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カレー粉のおかげで通れるようになりました



「そんな事どうでもいいよ、ハルト! カレー、カレーだよ!? カレーと比べたら、僕達の怒りなんて些末な事だよ! そこらの石ころの方がマシなくらいだよ!?」

「カ、カレーというものは存じませんが……些末、石ころ……ユート閣下の方が、置いて行かれて憤慨していたのに……」


 仲良く示し合わせていたうえ、ユートさんの方がやる気だったのが本人によってどうでもいいと言われ、ショックを受けるエッケンハルトさん。

 まぁ、カレーを知っているユートさんと、知らないエッケンハルトさんでこれだけ違いが出るのは、知っている俺から見ると仕方ない事なのかなと思える。

 それだけ、カレーという物はとんでもない魅力と、虜にさせる何かがあるからな。


「カレーを食べたらわかるよ! もうね、他の小さな事なんて一切気にならなくなるから! そんな僕も、こちらに来てから一度も食べていないから、そういう記憶だけあるんだけどね!」

「食べる、という事はそのカレーという物は、食べ物なのですね……ユート様がそこまで仰る程の物、確かに気になりますな……」


 ユートさんに説得? されたエッケンハルトさんも俺が持つカレー粉の入った革袋に鼻を近づけ、匂いを嗅ぐ。

 凝視もしているし、大の大人二人が俺の手の先で頬を合わせるくらい近付いているって、どんな絵になっているのか……。

 ウマが合うとか波長が合うとか、趣味が合うとかなんだろうけど、ほんと仲がいいなぁ。


「えーっと、そういうわけでヘレーナさんとも話をしないといけないんだけど……」

「うんうん、そうだよね! カレーを作るなら早く話しないとね! ついに食べられる、カレーが食べられる!」


 誤魔化しに利用してしまったけど、ヘレーナさんと話をというのは嘘じゃない。

 ただ……ユートさんは今日中にカレーを作って食べられると思っているようだけど、それはちょっと難しい気がしている。

 フェンリルも多くいるし、食べる人数も多いから、料理はかなり早めに作り始めるからな。

 手間のかかるものだと、俺達が昼食を頂いているうちから夕食の仕込みが始まっている、とかもあるようだし。


 既に夕食の献立が決められて、調理に取り掛かっていたら今日中に作るのは難しいだろう。

 せっかく作っている物をやめさせて、破棄などで無駄にするのもったいないからな。

 ともあれ、それに関しては少しズルいかもしれないが今は話さない。


 ようやく怒りを忘れてくれそうだから、とりあえずこのまま押し通そうと思う……もちろん後で説明するし、謝る事も考えているけど。

 今日カレーが作れなかったら、そっちの説明なども必要だろうけど。


「ふぅ、これでようやく通れるようになったなぁ」


 ニッコニコの笑顔で俺達を通してくれるユートさん。

 隣では、エッケンハルトさんとフェヤリネッテがどうしていいのかわからず、まだ戸惑っている様子ではあるけど。

 とりあえずこちらにはエルケリッヒさんとマリエッタさんもいるため、ユートさんさえ味方に付ければこっちのものだ。


 一応屋敷の中に入る前に、忘れていてすみませんと心の中で謝罪し、小さく「今度は必ず連れて行きますから、今回はすみませんでした」と声に出して謝っておいた。

 忘れていた、なんて口に出したらまたエッケンハルトさんが拗ねてしまいそうだから、そこは自重しておく。


「カレーですか……ユート様があれ程の反応をするという事は、余程の物なのだと思います。確かに香ばしいとは思いましたが、香りだけではよくわからなかったのですけど、私も楽しみにになってきました」

「食べなれた人が、食べられなくなる程ユートさんみたいになるかなぁ。とは思うけど、嫌いな人はいないんじゃないかな? と思うくらいの物だから、期待していていいと思う」


 屋敷の中に入り、クズィーリさんが口を開けて周囲をキョロキョロと見回したり、相変わらず声を揃えて迎えてくれる使用人さん達に体をビクッとさせて驚いたりと、完全にお上りさんみたいになっているのを見守りながら、クレアと会話。

 クズィーリさんには、ライラさんが付いてくれているから大丈夫そうだしな。


「そんなに、なんですね……」


 カレーが嫌いだという人に俺は会った事がないくらいだ、さすがに探せばいるとは思うけど。

 好みはそれぞれだけど、食べられないからこそ、食べていない期間が長い程、大きく反応してしまうのかもしれない。

 そう考えると、ユートさんのあの反応も無理はないのか。

 この世界に来てから一度も食べていないのなら、俺とは比べ物にならないくらい長い期間食べていないだろうからなぁ……。


「まぁ俺も、ユートさん程じゃないにしても大きく反応したくらいだからね」

「そういえば、あんなタクミさんは珍しくて少し面白かったです」

「……今考えると、ちょっと恥ずかしいな、ははは」


 クズィーリさんと会って、カレー粉のような香料を見つけた時は興奮してしまっていたからなぁ。

 購入する時には、ライラさんやエルケリッヒさん達を驚かせちゃったし。

 香料を入手した事で、いつでもは言い過ぎかもしれないが、必ず食べられるだろうと考えて、今は落ち着いていられるけど。


「とはいえ、よく考えると手放しで喜ぶだけでは済まされない可能性もあるんだけどね」

「そうなのですか?」

「まぁ……カレーそのものは多分、多くの人に楽しんでもらえるかもしれないけど、それ以外で好みの違いもあるから……」

「よくわかりません……」


 難しい表情で首を傾げるクレア。

 カレーそのものは多分、辛い甘いなどの違いはあってもおおむね受け入れてもらえると思う。

 ただ、そのカレーに何を付けて食べるか、が問題だ。

 最初は皆出された物を素直に食べてくれるだろうけど、そのうち論争に発展しないかなどの心配が少しあるくらいだけど。


 日本人としては、ご飯にかけて食べるカレーライスが一番の多数派だとは思うが、パンというかナンに付けたり、世の中にはカレーのみでいいという人もいるからな。

 どれも美味しい事には変わりなく、長所や短所も違うから好みで別れるしかない……だからこそ、決着はつかないんだが。

 まぁカレーの作り方や細かな味付けで、パン類に合う、ご飯に合う、と変わったりするけども。

 はてさて、クズィーリさんが調合したカレー粉はどちらになるのか……そして、味の調整などもできるのか、だな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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