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1867/1996

執務室でお仕事をしました



「やはり、旦那様が直接『雑草栽培』を使った場所は、土が痩せていると言っておりました。ただ、不毛な畑や土になる程ではなく、しばらく休ませる……休耕でしたか。その休耕をさせて様子を見つつ、必要であれば栄養を与える程度で良さそうだと」

「そうですか。それはいい報告ですね。うーん……別邸の土との違いはなんだろう」


 ちなみに、植物が数を増やす前に成長したところで採取しておけば、土の栄養を吸い取り過ぎる事はなかった。

 同じ場所で何度も作っていると、さすがに似たような状況になったけども。


「別邸の方はペータ殿も見ておりますが、こちらとは土の性質が多少違うと言っておりました。土に含まれている栄養が、こちらの方が豊富だっただろうとも」

「成る程……畑のために用意した土地ではありますけど、使っていなかった土地だからこそ栄養を含んでいたのかもしれませんね。森も近いですし」


 別邸の裏庭では木々が周囲にあったりはしたけど、基本的に人が歩きやすいように整備されていた。

 それは植物を栽培するためなどの整備ではないから、栄養という意味では少なかったんだろう。

 対してこちらの畑に使った土地は、長年どころかずっと誰も使っていなかった土地で、森が近くにある事もあって土中の栄養は豊富だったわけか。

 ランジ村から森へ行く際に人が通ることくらいはあっただろうけど、多く踏みしめられているとかでもないし。


 畑の準備中に害虫もいたけど虫も多かったくらいだし、それなりの土壌になっていたんだろうな。

 ペータさんもその時だったか、良い状態の土というような事を言っていたはずだ。


「土の栄養の量が違うから、こちらの畑はまだ大丈夫なんでしょうね。当初の計画通り、区分けした畑をそれぞれ順番に使っていくので良さそうですね」

「はい。まだ様子を見なければわからない事も多い、とも言っておりましたが……まずは順調に予定通りと言えます」


 土が痩せている、栄養が奪われているのは間違いないから、見通しはできたかな。

 区分けした畑は、作る植物ごとだけでなく休ませる意味合いもある。

 使った畑はしばらく手入れをしつつ休ませ、また次使うまでに栄養を蓄えてもらうってわけだ。

 休ませる期間などは、これから時間をかけて観察して行かないといけないだろうけど。


 もし、長期間……それこそ年単位で必要そうなら、畑を広げる事も視野に入れないといけないか。

 香料のいくつかを作る予定にもなっているし、それを考えると広げるのはほぼ決定に近いかもしれないが。


「香料のために作る場所……はまぁ、既に用意してある畑を使えばいいと思いますけど、作付け予定の方はどうなっていますか?」


 『雑草栽培』を使ってなので、本当の意味での作付けとは違うが便宜上、俺が植物を畑に作るのを作付けと呼ぶ事にしている。

 まぁよく使われている言葉にしておいて、わざわざ特殊な言葉を考えない方が、ギフトを知らない人の前でも多少は話しやすいだろうからな。

 今の所、知らない人の前で話す予定はないけど。


「そちらはクズィーリさん次第ですので、契約待ちです。ただすでに、契約はされる物として予定を組むようにしております。最優先は薬草ではありますので、それらの予定をある程度消化してからになりますが」

「そうですね……ユートさんとか、カレーが食べたい人にとっては早く香料にも取り掛かって欲しいと思うでしょうけど。まぁ俺もまた食べたいので、そうなんですけど。まずは薬草の方を作らないと……」


 カレー粉に入っている香料全てが作れるわけではないけど、俺が取り掛かる事で確実にカレー粉の量産化が進む。

 クズィーリさんからの調合法などは、買い取りに近い形で契約書に盛り込んであったし、いずれ定期的にカレーが食べられるようになる……かもしれない。

 その辺りは、俺が作る物以外の香料がどこでどう仕入れられて、販売されるかによるかな。

 ラクトスでクズィーリさんと取り引きしてくれる商店があれば、それが一番手っ取り早いんだけどなぁ。


「あぁそれと、お婆さんから話を聞きましたけど、やっぱり薬局……薬屋はランジ村にも欲しいですね。そちらの方は?」

「直営店となるので、そこで働く者をどうするかなどの問題は多少ありますが、準備を進めています。建築資材を集めている段階ですが、集まり次第取り掛かれるかと」

「働いてくれる人は確かそうですね……まぁ最初は、従業員さんにお願いする事になりそうですけど。とにかく大きな問題なく進んでいるようなら何よりです」

「一つ、問題といえるかは微妙ですが……」

「何か?」

「店名、そして屋号をどうなされるのか、です」

「それですかぁ……」

「店名に関しては、経営者であるタクミ様、またはクレア様のお名前を冠するのでもよいとは思いますが……」


 一応印鑑と同じ意味の印章は決めて、制作待ちになっているけど屋号や店名に関しては後回しにしてそのままだったなぁ。

 この世界、特別大きなお店でない限り、というか大きなお店でも大抵はそこの主人や経営者の名前が付く事がほとんどだ。

 誰々の店、などで通じるわけだな。

 だからランジ村に薬局を作った場合、店名を決めなければタクミの店、もしくはクレアの店、と呼ばれる事になる……日本でも、個人商店で店主の名前そのままの何々商店、とかあったしそれと同じようなものだ。


 共同運営だから、タクミ&クレアの店とかもありそうだ。

 薬屋だから、タクミの薬局店とかクレアの薬屋、とかになるかもしれないけど。

 ただ、クレアは公爵家だからこそ、その公爵家が関わっているとしてもカレスさんの店のように、直営と言えるかは微妙なので、名前を使いたくない様子を見せている。

 俺も自分の名前がお店の呼び名になるのは、ちょっとなぁ……慣れていないのもあるけど、恥ずかしく感じる。


「ランジ村や屋敷内では特に必要ありませんが、薬草畑や薬、薬草を売って行き渡らせるためのいわば顔のようになるのです。できるだけ早く決めてもらいたいと……」

「そうですよね……いつまでも薬草畑、と呼んでいるのもどうかと思いますし。やっている事はそれだけではないですから。うーん……」


 今すぐに、というわけではないだろうけど必要な事でもあるので、そろそろ覚悟を決めて考えないといけないなぁ。

 レオを名付けた時から、どうしてもこういう名前を決めるという行為に苦手意識ができてしまっているけど……クレアと相談した方がいいかな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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