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1838/1997

レオが退屈そうにしていました



 クズィーリさんの口からきいた、クライツ男爵という人物。

 繋がりの強さという意味では、もしかしたらこの国の中央……つまり、王都や王家との繋がりよりも強いかもしれないと。

 この国の貴族なのにそれはいけないのでは? と思ったが、それを上手く隠している可能性があるとか。

 ただまぁ、それは交流が少ない南側の貴族が穿った見方をしているからとも言える事でもあり、クライツ男爵本人はこの国への帰属意識が強いと見せているみたいだ。

 それがかえって、交流のないこちら側からしたら怪しく見えるらしいけど……確証などはないので、とりあえず何もできる事はないようだ。


「香料という珍しい物を見て、面白そうな発見だと思ったが……予想外な話になったな」

「ですが、最近の問題に進展があったと見る事もできます。頭の痛い問題だったと、わかってしまいましたが……」

「そうね……。ユート様が関わった以上、小さな事件で終わるとは思っていなかったけれど、その予想を超えて大事になりそうだわ」


 などと、真剣な表情で話し合う公爵家の面々、当主様抜き。

 ただティルラちゃんだけは、アレント子爵やクライツ男爵という名前を聞いた事はあるようだけど、関係性などはまだよくわかっていなかったらしく、眉を潜めて首を傾げていた。

 これから、勉強して知っていく部分だったのかもしれない。


「フワァ~ワフ……ワッフワフ……」

「おっと、退屈だったなレオ。ずっと話し込んでいてごめんな」

「ワウゥ」


 自分の話が、ここまで深刻に受け取られるとは思っていなかったクズィーリさんが恐縮し、重たい空気になっていたこの場に、レオの気の抜けたあくびをする声が響いた。

 レオを見ると、退屈そうにあくびをした後は口をモゴモゴとさせていた。


「考えてみれば、ちょっとレオ様のお散歩という事だったのに、長く話し込んでしまいましたね。重要な話ではありましたが」

「そうだね。後続のフェンリル達も、もう屋敷に戻っているんじゃないかな?」


 レオの散歩だったはずが、思わぬ収穫と言えるだろうか……クズィーリさんと話し込んで、予想外に時間がたっていた事に気付く。

 後から出発する予定だったフェンリル達は、この駅馬の場所まで来なかったけど、多分適当な場所で引き返して屋敷に到着してもおかしくないくらいの時間だ。

 レオやラーレがいるから、危険という意味での心配はあまりされていないかもしれないけど、戻りが遅い事からの心配でセバスチャンさん辺りがやきもきしているかもしれない。

 あと、置いてきてしまったエッケンハルトさんやユートさんから、何を言われるか……だな。


「これ以上、レオ様が退屈するのはいかんな。以後は戻ってから、落ち着いて話をするべきだろう。――クズィーリ」

「は、はい!!」


 椅子から立ち上がりながら、クズィーリさんに呼びかけるエルケリッヒさん。

 そのエルケリッヒさんが立ったから、という事もあるのかもしれないが、クズィーリさんも立ち上がり、直立して答える。


「すまないが、我々と共に来てはくれぬか? もっと詳しく話す必要があるだろうからな」

「は……はい! 先代公爵様のお申し付けとあれば、喜んで! で、ですが……私に話せる事は、もう全て話したのですけど……」

「そうかもしれんが、改めて聞くとまた新たな発見があるやもしれん。先程のティルラのように、別の視点で気付く可能性もある。事は、貴族に関わっている。慎重に、そして確実に進めねばならん」


 アレント子爵やクライツ男爵など、公爵家だけではない貴族が関係していると思われる以上、慎重に動かなければならないという事らしい。

 貴族間の事など、俺はよく知らないけど……ユートさんを見ていると貴族位で、大きく差があるようにはしたくなさそうにも思えるから、公爵家だからと言って勝手に深く調べるなんてできないんだろう。

 それでも、やんわりというか相手にバレない程度に、探りを入れるくらいの事はしていそうだけど。

 公爵家だけでなく、な。


「貴族位としては高い公爵家といえども、他の貴族を勝手に調べるなんて事はできないわ。だからこそ、じっくりとこちらの隙を見せないように動くために、協力が必要なんです」

「な、成る程……し、承知いたしましてございます!」


 若干、言葉が怪しくなりつつも敬礼でもしそうな勢いで頷くクズィーリさん。

 マリエッタさんは柔和な笑みを浮かべているんだけど、その眼光は鋭い……なんとなく、面白い事を思いついたエッケンハルトさんや、相手を追い込める時のセバスチャンさんに似ている気がした。

 まぁ、昔は色々とやっていたようだし、エッケハルトさんとセバスチャンさんがマリエッタさんを見ていてそうなったのかもしれないが。

 ともかく、パッと見は柔らかい笑顔なんだけど、妙な圧を感じるマリエッタさんから見られて、クズィーリさんは蛇に睨まれた蛙のようになっている……そりゃ、言葉も変になるよな。


「お爺様、お婆様、それでは委縮させてしまいます。――もちろんクズィーリにも事情があり、それは先程も聞きました。無理に連れて行くつもりはありませんから、安心して下さい。悪い事をして連行するなどというわけではありません。ラクトスで協力者を探す、という目的や商品の販売もあるでしょうからね?」

「は、はぁ……」


 エルケリッヒさんとマリエッタさんを牽制しながら、フォローするクレア。

 クレアとしては無理矢理ではなく、同行してもらうのは拒否する事もできる、と言いたいんだろうけど……さっきのエルケリッヒさん達を見て、断れないよなぁとも思う。

 特にマリエッタさんを見たら、だけど。

 

「むぅ、すまない。事が事だけに現役の頃を思い出してな」

「そうね、私も同じだわ。罪のある者が相手ならともかく、これは強制ではないわね。公爵家の習わしを忘れそうだったわ」


 公爵家の習わし……? とマリエッタさんの言葉に一瞬首を傾げかけたが、そういえばと思い出した。

 必要もないのに権力を振りかざす事をしない、公爵という強大な権力を笠に着て横暴にならない……とかそういう事があったはず。

 さっきのクズィーリさんに同行を求める、エルケリッヒさんとマリエッタさんはその習わし、教えに抵触していると考える事もできそうだ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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