レオとジョシュアちゃんは仲良しでした
「ワフ!」
「ごめんごめん、レオ。少し遅くなっちゃったな」
「ワン! キャン!」
「ワウ? ワッフ」
遅い! とい言うように鳴くレオに謝っていると、ジョシュアちゃんが尻尾を振りながらレオに近付く。
それを見たレオが、鼻先をジョシュアちゃんに近付け、お互いにピトッとくっつけた。
レオとジョシュアちゃんなりの挨拶、かな? よくあるのは匂いを嗅ぎ合うとかだけど……シェリーとも似たような事をやっていたし、こういう交流の仕方もあるのかもな。
ちなみにジョシュアちゃんは紐で前足の脇部分と胸を交差するように繋がれており、その紐の先はお婆さんが持っている。
犬用のリードとかはないようで、基本的に紐で簡単に繋いでいるだけだけど、賢いジョシュアちゃんはそれもわかっているうえ、お婆さんと一緒に外に出るからだろう、あまり動き回ったりしないようで落ち着いていた。
元気がいいと、お婆さんを引きずってしまわないか少し心配していたけど、そんな事はないみたいだ。
「ワウワフ? ワウー?」
「ワン!」
「お?」
くっ付けていた鼻を話して、何やらレオがジョシュアちゃんに鳴いて伏せの体勢になると、ジョシュアちゃんが飛び掛かった。
しかしジョシュアちゃんはレオの体、というか横腹辺りの毛に受け止められて動きを止めた。
……多分、レオの体に乗ろうとして失敗したんだと思う。
小型犬のジョシュアちゃんにとって、伏せをしていてもレオの体は大きかったらしい。
「よっと……これでいいかな、ジョシュアちゃん、レオ」
「キャン!」
「ワフ」
レオの体にへばりついた状態になってしまったジョシュアちャんを抱き上げて、背中に乗せてやる。
ちゃんと返事ができるジョシュアちゃんは賢いなぁ……レオも、頷いているし正解だったみたいだ。
「すみません、レオ様。タクミ様も」
「いえいえ、レオも楽しそうですしジョシュアちゃんも懐いていますし、気にしないでください」
さっきからお婆さんが謝ってばかりだから、そんなに気にしなくてもいいと伝えつつ、レオの背中に乗って、転がったり動き回るジョシュアちゃんをしばらく眺める。
うん、平和な光景だな。
それからしばらく、レオとジョシュアちゃんがじゃれ合うのを眺めたり、ライラさんがもう一度撫でるのに挑戦したりして過ごした。
眺めている時に聞いたけど、お婆さんにとってジョシュアちゃんは今では娘とか孫のような存在らしい。
元々娘がいたらしいけど、今はランジ村とは別の場所に行きそこで結婚して過ごしているとかで、時折孫の顔を見せに返って来る以外では、ほとんど会わないのだとか。
今は家にいなかったが、旦那さんもいるので一人ぼっちというわけではないけど、ジョシュアちゃんがお婆さん達の寂しさを埋めてくれているのは間違いないんだろう。
ただ甘やかしているようで、それ自体は悪い事じゃないけど……一応の注意だけはしておく。
抱き上げた時に思ったんだけど、ジョシュアちゃんが少し太り気味だと感じた事。
ヴォルフラウの時とは逆で、以前盗み食いをしていたシェリーのように肉付きが良すぎたように感じた。
ミックス犬っぽいから、適性がわかりづらいけど……食べさせる食事の内容などには気を付けるようにしないとってわけだ。
まぁ欲しがって目を潤ませたり、鳴かれてしまうとどうしても食べさせてやりたくなるのはよくわかるが、そこは我慢だ。
レオからもジョシュアちゃんを注意していたので、多分大丈夫だろう。
とりあえず、病とかとは別に他の村の人も含めて犬の事で相談や悩みがあれば、そちらでも屋敷に来るようにとだけ言って、お婆さんと別れた。
それなりに経っているけど、犬を飼うのは初めての人が多いからな……俺が知っている事で役に立つならと。
マルチーズだった頃のレオと過ごした経験と知識くらいではあるけども――。
「契約書はこれでいいかな。あとは……」
お婆さんの家から屋敷に戻った後は、お勉強中のリーザの様子を見に行くらしいレオと別れ、俺は執務室でアルフレットさんと書類確認。
まずはクズィーリさんとの契約書の確認だけど……昨日の今日でもう作られていて、アルフレットさんの仕事の速さに少し驚いたりもした。
公爵家が使っている契約書の骨子を参考にしているから、とアルフレットさんは言っていたけど。
「こちらになります」
「ありがとうございます。契約書の方は、クズィーリさんに見せて確認を取って下さい。今は……」
「本日は旦那様とお話をされた後は、ずっと厨房にてヘレーナさんと話し込んでいるようです。私がお持ちいたします」
「お願いします、ゲルダさん」
契約書の確認をし、アルフレットさんに戻した後、ゲルダさんがクズィーリさんへと持って行ってもらう。
というかクズィーリさん、まだヘレーナさんと話しているのか……まぁ話が尽きないんだろうけど、昼食はスパイシーな物になりそうな予感だな。
ともあれ、俺は俺でアルフレットさんに渡された別の書類の確認。
「薬草は、順調に増えているみたいですね。まぁ実際に畑で作りながら自分でも確認しましたけど」
「はい。確認の方はペータ殿にもしてもらっていますが、別邸で試験的にやっていた時と同様に数は増えているようです。土の方の変化もあるようですが、別邸の時ほど顕著ではありません」
「砂漠化のように、土その物が栄養を完全に失くしているわけではないみたいですね。ペータさんはこの事について、どう言っていますか?」
ペータさんには、『雑草栽培』で急激に植物が成長、量産されるにあたって土の栄養が全て吸い取られてしまう現象の事も話してある。
畑もそうなる確証はなかったけど、一応可能性はあるとして備えてもらっていた。
まぁ、土を丸ごと入れ替えたり、腐葉土や別の植物を植え替えて畑に栄養を取り戻すとかだけど……現状の報告書を見る限りでは、今すぐ取り掛からないといけないほどにはなっていないようだ。
別邸で試した時には、絶対ではないけど多くが土の砂漠化によって栄養がなくなり、コッカー達が砂浴びをするくらいにしか使えず、一、二メートル程掘り返して、土を入れ替えなければいけなかったんだけど……。
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