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1843/1997

まずはヘレーナさんのいる厨房へ行きました



「とりあえず、先にヘレーナさんの所に話に行きたいんですけど……ユートさんが落ち着かない様子ですし。ただ、クズィーリさんをどうしましょう?」

「ふぅむ、そうだな。話の重要度としては、ハルトとも先に話しておきたいとは思うが、今はヘレーナの方を優先して構わんだろう。時間をおいた方が、ハルトも落ち着くだろうからな。むしろ、今重要な話ができるか微妙だ」

「……そうですね」


 ユートさんの変わりように戸惑っていたエッケンハルトさだけど、お散歩ができて満足そうなレオやリーザを見て、自分も連れて行って欲しかったという思いが再燃したらしい。

 俺が通る時に一応でも謝ったのが、少しは効果があったのだとは思うけど、怒ったままでいいのかと何やら葛藤している様子だ。

 難儀な人だなぁ。


「ハルトには、私達から話をしておこう」

「わかりました。すみません、お願いします」

「タクミさんが謝る必要はないわ。ふふふ、ユートさんがこちら側に付けば、あとは楽なものだもの」

「……私も邪魔をされた側なうえ、レオ様の通る道を塞いだのだから仕方ないが……ハルトの気持ちもわからなくはない。加減はするのだぞマリエッタ」


 なんて、エルケリッヒさん達に任せる事になって不敵に笑うマリエッタさん。

 不穏な気配を感じたのか、エッケンハルトさんが少し震えた気がした。


「ここが厨房です。すみません、到着してすぐ連れてきてしまって。落ち着く暇もないですよね……」

「いえ……公爵様がおられた事には驚きましたが、こういう場所ではどのように料理がされて、香料の扱いはどうなのかなど気になる事ばかりなので、構いません」


 同じくお散歩から先に戻っているらしいフェンリルの様子を見に行くレオやラーレ、ティルラちゃんとも別れ、リーザとクレア、それにクズィーリさんとライラさんも連れて屋敷の厨房へ。

 クズィーリさんは公爵家の当主様、つまりエッケンハルトさんに驚いたようだけど……多分驚きの大半は、その当主様がさっきのように仁王像よろしく行く手を塞いだ事だと思う。

 俺達も驚いたくらいだし。


「んー、今は特にこれといった匂いが漏れていないかな? 珍しいけど……むしろ血生臭いような?」


 厨房からは大体いつも、何かしらの美味しそうな匂いがしてきているけど、今は食べ物の匂いはあまりしない……全くないってわけじゃないけども。

 よくレオが通りかかる時、クンクンと鼻を鳴らして涎が垂れそうになっている事もあったりする。

 ただ少しだけ、血のような匂いを感じるのは気のせいか……まぁ何かあったわけじゃないだろう。

 フェンリル達が狩ってきた、ニグレオスオークなどをさばく事もあるので、血の匂いがする事自体珍しくはない。


 大まかには外でさばくけど、細かい処理とかは厨房でやるみたいだし。

 ちなみにだけど、調査隊としてルグリアさん達がフェンリルと共に森に入った時、発見遭遇したニグレオスオークやカウフスティア、他にも食べられる魔物などを狩ってくる事があり、食材の助けになっていたりする。

 森にいた頃からの習性か、働かざるもの食うべからずみたいな考えがフェンリル達の中にもあるらしく、狩りは積極的に行ってくれるようだ。

 もちろん、森に入る時は必ずサニターティムの丸薬を食べてもらってからだが。


「えーっと、ヘレーナさんは……」

「タクミ様、クレアお嬢様! 厨房まで来られてどうされましたか?」


 とにもかくにも、クレア達やクズィーリさんを連れて厨房に入り、すぐに料理人さんの一人が俺達に気付いた。


「すみません、ちょっとヘレーナさんと話が……今、忙しいですか?」

「いえ、フェンリル達が狩って持ってきた、カウフスティアの処理を終えて洗浄と小休止中でしたので。すぐに呼んで参ります!」

「すみません、お願いします」


 今日はニグレオスオークじゃなくて、カウフスティアの方だったか……つまり今日の夕食は牛肉祭りだな。

 奥にヘレーナさんを呼びに行ってくれた料理人さんを見送って、厨房内を見渡してみると、確かに何かの処理を終えた後みたいで、調理台などに何かの血が付着しているのがわかった。

 何も知らずに見たら、ちょっとだけ凄惨な現場のように思えるかもしれないが、付着している血は少しだけだ。

 洗浄、つまり片付けや掃除をして、血で汚れた部分を綺麗にするわけだけど、それもほぼ終わりかけってところなんだろう……割とタイミングは悪くなかったのかもしれない。


「……タクミ様って、料理人なのでしょうか? 香料で私の知らない使い方も披露されていましたし……ここに来るのも慣れていらっしゃるようで」

「いえ、タクミさんは……薬師ですね」


 ヘレーナさんを待つ俺の後ろで、クズィーリさんがクレアと話しているのが聞こえる。

 俺が何者なのか、という質問にクレアが少し考えて結局薬師と言う事にしたようだ。

 そう言えば大まかに自己紹介はお互いやったけど、何をしているかは話していなかったっけ。

 クレアが公爵家のご令嬢だったり、エルケリッヒさん達や当主のエッケンハルトさんの登場で、今の今までクズィーリさんの頭には疑問として浮かばなかったんだろうけど。


「レオ様と一緒にいる事もありますが、薬師として公爵家と契約しています。実はここも、タクミさんが作った家なんですよ?」

「パパの家ー!」

「そ、そうなのですか!? ここまで立派で、公爵様方がいらっしゃるお屋敷……さぞ優秀な薬師なのでしょうね。薬師であれば、香料の知識があったのも納得です」


 大きく驚くクズィーリさんと、誇らしげで元気なリーザの声が、掃除と小休止で人の少ない厨房に響く。 確かに俺がお金を出して作ってもらった家ではあるけど、クレアというか公爵家も半分出したのに……。

 あくまで共同、半々だ。

 それとリーザの家でもあるからな? あと、優秀なのは『雑草栽培』というギフトで、俺自身が優秀というわけではないんだが……まぁクズィーリさんには今のところ、ギフトについては話していないからそう言う事にしておくしかないか。

 クズィーリさんにギフトを持っている事などを話すかどうかなどは、これから次第だな。


 もちろん、クズィーリさんの人となりを怪しんでいるとかではなく、長い取引をする相手になってくれるかどうかとかって事だ。

 定期的にではあっても、あまり直接やり取りをする事がなければ言う必要はあまりないだろうし、逆に香料は植物からでもあるので、その関係で話す必要が出てくるかもしれない。

 まぁその辺りはこれからだけど、とりあえず俺への呼び方が気になるなぁ……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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