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皆でカレーの味見をしました



「タ、タクミさんとヘレーナだけズルいですよ!」

「わ、私もできれば……その、香料を作ったのは私ですし、と愚考いたしますが……」

「パパずるーい、リーザもー!」


 匂いの刺激による空腹に耐えかねたのか、クレアやクズィーリさん、それにリーザまでもが抗議をする。

 他の料理人さんも、興味津々にこちらを見ているし……まぁ、俺達だけ味見っていうのもいけないよな。

 つまみ食いしているわけではないんだが。


「ははは、それじゃあ皆で味見をしようか」

「はい!」


 勢いよく頷くクレアに、そんなに食べたかったのか……と少し苦笑しつつも、カレーの匂いをずっと嗅いでいたんだから、仕方ないなとも思う。


「リーザは、念のためまずは甘口からかな」

「甘口……?」

「うん、そうだよ。辛くないやつだ。まずはそっちを試して、物足りなかったら辛口を味見してみよう」


 デリアさんからは、どちらかというと辛口の方がいいかもしれない……という話は聞いているけど、まずは甘口から試すように促す。

 甘いのは平気でも、辛いのは駄目っていう子供は多いからな。


「では、私達はこちらで……」

「は、はい……」

「クレアお嬢様、こちらをどうぞ。――クズィーリさんでしたか、こちらを」


 リーザと一緒に甘口の鍋の前に移動した俺とは別に、クレアとクズィーリさんは辛口の鍋へ。

 ヘレーナさんが小皿によそって渡してくれている。

 他の料理人さん達も、追加のカレーを調理中で手が離せない人以外は、皆それぞれで味見を始めた。

 手が離せない料理人さんには少し申し訳ないと思いつつ、俺もリーザと一緒に甘口の味見。


「うん、まだ少しだけ後味に辛さを感じるけど、マイルドになっているな」


 甘口のカレーは、俺の指示で牛乳を入れて辛さを緩和させた物だ。

 牛乳が少なかったのか、まだ少しだけ辛さを感じるけど先程味見した辛口よりは大分マイルドになっており、まろやかさも感じる。

 後を引く辛さではなくなっているな。


 苦手な人はこれでもまだ辛いと思うのかもしれないけど、最初としてはこれで良さそうだし、これならカンゾウを入れてさらに甘くしなくても大丈夫そうだ。

 もちろん、もっと甘口がいいという要望だったり、ヘレーナさん達が作るのであればカンゾウを使ってみるのもいいだろうけど。。


「美味しい!」

「リーザ、辛いのは大丈夫か?」

「うん、全然平気だよ!」


 小皿から甘口カレーを口に含んだリーザは、目を見開いて満面の笑みになりつつ、小さくピョンピョン飛びながら喜んでいる。

 美味しいと思ってくれているのは間違いないようだ、尻尾もブンブン振られているし。

 ちょっとピリッとする辛さ程度なら、リーザも問題なく食べられるようだな。

 これなら、辛口の方を試してみても大丈夫そうかな?


 さて、俺やリーザは満足できたけど、クレア達の方はどうだろう?

 と思って、そちらに視線をやる。


「~~~っ! わ、私には少し辛すぎるわね……でも、舌がピリピリするのにもっと食べたいと思えるのは。美味しいのは間違いないのだけど、不思議と次を欲してしまう魅力があるわ」

「私は、もう少し辛くしても平気だと思いますけど。成る程、あの香料がこうなるわけですか……」

「クレアお嬢様、どうぞ」

「ありがとうヘレーナ」


 クレアは、辛いのは得意ではないようで舌をチロッと出しながら、ヘレーナさんから水の入ったコップを受け取ってゴクゴクと飲み、洗い流している。

 まだ食べたいと思えてはいるようだけど、クレアには辛口より甘口の方がいいのかな?

 他方、クズィーリさんの方はモゴモゴとしながらも、カレーの入っている鍋を覗き込みながら、何やら分析をしている様子。

 美味しいかどうかというよりも、自分の調合した香料がどう作用しているのかの方が、興味があるようだ。


 クズィーリさんにとっては商品でもあるから、ただ美味しいだけじゃなく、気になるのも仕方ないか。

 辛さの方は、ちょっと物足りないくらいだったみたいだけど。

 もし今後、辛党の人が多かったら超辛口みたいなのも作ってみてもいいかもなぁ……料理をするヘレーナさん達は大変かもしれないけど。

 というか、俺は今の辛口がちょうどいいと思うけど、中辛くらいは作っておいた方がいいかな、と思う。


「リーザはね、こっちの方が好きー!」

「私は、こっちでしょうか……やはり、次もとなりはしますが、辛いより深い甘さも感じるこちらですね」

「物足りないとは思いますが、選ぶならこちらですね」


 等々、辛口も甘口もそれぞれの味見を終えて、好みの選択。

 デリアさんが言っていたようにリーザはやはり辛党なのかもしれず、辛口を選択……味見をした時は、それでも少し物足りないような事を言っていた。

 クレアは甘口で、クズィーリさんは物足りなさを感じつつもそれしかないので辛口を選択した。

 クズィーリさんはリーザと同じく辛党なんだろうな。


 ヘレーナさんも辛口で、他の料理人さんは……。 

 厨房にいる人達全員に味見をしてもらい、それぞれ選択をしてもらったけど、若干甘口の方を選ぶ人が多いが半々と言っていいくらいか。

 どちらかかなり迷っていた人もいたけど。


 俺以外、初めて食べたカレーの辛さというのは未知に近く、甘口を選ぶ人に少し偏ったのかもしれないな。

 食べ慣れれば、辛口の方が多くなるかもしれない。


「さて、次は……と」

「タクミ様、まだ何かあるのでしょうか? 先程、味見をする前にほぼ完成と仰っていましたが」


 味見を終えて、カレーの調理も全てが終わった。

 後は、カレーをどうやって食べるかだ……と思って呟くと、ヘレーナさんが不思議そうにしていた。


「カレーはこのままでもいいんですけど、パンやご飯に付けて食べるんです」

「パンやご飯……成る程」

「スープかと思っていましたが、そうなのですね、タクミさん。まぁスープでも、パンに付けて食べる事はありますが」

「スープのようなカレーというのもあるんだけど、今回は違うからね。パンかご飯に付けて食べた方が美味しいと思う」


 スープカレーはまた別だからな。

 ともかくカレーに何を付けるか問題……これは辛いか甘いかと同じく好みが別れるところだ。

 どちらにせよ、カレーを二種類用意したんだし、そちらも二種類用意すればいいだけの事だろう。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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