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1830/1997

クレアが話に思うところがあるようでした



「ですので、また新しく協力してくれる方を探しているんです。以前のお店のような程ではなく、最低でも各地の香料を仕入れてもらい、私が買い取るというだけでもいいんですが……」


 うーん、まぁ商品としてというわけではなく、代わりに仕入れてもらえる拠点という事なら、見つからない程じゃないのかな?

 それこそ、どこに連絡をして仕入れればというのがわかりさえすれば、お店というわけではなく、ランジ村にある俺の屋敷でもできなくもない気がするし。

 ……カレー粉にも繋がるから、案外悪くない考えのような気がしたけど、キースさんとの相談もなしに決めたら怒られるだろうし、そもそも仕事を増やしてしまったら薬草畑の方が回らない可能性もある。

 とりあえず保留だな。


「そういうわけで、同じ公爵領のお店なら、と漠然と考えて探している途中です」

「そうですか、同じ公爵領……ん?」

「……クズィーリさん、その以前お世話になっていたお店というのは、公爵領での事なのですか?」


 公爵領と聞いて首を傾げ、クズィーリさんに聞き返そうとしたが、俺よりクレアの反応の方が早かった。

 香料を選ぶ手……だけでなく鼻も止め、クズィーリさんへと問いかける。


「あ、はい。香料を販売してくれるお店……協力者のような人を探していた頃がありまして。その時にこの公爵領で偶然会ったお店の店主さんが、是非にと。数年の付き合いだったのですけど、急に連絡が取れなくなってしまって。ここから東南にしばらく行った街にあるお店で……」


 クレアの急な問いかけに、少しだけ戸惑いながらも答えるクズィーリさん、お店のあった街の詳細も伝えてくれる。

 十分長いと言える付き合いだったからか、少し寂しそうだ。

 それにしても、数年の付き合いか……クズィーリさんがいつから行商人として、香料を集めて販売しているのかはわからないが、見た目としては俺やクレアより少し年上くらいかな? といったくらいだ。

 だとしたらクズィーリさんは、十代の頃から香料を中心とした行商を始めた事になるのかぁ。


「……本邸のある街に近いですね。一年前にという事は、私はもう別邸に行っていたからお父様に聞かないとわからない事もありますが……すみません、タクミさん、クズィーリさん。お爺様とお婆様を呼んできます」

「エルケリッヒさん達を?」


 何か思うところがあるのか、クレアがエルケリッヒさん達に聞きたい事がある様子。

 本邸近くの街にあったお店、消息を絶った店主から、俺にはわからない何かがあったのだろうか。


「はい。私が別邸に行った後の事ですから、お爺様やお婆様の方が、詳しい事はわかるかと。お父様程ではありませんが……ごめんね、リーザちゃん。ちょっと……あら、レオ様?」

「ワフ。ワッフワフ」

「レオが行ってくれるみたいだね。クレアはそのままリーザを座らせてやってくれって」


 クレアが、楽しそうに香料を選んでいるリーザを抱き上げようとすると、レオが鼻先をテラス外から近づけて何やら主張。

 リーザが膝の上に座っているから、クレアが立つにはどいてもらわないといけないけど……俺達の話より鼻や耳、尻尾をせわしなく動かして香料に夢中になっているリーザを、レオは邪魔したくないって事らしい。


「ふふ、そうですか。わかりました。レオ様、すみませんがお願いします」

「ワフー」


 承った、と言うように鳴いて頷き、のっそりと立ち上がって管理棟へと向かうレオ。

 自分が話した事から、クレアの反応やレオが動き出すところまで予想外な事が続いて、クズィーリさんはポカンとしていた。

 そんなクズィーリさんに、改めてクレアが一つの香料の入った袋を持ち、話しかける。


「クズィーリさん、レオ様が戻って来るのを待つ間ですけど……こちらの香料を頂けますか?」

「え、あ、は、はい! 喜んで!」


 どこかの居酒屋かな? と思うような返事をしたクズィーリさんと、クレアが商談に入る。

 と言っても、いくら? これくらいです、じゃあこれで、みたいな二言三言でお金の受け渡しになって終わったけど。


「んー、甘い中にも少し刺激的な匂いがして、この香りが一番好きですね……」

「成る程……それを選んだんだね」


 先程、エルケリッヒさん達を呼んでくる、と言っていたピリッとした雰囲気から、香料の香りを楽しむ柔らかな雰囲気に変わったクレアを、クズィーリさんはちょっと戸惑った様子で見ている。

 一瞬で雰囲気が変ったように見えたんだろうな。

 クレアを近くで見ている側からすれば、レオがエルケリッヒさん達を連れて来るまでの間、ずっとピリピリさせないために、あえてがらりと自分が出す雰囲気を変えたんだとわかるけど。

 クズィーリさんとクレアは初対面だから、仕方ないか。


「パパ、リーザこれがいい!」

「んー? ふむふむ、リーザはこの香りが好きなのか?」

「うーんとね、好きなのはこっちだけど、美味しそうなのはこっちだから!」


 選ぶ事も楽しんでいたリーザが、一つの香料を持ってアピール。

 好きな匂いというのは、チリパウダーのような赤く辛そうな刺激のある匂いだったけど、選んだのは先程俺が席を外して戻った時、辺りに強く広がっていたシナモン系の香りがする物だった。

 シナモン系の香りが美味しそう、というのはわからなくもないが……好きな匂いは辛そうな香りだが、もしかしてリーザは結構辛党だったりするのか?


 いや、屋敷での料理は特段、激辛料理が出てくるわけではないし、別に辛くなくてもリーザはいつもおいしそうに食べているけど。

 嗅覚が敏感だと、刺激臭に近い物は嫌う傾向にあると思っていたんだが、リーザが特別なのか、俺の考え違いなのかわからないな。


「ははは、食欲が一番かぁ。――それじゃクズィーリさん、リーザの持っている香料を……」

「は、はい、畏まりました!」


 何はともあれ、リーザが欲しがった香料の代金をクズィーリさんに支払って購入。

 カレー粉みたいな香料は複数の物が調合されているうえ、材料の入手が難しいために高価だったけど、クレアとリーザが選んだものは、それぞれ一種類の植物が原料らしく、誰でも買えそうな値段だった。

 クズィーリさんが良心的である事だけでなく、香料自体が手に入りやすいとかなんだろう。


 ちなみに、クレアが選んだ香料は甘く爽やかな香りの中に、少しだけ辛味を感じそうな刺激のある物だ……匂いからおそらく、生姜に近い物だと思う。

 香料だから生姜というよりも、ジンジャーと言った方がいいかな?

 どちらかというと、クレアがリーザの選んだシナモン系の香料にすると思っていたんだけど、予想が外れたなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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