表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1848/1996

カレーを作り始めました



「ちょうど良かった。リーザの事なんですけど」


 気のせい、と考えたそばからデリアさんが撫でて欲しそうに頭を差し出し、耳をピコピコと動かしているので、期待通り撫でつつ話を振る。


「わふ~……リーザちゃんの事ですか? 勉強は順調ですけど……」

「そっちも聞きたいけど、今はそうじゃなくて。えっと……」


 犬っぽい声を漏らしているデリアさんに、獣人の食べ物に関して聞いてみる。

 さすがに獣人は体のつくりが人間に近いからか、食べ物は人間基準でレオやラーレのように、どんなものでもどんとこいではないらしい、まぁそりゃそうだよな。

 そして、辛い甘いなど好みの話になると、デリアさんは辛党らしく辛ければ辛い程好きだとの事と、さらにリーザもおそらくそうだろうと言われた。


「人間だと、小さい頃は辛いのが苦手って人が多いけど……」

「獣人だから、という事なのかもしれません。私もそうなのですが、小さい頃から辛い物を好んで食べていました。あまり多くはありませんけど……リーザちゃんとは、勉強の時によく話していますが……」


 デリアさんがリーザから聞いた話によると、以前ちょっと辛めの料理が出た時、まだまだ足りないというような事を話していたらしい。

 辛党にとっては確かに物足りない物だったかもしれないけど、そうじゃない人にとってはそれなりに辛くて、その日は飲み物の消費が激しかったと聞いたくらいなのになぁ。

 成る程……予想通りリーザは辛党なのか。

 まぁ厨房にいるから、リーザに関しては味見してもらって確かめればいいだろうけど、参考にはさせてもらおう。


「刺激の強い匂いは、あまり好まないのですけど……味に関しては刺激を求めてしまうんですよね。それは多分、リーザちゃんもそうなんだと」

「成る程……ただ例が少ないから、獣人全てがそうだって思わない方がいいかもしれないですね」


 リーザもデリアさんも、人間に拾われて育てられたという経緯で、周囲に他の獣人がいない。

 俺も他に獣人を知らないし、二人がそうだからってだけで全ての獣人がそうだとは限らない、と考えておいた方が無難だな。

 好みの話で言えば、フェンリルだってそれぞれ違ったわけだし。


 刺激の強い匂いが好まれないというのは、嗅覚が鋭いからだろうし、それに関しては共通していそうではあるけども。

 多分、耳もいいから急な大きい音なども苦手な可能性はあるな。

 レオも、マルチーズだった頃はよく雷や救急車のサイレンだとか、掃除機の音に怯えていた事もあるし。

 それはともかく、参考にできる話を聞けて良かったと、デリアさんの頭をもう少しだけ撫でて、お礼を伝えて再び厨房へ向かう。


 遅くなりすぎると、夕食が開始される時間がそのままずれてしまうかもしれないからな。

 ヘレーナさん達も待たせているし。

 ……カレーが作られているとわかれば、ユートさんはいくらでも待つだろうけど。


「すみません、戻りました」


 厨房に戻ると、大量に炒められてる野菜のいい匂いがする。

 その中で、クズィーリさんと熱心に話しているヘレーナさんに声をかけた。


「タクミ様、おかえりなさいませ。どうでしたか?」

「レオに限らずですけど、魔物ってすごいんだなぁって思いました。えっとですね……」


 冗談を言いつつ、ヘレーナさん達に聞いてきた内容を話す。

 食べ物に気を遣わないでいいとあれば、料理人として味を追求するのみとやる気を出すヘレーナさん。

 クレアはそれを見て、もう少し他にも興味を向ければとため息を吐いていた……まぁヘレーナさんは美人さんでもあるし、料理のみに打ち込んでいるのは同じ女性としてもったいないとか思ってしまうんだろうな。

 あとリーザは相変わらず野菜の皮むきだけど、炒め物もまだまだ続いているし、夕食に用意する量が多すぎるためまだ終わりそうにないな。


「えーっと、野菜は炒めた。お肉も同様。タマネギも色づくまで炒めて取り出した……あとはカレーそのものを作ればいいだけ、と」


 工程を確認しつつ、いざカレー作りの本番に挑む。

 炒めた物に、カレー粉を加え、水なども追加してカレールーにしていく。

 ほとんど見様見真似だけど、カレーそのものを知っているのはここに俺しかいないので、まずは手本としてカレー作りを進める。

 俺に追従するように、それぞれの料理人さんが工程を見て真似て行く。 


 隣で作業をするヘレーナさんと、斜め後ろから香料がどうなるのか興味津々で覗き込んでいるクズィーリさんの二人は、俺の動きを食い入るように見つめている……ちょっと緊張するな。

 けど、多くの人にジッと観察されるのは、『雑草栽培』で慣れている。


「あ、甘口にする方には牛乳を入れるのもいいかもしれません。カンゾウもありますけど、牛乳だけではまだ辛いと思ったら、ほんの少し追加するくらいで」

「畏まりました!」


 カンゾウの甘さは衝撃的だった……砂糖やハチミツなどの代わりにするとしても、入れ過ぎたら甘ったるいカレーができそうなので、そこは注意が必要だ。

 ヘレーナさんを始めとする料理人さんは言わずもがな、俺も何度か見た事があって一応知ってはいる程度で、実際にスパイス、いや香料からのカレー作りはした事がないので、慎重に進めて行く。

 あくまで今回はアレンジなどを考えず、基本に忠実を心掛ける。

 カレーは失敗しづらい料理で、初心者にも安心なのは間違いないけど、それはカレールーなどがある場合。


 香料からでも他の料理と比べれば失敗は少ないかもしれないが、とにかくスタンダードなカレーを作れるようになる事を目指す。

 アレンジやトッピングなどは、その後考える事だな……作れるようになれば、やり過ぎなければ難しい事でもないはずだし。


「刺激的な匂いがしてきましたね……何かこう、お腹が空いてくるような」

「はい。タクミさんがカレー粉と呼んだ、私の調合した香料の匂いではありますが、他の食材と混ざって、お腹に響くような香りになっています」


 なんて、カレー作りをする俺達の様子を窺いながら、クレアとクズィーリさんが話す声が聞こえて来る。

 独特なカレーの匂い……ほとんどがクミンの匂いだろうけど、カレーを知らない二人でも、食欲を刺激しているようだ。

 かくいう俺も、作りながらだけどさっきからお腹が鳴りそうになっている。

 やっぱりカレーの匂いは、食欲を大きく刺激するよなぁ――。




標準的なスパイスからのカレーレシピも入れようか、と最初は考えましたが標準的過ぎたので省略しております。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[良い点] こんなにも長く書くなんて凄いですね。更にカレーも食べたくなりますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ