パンとご飯を用意する事にしました
カレーと一緒に食べるに適しているのはパンかご飯だろうけど、こちらの準備はそれ程手間ではなく、時間もかからないだろう。
パンは毎日ヘレーナさん達が焼いてくれているし、ご飯もいつでも炊けるよう準備をされている。
まぁ、基本的に俺を始めとしたご飯を食べて気に入った人達が、食事の際に食べるからだが。
もちろんみそ汁もよく作ってもらっているけど、そちらは献立次第か。
コンソメスープとかの日もあるし、別のスープだったりする事もあるが、汁物はとりあえず一食につき一種類だけになっていて、何を作るかはヘレーナさん達に任せている。
作る料理の献立に合うかどうかなどもあるからな。
ちなみに、一食に付き一種類ではあるけど、朝味噌汁だった場合調理の手間の関係でその日は三食味噌汁になる。
スープそのものはあまり手間がかからないらしいけど、毎食別のスープを作るより、一日三食のスープにした方が別の料理にリソースを割けるからってわけだ。
一応、そのスープも毎食入っている具が、多少変わるから飽きるなんて事はないよう、ちゃんと考えられている。
さすがヘレーナさん達だ、と感心するばかりだけど。
「ご飯は単純にこれまで通り炊けばいいだけなんですけど……甘めのパンってありますか?」
「甘めですか?」
「はい。カレーが辛いので、甘めの方が合うんだったかと。甘口の方でもそれでいいのかまではわかりませんが……」
ナンカレーは食べた事はあるが、基本的にカレーライスを食べる事が多かったからなぁ。
少し甘さを感じる平べったいのがナン、というくらいの認識しかない。
実際は色々と細かく種類や味の違いとかもあるんだろうけど。
「甘めのパンでしたら、牛乳を練り込んだ物があります」
「じゃあ、それにしましょう」
ヘレーナさんの言うパンは、ミルクパン程甘くなく、でもほのかに小麦とは違う甘さのあるパンで、ふっくら柔らかな物だった。
形は丸パンだったけど。
まぁ、形は別にちぎってカレーを付けてから食べればいいだけだし、ナンと全く同じ形じゃなくても大丈夫だろう。
ちぎったパンをスープに浸して食べる、とかもよくあるしな。
「パンは単純に、お皿によそったカレーに付けて食べます。ご飯の方は……こうして、同じお皿に載せて食べるのがいいでしょうか」
平皿に炊き立てのご飯と鍋からよそったカレーを盛り付ける。
……盛り付けるとは言っても、お皿の半分にご飯、もう半分とご飯に少しかかるようにカレーをという、一般的なものだけど。
「最初から、同じお皿なのですね」
「そうですね。別々で提供、という事もありますけどやっぱり手間になりますから」
そもそも、カレースポットもないしな。
大人数だし、おかわりの時などはカレーの入った寸動鍋を持って行って、そこから注ぐ事になるだろうから、最初から同じ皿の方がいいだろう。
食べるのが初めての人ばかりだろうし、わかりやすさ優先というものある。
あと、別々にすると洗い物が倍になるし……一人や二人分ならともかく、飲食店並みの洗い物の数になると大変だからなぁ、既になっている気はしないでもないが。
「とりあえず例としてやりましたけど、実際には食べる直前になってから、皆のお皿によそうがいいですかね?」
「そうですね……大量に食べるフェンリルなどは、盛り付けた物を出す方がよろしいかと思いますが、他の皆さんにはタクミ様の仰る通りが良いかと」
「わかりました。まぁ鍋のまま、お櫃のままの方が、冷めにくいですしね」
一般家庭とは違って、厨房から皆が待つ庭に運ぶのにも少なくとも数分はかかるからな。
ラップとかもないし、冷めにくい鍋で持って行ってそこからの方がいいか、カレーの入った鍋や炊いたご飯の入ったお櫃はいつも庭に運んでいるんだし。
いつも庭で食べる時も、皆が集まりそうなあたりでお皿に盛り付けたりとか、一部の料理ではやっているからな。
「では、後は我々が。パンとご飯を全員分用意して運びますので」
「はい、すみませんがお願いします」
カレーは完成したし、とりあえずパンもご飯も用意はできる。
後は俺が言う事もやる事もないので、ヘレーナさんや料理人さん達に任せればいいだろう。
リーザのお手伝いである、皮剥きももうないようだしな。
「それじゃ、クズィーリさん」
「あ、はい!」
カレーの入った鍋を覗き込んで、まだ何やらふんふん言いながらメモをしているクズィーリさんに声をかける。
いつの間にメモを取り出したのか……俺がヘレーナさんと話していた時かな?
「すぐに夕食になると思いますけど、とりあえず俺達と一緒に」
「わ、わかりました」
「タクミ様、後でクズィーリさんから色々と話を伺いたいのですが、よろしいでしょうか?」
「えぇっと……大丈夫ですか?」
「香料の事ですよね? はい、大丈夫です!」
「ありがとうございます。ではまた後程……」
香料の事……まぁ、料理には色々と活用できそうだからな。
これまでも、当然調味料はそれなりに使っていたわけだし、砂糖の代わりになりそうなカンゾウの事もある。
ヘレーナさんも色々とクズィーリさんから話を聞きたいんだろう。
まずはエッケンハルトさん達と、香料を仕入れていたお店に関する話とかもしないといけないし……大分遅い時間にはなりそうだけど。
料理に人生を賭けていると公言するヘレーナさんと、香料に関してはかなりのめり込んでいる様子のクズィーリさんとはいえ、さすがに夜通し話を続けたりはしないだろう……しないよね?
二人の話は、明日まで待ってもらった方が良かったかもしれない?
なんて思いながらも、まぁ大丈夫だろうと思いながら、クズィーリさん、クレア、リーザを伴って庭へと向かった。
「タクミ君! カレーは、カレーはどうなの!?」
庭に出た途端、興奮した様子のユートさんに迎えられる。
既にテーブルに着き、お皿が用意され、さらにナイフとフォークを持って準備万端だ。
カレーの匂いを嗅いで、我慢の限界ってところみたいだな。
「一応、オーソドックスなカレーは作れたと思う。この後の夕食で食べられるよ
「よっし!!」
「けど……カレーを食べるのにナイフとフォークは違うんじゃない? そこはスプーンで……」
まぁ、フォークでライスを食べるとかはあるけど、カレーではほぼ使わないと言っていいんじゃないだろうか。
汁物に近いし……と思ったら、懐からスプーンを取り出すユートさん。
一般的なスプーンとは違うそれはまさか……マイスプーン!?
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。