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クズィーリさんとの取り引きは他の利点もありそうでした



「私は、ギフトを話しても良いと考えます。行商人という事で、一つ所に留まらないため多くの場所で多くの人と話す機会があるので、少し不安ではありますが……もちろん、クズィーリさんが進んでタクミさんのギフトを誰かに漏らすとは考えていませんが」

「口が軽いか固いか、というのとは別にクズィーリさんの行動や商品などから、何かを思う者はいるかもしれませんな。クレアお嬢様はそこを心配されているのでしょう。ですが、クレアお嬢様がクズィーリさんを信じられるとお感じになられたのなら、私も賛成させて頂きます」


 クレアに続いて、セバスチャンさんがフォローしつつも賛成。

 二人共、クズィーリさんに『雑草栽培』の事を打ち明けてもいいと考えているようだ。

 カンゾウとか、一部かもしれないけど手軽に香料が入手できる可能性があるから、というのもあるだろうけど、人となりを信じているんだろう。

 クレア自身もギフトに近い、能力とも言える人を見る目を持っているようだし、セバスチャンさんもそれはよくわかっているってところか。


「私は消極的に反対、でしょうか。絶対に話さない方が良いとまでは思いませんが、旦那様のギフトは多くの可能性を持っていると感じます。今はまだ、できる限り知る者は少ない方が良いと考えていますから。ですが消極的と言ったように、旦那様が話したい、話した方が良いと思うのであれば従います。どちらかと言えば、という程度ですのであまりお気になさらず」

「成る程……」


 アルフレットさんは賛成ではないけど、本人も言っているように話してはいけないと思う程ではないと。

 俺は香料、カレー粉の材料になる香料が作れればと思っているから、もちろん話したい方だ。

 話すかどうかを考える発端はカンゾウだが、簡単に入手できるのならそれに越した事はない。

 あと、カレーが広まれば色んな場所で色んなアレンジなどが生まれる可能性もある、という打算的な考えもあったりする。


 俺やユートさん、それにヘレーナさんや屋敷の人達だけでは思いつかないような物も出て来るのに期待だ。

 せっかくなら、色んな味のカレーを食べてみたいからな。


「タクミ様が香料を作るのであれば、クズィーリさんとは長い付き合いになるでしょうし、取り引きを続けなければいけません。ただギフトの話をするだけならともかく、取り引きを続けて行くのなら……考え方としてはあまり良くないかもしれませんが、クズィーリさんを見張るという意味合いも持たせられます」

「取り引きを続けていれば、クズィーリさん自身の行動もある程度わかって、もしこちらが不利益を被るようなら、香料作りを止められる。だから、クズィーリさんへの抑止力になるってわけですね」


 あえて悪者になるような事を、セバスチャンさんが言ってくれたんだと思う。

 悪く見れば、セバスチャンさんの言葉は監視していくらでもこちら側で操作ができる、と言っているようなものだからな。

 さすがに俺はそこまで考えていなかったけど……そうか、取り引きを続けていればクズィーリさんが、遠くにいても繋がっているという事になるわけだから。

 別の方面で考えると……。


「行商人の性質を考えると、遠く離れた場所の情報を聞く事もできますね。薬草の情報とかも入手してくれるかもしれませんし、それこそ、これから始まる薬草園の事も広めてくれるかもしれません。香料だけでなく、クズィーリさんとの取り引きは利点が多いですね」

「私達だけでは、どうしても公爵領内のみになりますし……他領の情報が入らないというわけではありませんが、タクミさんの薬草や薬を広めるのは、少々力不足かもしれません」

「だからこそクズィーリさんに、ってわけだね。うん、成る程。なんとなく、カッフェールの街にあったお店が、クズィーリさんと契約をした理由が見えてきたかな。話は逸れるし、カナンビスに関わっているなら、という前提だけど」


 各場所を巡るクズィーリさん、しかも香料は植物でありその群生地を探しもしている。

 ならカナンビスを見つける可能性があると見て、契約を結んで利用した、という仮説が立てられる。

 さすがにクズィーリさんが絶対に見つけられる、という確証はないから、他にも行商人に限らず複数の人と契約なりなんなりで、探していた可能性はあるけど。

 あくまで、カッフェールの街にあったハンボルトという人物がやっていたお店が、カナンビスに関わっているならだけども。


「行商人にとっては、各場所での情報は商品とそう変わらない程重要です。カレスのように、街に店を構えている者は、その街とお客様から得られる情報ですが、行商人の情報はまた質が違いますな」

「こちらではわかりませんが、行商をしながらスパイ……情報を集める人を各地に放っていた、という話も聞いた事があるくらいですから」


 実際のところは、歴史に詳しくないから聞いた事があるくらいで確かな事はわからないが。

 越中富山の薬売りは、置き薬のシステムとして有名だと思うけど、実は各地を巡って情報を集める加賀の殿様がやっていたスパイだった、という話だ。

 それが本当の歴史なのか、それとも架空の話なのかはわからないが……商人という形態で各地の情報を集めるのは、合理的な気がするな。

 特に、ネットどころか通信その物がなく、情報伝達が遅い場所では。


「ほぉ、そのような事が。興味深いですな……」


 あ、セバスチャンさんが興味を持ってしまった。

 説明をする時みたいに、目が輝き始めた……。


「ま、まぁ情報集めは別として、クズィーリさんに『雑草栽培』を教えるのは利点が勝っているので、問題ないと考えましょうか」


 長くなりそうだし、本当にあった事かもわからないので誤魔化して、話しを元に戻す。

 さすがに各地の情報をクズィーリさんから、と言ったのは俺だが、スパイ活動のような事をさせる気はないからな。

 本などに載っていないような、新種の薬草とかを見つけてくれれば教えて欲しい、と思ったくらいだし。


「基本的には、『雑草栽培』の事を誰に話すかは、タクミさんの裁量で決めても良いかと思います。こうして相談して下さったのは、頼られているように感じて嬉しい事ですけどね?」


 そう言って嬉しそうに微笑むクレアは、月明かりに照らされて俺の目に魅力的に映り、鼓動を早くさせた。

 ……いかんいかん、セバスチャンさんやアルフレットさんも近くにいるんだから、衝動で抱きしめそうになったけど自重しなければ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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