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1831/1996

馴染みのある香料と同じ物でした



「クレア様が選ばれた香料はジンジャー、リーザ様が選ばれたのはシナモンという香料です。ジンジャーは植物の根茎こんけいを小さく刻んだ物で、強く香りを発します。シナモンは、樹皮を乾燥させてさらに粉にした物ですね。先程、タクミ様にお売りした香料の中にも同じ物を調合しております」


 香料の事になると、饒舌に話してくれるクズィーリさんにそれぞれの香料の説明を聞く。

 ジンジャーとシナモン、匂いからなんとなくそうかな? と思っていたそのものずばりらしく、呼び名も俺が知っている物だった。

 まぁ、ラモギが特定の病をあっさり治すように、全く同じ物かどうかはわからないが。

 あと、俺としてはシナモンと言えばシナモンスティックなどが、少し馴染みがあるけど、クズィーリさんが扱っているのはシナモンパウダーみたいだな。


「樹皮がこのような香りを出すようになるのですね。不思議です……」

「植物のコンケイ……? ってなんだろう?」


 ジンジャーの香りを楽しむクレアに、不思議そうに首を傾げるリーザ。

 リーザには根茎なんて言葉、まだ難しかったか……。

 文字や簡単な算数を学び始めたくらいだから仕方ない。


「根茎っていうのは、別名地下茎と言ってな? 植物が植えてある地面の下の部分の事だよ」

「へぇ~、そうなんだ!」


 新しい事を覚えるのは嬉しいと感じるのか、俺の話に耳をピコピコと動かしているリーザ。

 実際、根茎や地下茎に関しては細かく区分されたり、球茎きゅうけいとは別の扱いだったりもするけど、大雑把にわかりやすく話すならこれでいいだろう。

 リーザが植物について詳しく知りたいのなら、改めて教えればいい。


 ……まぁ、俺の知識もそこまで深くなく、ただ以前学校で習った事があるくらいのものだけど。

 もう少し、真面目に授業を受けておけば、今より知識が深くなっていたのかもなぁなんて、今更後悔しても遅いけど。


「あぁそうだ。ジンジャーもシナモンも、俺が知っているのと同じか似ているなら、面白い使い方があるんだ。食べる、というより飲むだけど」


 実際には俺自身にやる機会はなかったんだけど、一応聞いたことある程度の知識での使い方が、ジンジャーとシナモンにあった事を思い出した。


「そうなのですか?」

「パパすごい!」


 クレアの視線と、リーザの言葉にちょっとだけ鼻が高くなった気分だ。


「タ、タクミ様はもしかして、私より香料に詳しいのですか……? 両方とも、食べる物に味や香りを変えるため、調理過程で混ぜるくらいしか、私は知らないのですが……」

「いえいえ、偶然知っていたくらいですから。俺なんかより、クズィーリさんの方がよっぽど詳しいと思いますよ」


 ただ、知っている香料……香辛料があっただけの事だからな。

 カレー粉のような物に使われている香料の一部とか、クズィーリさんが見せてくれた香料のほとんどは知らない物ばかりだ。

 それに、匂いと記憶は割と繋がっているらしいし、偶然知っている香りの物が、脳を刺激してただ思いださせているだけだからなぁ。

 採取してからの香料にするまでの過程とか、よくわからないし。


「まぁとにかく、ジンジャーとシナモンは……」

「ワッフワフ!」

「急にレオ様に呼ばれたから来たが……どうしたのだ?」


 ジンジャーとシナモンを使う方法を話そうとしたところで、レオが背中にエルケリッヒさんを乗せて戻って来た。

 マリエッタさんとライラさんはレオの後ろに付いてきているようだ。


「お帰りレオ」

「ありがとうございます、レオ様」

「ワッフ」


 テラスの傍でエルケリッヒさんを降ろしたレオが、首を伸ばしてこちらに顔を寄せて来たので、クレアやリーザと一緒に撫でて褒める。

 大きなレオの顔が近くに来て、クズィーリさんの体が固まってしまったが。


「お爺様、お婆様、こちらクズィーリさんで香料で行商をなさっている方です。そのクズィーリさんの話に気になった事がありまして……」

「ふむ、不思議な香りが広がっておるな。レオ様が気になったのはこれらの事なのか……して、クレアの気になった話とは?」

「複数の香りが混じっている気がしますね。ですが、不思議と嫌な香りではありません」


 レオをある程度撫でた後、クレアがクズィーリさんをエルケリッヒさん達に紹介。

 すぐに、先程の話でクレアが引っかかった部分の話になる。

 二人共、テラスに広がる香りに気を取られていたけど、クレアが話を続ける中で少しずつ深刻な表情になって行った。

 いや、顔を引き締めたというくらいだけど。


 とりあえずクレアが二人への事情説明と、確認をしているのでカヤの外になった俺は……。

 あ、そうだ。


「すみません、ライラさん。全員分のお茶の用意ができるか、聞いて来てもらえますか? クズィーリさんは厨房を使っていたみたいなので。許可が出ても、まだお茶は淹れずにお湯を沸かすくらいでいいんですけど」

「畏まりました、聞いて参ります」


 全員集まっているし、それなりに長い話になる可能性もあるので、とりあえずお茶を飲みながらがいいだろう。

 そう思ってライラさんにお願いする。

 俺が聞いてきてお茶を、というのでもいいんだけど……単純にお茶を淹れるというだけでも、俺がやるよりライラさんがやった方が、明らかな味の違いが出るからなぁ。

 美味しいお茶を淹れられるように、練習した方がいいだろうか……なんて考えている間に、ライラさんが椅子を持って戻って来た、エルケリッヒさん達が座るためだろう。


「厨房は自由に使って良いとの事です。道具なども、揃っているようでした」

「ありがとうございます。それじゃ……」


 エルケリッヒさん達に椅子を勧めて、座ってもらっているライラさんに、クレア達の邪魔をしないよう小声でやってほしい事を伝える。


「二つのお茶……いえ、一つは沸かしたお湯だけですか?」

「はい。さっきクズィーリさんから香料を買ったんですけど、それを少し使ってみようかなって。――クレア、それとリーザ。話の邪魔をして済まないけど、香料を少しだけ使ってもいいかな?」

「はい? あぁ、先程面白い使い方とタクミさんが話されていた事ですね? いいですよ、楽しみにしています」

「うん、いいよー! 美味しい物できるのかな?」


 結局、香料を買ったクレアに使ってもいいか聞く必要があったので、小声で話す意味はほとんどなく話の邪魔をしてしまったが……ともあれ、二人共許可してくれたので、ジンジャーとシナモンの入った袋をライラさんに渡しつつ、説明していった――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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