者に覚えてもらうには、多少の時間、日数が必要でしょう。解散直前だと、そちらに意識が行ってしまい覚えて帰るという効果が薄れてしまいかねません」

「……それは確かに」

「いつ問題が解決するか、今の所見通しは立っていませんが……調査隊の兵士一人一人に名を伝えて行くわけでもないので、できるだけ早い方が良いのです」

「成る程、そうですが……」


 さすがに、兵士さん達一人一人に決めた名を伝えて、よろしくお願いしますなんて言って回れないからなぁ。

 選挙とかならともかく……この世界に選挙があるかは知らないが。

 隊長さんとかならまだしも、直接話さない人だって多いだろうし。


「……わかりました。調査隊が到着するまでにかは断言できませんけど、できるだけ早く決めます」

「はい、よろしくお願いいたします」


 うーむ、のんびり考えればと思っていたけど、早めに決めないといけなくなっちゃったな。

 俺がこれまでのんびり考えすぎていたせいではあるけど、まぁ猶予はあるし、急いでという程でもないからなんとか考えて決めないとな。

 やっぱり、後でクレアに相談に行こうと思う――。



 ――思い立ったが吉日、というわけではないが。

 アルフレットさんに言われ、その後もいくつか書類の確認や承認などをしたしばらく後。

 夕食の前にレオとリーザ、それにライラさんを連れてクレアの執務室の前に立つ。

 少し前まで、クレアはエッケンハルトさんと何やら話しをしていたらしいが、今は薬輸送隊に関する仕事をしているとの事だ。


「そういえば、この中に入るのは屋敷に来てすぐ見て回った時以来だっけ」


 改めて、クレアの執務室を訪ねるとあってほんの少し緊張。

 とはいえ執務室自体、俺の使っている方と間取りなども含めてほぼ同じだったから、緊張する意味もあまりないかもしれないが。

 何はともあれ、クレアへの相談のため執務室の扉をライラさんがノックして中に声をかける……俺がやろうとしたんだけど、止められた。

 こういうのは、使用人さんがいる時はその使用人さんに任せる方がいいんだろう、多分――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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