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1822/1996

駅馬見学を始めました



「えーっと、ここをこうして……っと。よし、レオ。外れたぞ」


 馬車を降りてすぐ、ライラさんに協力してもらい、レオと馬車をつなげているハーネスの一部を取り外す。

 ハーネス自体は、レオの体に着いたままで接続部を外すだけだ……また帰りも馬車を曳いてもらわないといけないから、全部外すと二度手間になってしまうからな。

 その辺りも考えて作られているのか、接続部は取り外しも取り付けも簡単にできるようになっていた。

 さすがにワンタッチでというわけにはいかないが、レオやフェンリル達が活動しやすく改良されているのかもしれない。


「ワッフワフ!」

「よしよし、まだ帰りがあるけどここまでよく走ったなぁ」

「ママよしよしー!」


 ここまで走ってくれたレオを褒めるように撫でてやると、隣でリーザも真似をするように両手で撫でた。


「さて、えーっと……どうしようかなぁ?」


 レオをひとしきり撫でた後、エルケリッヒさんやクレアと共に門の前に立ち……どうするかちょっと迷う。

 まだ準備中だから呼び鈴があるわけでもなし、見たところ見張りの人が立っているわけでもない。

 大きな声を出して、呼び出してみる方がいいのかな? 何々くーん、遊びましょー的な……中にいる人の名前は一切知らないけど。


「中に誰かがいるはずですので、呼んで参りましょうか?」

「そう、ですね。お願いします」


 変な想像はともかく、ライラさんが中に入って呼んで来てくれる事になった。

 少しだけそのままで待っていると、一旦建物内に入ったライラさんがゆっくりと出て来るのに対し、二人程の男女が転がるような勢いでライラさんを追い越しながら出て来た。


「ク、クレア様! それに先代当主様! よ、ようこそお越し下さいました!」

「そ、そちらがタクミ様と……レ、レオ様ですね! よ、ようこそ!」

「さすがに、いきなり来たのは驚かせちゃったみたいだ……」

「そのようですね。ふふ」

「まぁこういう時、身分のある者は大抵、先触れを出して今から行くぞと報せて迎える準備をさせるからな。突然の訪問というのも、なくはないが……稀だろう。こういうのも面白い」


 転がり出て来た男女は、俺達の前まで駆けて来て直立し、緊張と驚きいっぱいの様子を隠す事すらできず、なんとか俺達を歓迎してくれる、といった様相。

 まぁ、急に領主貴族の先代とその孫娘が来た、となると驚いて当然か……さらにレオもいるしな。

 悪い事をしちゃったかな、と思う俺に対しクレアとエルケリッヒさんは、少し楽しそうだ。

 こういうサプライズじゃないが、いつもとは違う様子を見るのが楽しいと思うのがリーベルト家の血筋か……。


「突然ではあるが、何かの視察というわけではないのでな。そう硬くならずとも良いぞ」

「は、はい!」


 エルケリッヒさんが声をかけるけど、さすがに先代当主様を前にしているからだろう、すぐには緊張が解けずに直立したままだ。

 屋敷にいる人達は、従業員さんも含めて最初は緊張している人が多かったしなぁ……一緒に食事をする時間を過ごす事で、今ではそれなりに慣れて問題なくなっているけど。

 それでもまぁ、エルケリッヒさんだけでなく公爵家の人達を多少なりとも窺う視線や気配などはあるが、まぁそれくらいは仕方ない事なんだろう。


「すみません、急に来てしまって。レオの散歩……新しい馬車を試していたらこちらの建物を見つけまして。それで、一度見ておこうと思ったんです」

「は、はぁ……」


 とりあえず俺から謝りつつ、事情を説明。

 最初はわからなかったどころか、なんで俺がエルケリッヒさんやクレアと一緒にいるのか? と不思議そうな表情もしていたけど、話していくうちに理解してくれた。

 まぁちょっと失礼な事をと謝られたりはしたけど……顔が知られていないのは当然だし、気にしていない。


 俺の顔を知っている人なんて、ラクトス周辺の一部くらいだろう。

 特に印象に残るような美形ってわけでもないしな。


「へぇ~、こんな風になっているんですね……」 


 何はともあれ、見学をさせてもらう事になった。

 建物の中は、特にこれといった特徴はなく一般的な家と大きく変わらないといった印象。

 二階建てのうち一階の入ってすぐの場所が、小さめのホールになっていてカウンターに机がいくつかあり、駅馬の受付に使われるため、建物全体を管理棟と呼んでいるらしい。

 他の家と違う部分は受付と、呼び方くらいかな?


 一階の奥は駅馬を運営する際の執務室兼居住区になっていて、二階は完全に人が住むだけの場所みたいだ。

 さすがに、一階の奥や二階は話を聞いただけでそこまで上がって見てはいないけど。

 建物自体は入り口から入って受付を見渡したくらいだな。

 そこから建物とも通じているし、外からも入れるようになっている横長の建物へと行く。


 そちらにはレオも入れるくらい余裕のある造りをしていて、フェンリル厩舎や馬が使う厩とそう変わらない風になっていた。

 ここで、協力してくれるフェンリル達が過ごす事になるんだろう。


「何分初めての事でして、少々手間取ってはいます。準備のための工程が遅れている程ではないのですが……タクミ様、クレア様、エルケリッヒ様。何か、不足がないかの助言を頂けないでしょうか?」


 新しい厩舎の中を案内してくれる人……先程転がり出て来た男女とは、また別の人でここの管理を担当する人らしい。

 その人から、フェンリルを迎えるための準備に関する不安を聞いたんだけど……うーん。


「そうですね……フェンリル達が今過ごしている場所では、もう少し藁を多めに使っていますね」

「藁ですか? ふむふむ……」

「敷き詰めるだけでなく、こうこんもりと積み上げるようにと言いますか……」


 フェンリル達の寝床は、藁を積み上げてそこに布を被せた物と、藁が剥き出しの物がある。

 布を被せるのは敷布団的にもなるのでわからなくもなかったんだけど、剥き出しを好むフェンリル曰くほんの少しだけチクチクするのがいいらしい。

 ともあれ、敷き詰められるだけでなく積み上げる事で、それを布団にも枕にも自由に使って思い思いに寝るのがフェンリルらしい。

 森で巣穴を掘ったり、洞窟みたいな場所で寝るより環境が良くて喜んでいる……というのはフェリーから聞いた――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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