リーザに楽しみができたようでした
「それに、パパが面白い事やってくれたから!」
「面白い事?」
そんな事やったかな?
「シナモンティー? あれを飲ませてくれたよ! もう一つの方も美味しかったし」
「そう言えばそうだったなぁ」
カナンビスの事でそれどころじゃなくなった感はあるけど、ジンジャーとシナモンの使い方として飲み物を出したんだった。
まぁあれは、なんとなく知識として持っていただけで、しかも作ってくれたのはライラさんなんだけども。
「リーザが美味しそうな匂いって言っていたのは、間違いじゃなかったかな?」
「うん! これからもいっぱい飲みたい!」
「うーん……一日に一度とかならいいと思うけど、いっぱいはさすがになぁ」
ジンジャーもシナモンも、体にいい物だったとは思うけど過剰摂取はあまりお勧めできない。
特にリーザは、まだ幼く成長途中で体も小さいしなぁ。
レオやシェリーみたいに、体の大きさだけでなく人から見たら特殊な部類ならまだしも、リーザは獣人で獣っぽい習性というか特徴もあるけど、どちらかというと体質などは人間に近いからな。
「いっぱい飲んじゃ駄目なの?」
「どうだろう? でも、飲み過ぎは良くないかなって思うよ。それに、他にも飲む物はあるからね。ジュースとか、レオが作り出す水とか、好きだろう?」
「あ、そうだった! どっちも好き!」
苦味があるダンデリーオン茶は、あまりリーザの好みじゃないのは仕方ないが、ワインがもとになっているジュースや、レオが魔法で作り出す水などを好んで飲んでいる。
そのワインは元々ランジ村で作られた物であり、バースラー元伯爵の企みで病の素が入ってしまっていた物を買い取って飲めるようにしたんだけど、それももうない。
ランジ村に引っ越しする途中で、全部飲み切ったからな……最終的にはユートさんが大量に飲んでいたけど。
そのワインからアルコールを飛ばしてジュースを作っていて、それがリーザのお気に入りだ。
まぁ別邸に連れて帰ってから初めて飲んだ物でもあるし、スラムにいた頃は気軽に美味しい飲み物を飲むなんてできなかっただろうし。
ちなみにだけど、現在もジュースは屋敷で出てくる事もあるが、それはランジ村で新しく作った物になる。
ワインにではなく果汁を絞ったジュースだからか、以前の物より味も甘さも濃くて美味しかったりする。
レオが魔法で作り出す飲める水は、屋敷を出発する前にリーザはお気に入りの革の水筒に、レオが魔法で作り出した水がたっぷり入っていたりする。
外に出かける時は、準備の一つみたいになっているから。
「飲める量は限られているからね、飲み過ぎるとお腹を壊しちゃうし。だから、ずっと同じ物じゃなくてそれぞれ飲めばいいんだよ」
今日はこっち、明日はあっち……今は甘い物が欲しいからジュースをとか、甘味はジュースより薄いけどちょっと刺激が欲しい時なんかはシナモンティーを、とかな。
気分変えてもいいし、順番に飲むとかでもいい。
ずっと同じ物を、大量に飲むのでなければな……飲み過ぎてしまったら、成分的な意味以外にも単純にお腹を壊してしまう可能性だってあるから、そこは様子を見ながらだな。
「うーん……わかった! ジュースもシナモンティーも、それからジンジャーティーも、全部飲む!」
「それはいいのか悪いのか……あと、ジンジャーはクレアさんが買ったから、飲み物として出て来るかどうか、わからないぞ。まぁなんにせよ、程々にな?」
「うん!」
これまでの話をわかっているのかどうか、ちょっと怪しい答えだけど……まぁ無理に飲み過ぎないよう見守っていれば、大丈夫だろう。
俺だけでなく、レオやライラさん達もいてくれるし。
とりあえず、屋敷に戻ったらどれを飲もうかな? なんて耳をピコピコ動かしながら考えているリーザの頭を撫でて、流れる風景に目を移した。
……そういえば、シナモンもジンジャーも、香辛料としては有名だから一応知っていたけど、そちらの知識は多くないし、他にどう使えばいいんだろうか?
カレー粉はそのまま、カレーを作るためのスパイスとして他の香料よりも、少し知識が多かったって程度だしなぁ。
香りその物を楽しむため、あくまで食品用ではあっても部屋でほのかに香るように使うとかはありかもしれないが……。
香料のままじゃなくて、香油にすればできるだろうし。
まぁこの辺りは、屋敷の戻ってユートさんとかに相談してみるか。
料理に使うのなら、ヘレーナさんと相談だろうけど。
ジンジャーはシロップにすれば炭酸のない自家製のジンジャーエールが作れたと思う。
シナモンの方は確か、デザート系だけでなくパンとか肉料理、スープにも使えたんだったはず……あれ? そういえばシナモンって虫除けにも使えるじゃなかったっけ?
それだけでなく、鳥獣の嫌う香りだとも聞いた覚えが……? なのにレオは特に好まないようだったけど、リーザは好んでシナモンの香りを選んだんだよなぁ。
まぁ地球の鳥獣と、こちらの世界での鳥獣や魔物は好みとかが色々違うだけかもしれないな。
さっきリーザは人間に近いとも考えていたし、嫌う傾向があるとかだった気がするので、必ずしも嫌うわけではないか。
ともかく、使い道に関しては購入したリーザやクレアを含めて、ヘレーナさんとかともしっかり相談して決めようと考えるレオのお散歩帰り道だった。
「……」
「えーっと……」
お散歩、という気軽な響きとは思えない程、色々な事があったけど、とにかくそのお散歩を終えて屋敷に戻る。
馬車を止め、レオからハーネスを外してメンテナンスを使用人さん達に任せた後、レオやクレアさん達と同行してくれたクズィーリさんを伴って、屋敷の正面玄関まで来て、足が止まった。
その玄関、屋敷の入り口の前にエッケンハルトさんとユートさんが並んで、への字口で腕を組んでいたからだ。
……なんとなく言いたい事はわからないでもないけど、わざわざそうしているのはなんなのか。
エッケンハルトさんかユートさんのどちらかが、思いついてやっているんだと思うけど。
「はぁ、皆戻って来られたので、いい加減止めたらどうですか?」
「……」
額を抑えながら、溜め息を隠さないルグレッタさんが、ユートさん達にそう言うが……。
それでも口を開く事さえしない二人に、先にフェンリル達の散歩を終えて戻って来ていたセバスチャンさんも、大きくため息を吐いていた――。
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